DANCEで笑いをCOOLに再現!「登美丘高校」だけが特別な理由をダンスク編集長が真剣に考察
2017.09.20 COLUMN
ポイント2)akaneコーチの才能
そして、最大の強さと言えるのがakaneコーチの存在。
▲ポカリ×ダンスクのワークショップで基礎から振り付けまで伝授したakaneコーチ
登美丘の大会作品の振り付け・演出はすべてOGのakaneコーチのセンスと頭脳から生み出されます。
コーチ不在のダンス部や、振り付けを自分たちでやるダンス部も多いなか、彼女の圧倒的な存在感は批判の対象となる部分ではありますが、兎に角彼女の才能がダンス界でも10年に1人ぐらいのレベルと言えるのは間違いありません。
その特徴を一言で言い表すならば
「ダンスで笑いをクールに再現」
しているところではないでしょうか。
そして、この作風を高い水準でできる演出家は、ダンス界広しと言えど彼女しかいないと思われるのです。
ダンスで笑いを取るのは非常に難しいです。素人がうかつに手を出すと、スベる確率が非常に高い分野です。
高校生のダンスならば、それもまた微笑ましい、で許してくれるかもしれませんが、akaneコーチと登美丘にはそんな甘えは一切ありません。
「笑わすなら本気で笑わしてこい!」という叱咤が日々の練習で飛び交い、笑いとダンスの究極ポイントをとことん突き詰めています(中途半端な表現には「キモッ」とはっきりダメ出しをするそうです)。
そして、その笑いは決してわかりやすい大爆笑ではなく、思わずニンマリとほくそ笑んでしまうようなクールな笑い(コメディ)に感じられます。
基礎的なダンス力があるからこそ、笑いが完成される。笑わせるにはまず技術が必要。
そんな心意気もまたクールです。
楽しいはずのダンスなのに、あくまでシュールな無表情。
所々にオマージュを効かせつつ、予測のできない独創的な振り付け。
ユニゾンの完璧なシンクロ率とキレとシルエット。
多面的でメリハリの効いたフォーメーション展開と出ハケの多さ。
アクセントになるソロパートや場面転換のうまさ。
…と、その特徴をあげたらキリがないですが、選曲からわかる通りテーマとなっているのが80年代。その時代をダンスで表現、いや「再現」しているわけです。
熱くてイケイケなのに今見るとどことなく滑稽、という80年代の刹那的カルチャー。
2015年の作品である「エアロビ」はまさしく80年代のエアロビブームの雰囲気を再現。
あの時代、確かに無表情で踊るのがカッコ良かったかもしれませんし、選曲した「ヒーロー」のような無邪気な熱さもありました。
シュールと笑いの連続交差、そして最後に来る不思議な感動と喝采。何度でも見たくなるこのクオリティはまさに芸の域。個人的にはこの「エアロビ」が登美丘のベスト作品です。
続く2016年度作品「オバちゃん」。アニマル柄の大阪のおばちゃんが大量に道を闊歩し始めたのも、おそらく80年代からでしょう。
選曲もABBAの「Gimmie! Gimmie! Gimmie!」やマドンナの「Like a Virgin」など80年代を代表する2曲。
ダンスで地域性を表すという意味でもズバリの表現ですし、自分たちのウン十年後の姿をダンスで表していると見たら、とてもシュールな作品に思えてきます。
そして今回のバブリーダンス。
バブルの時代の無防備なイケイケさがメイクと髪型に表出し、近代でもやはり特異な勢いとファッションの時代だったことが伝わります。
ちなみに、扇子を振り回す、俗にいう「ジュリアナダンス」やその後に流行った「パラパラ」は、手振り中心の簡単なダンスで、盆踊り民族である日本人の血に流れるダンスとも言えます。
(最近流行りのパリピダンスは、完全ステップ系のダンスなので、日本のダンス文化が大きく進化した象徴と言えるのではないでしょうか)
80年代と言えば、そう、踊っている16~17歳の彼女たちの母親世代です(もしくはちょっと上?)。
もしかしたら、ダンス部大会の会場に応援に駆けつけた母親世代の喝采が、審査に影響する部分も狙っているのかもしれませんね。
ともかく、メディアが扱いやすいネタのキャッチーさやビジュアル作り、話題の広がりやすさまで見据えたようなakaneコーチの作品力は、ダンス部云々を超えて本当に素晴らしいと言えます。
次のポイント>>
3)メンバーの個性と幅広い活動
へつづく