「日本ダンス大会」規定で知る!初心者ダンス部が気をつけるべき「衣装」「楽曲」「ポージング」
2017.12.11 COLUMN
高校ダンス部員のうち、高校からダンスを始める初心者の比率は約5〜6割と言われています。
そして、部を管理する顧問の先生のダンス経験はぐっと少なくて2〜3割程度。
ということは、言うなれば約半分ぐらいのダンス部が、ダンスに関する予備知識がないままに、練習や大会に取り組んでいるのかもしれません。
そこで、特にヒップホップ系の初心者ダンス部に気をつけてもらいたいポイントが…
「楽曲」
「衣装」
「ポージング」
です。
今回は、それらのNGポイントを詳しく解説していきましょう。
まず「楽曲」。
特に英語のラップが乗った洋楽ヒップホップです。
いわゆる「イカついヒップホップ」なんて呼ばれる、ビートが重くて、ムードが暗くて、ラップが速く激しくて、どことな〜く悪そうな感じのするヒップホップです。
確かに、こういう曲に迫力のあるダンスを乗せるとカッコいいですよね。
でも要注意!
そういう曲のラップの歌詞の内容に注意してもらいたいのです!
「英語だし早口だし、内容なんて日本人にはわからないから、気にしなくてイイんじゃない?」
と思ったら大間違い。
キミたちがいろんな人にダンスを見てもらいたいなら、それをどんな人が見ているかわからないし、その中にはラップの内容を理解する日本人や外国人がいるかもしれないし、そのダンス動画をYouTubeで世界配信なんてしようものなら、
「日本人の高校生はとんでもない歌詞の曲でダンスをしているぞ!」
という大きな誤解を受ける可能性があるのです!
(あるいは、顧問の先生にとっては責任問題に発展するかもしれません)
まずは「ラップ」とその影響について学んでいきましょう。
(以下『ダンス部ハンドブック基礎編』より抜粋)
元は黒人たちの言葉遊びから発展し、先ほどのブレイク・ビーツに乗せたり、バトルで競い合うことによって、ラップ(RAP)は活発になりました。
当初の他愛のない言葉遊びやピースフルな作風から、社会的メッセージを持つアーティストが台頭したり、敵対する相手をけなす(ディスる)行為として使われたり、単なる私利私欲をアピールするための武器としても活発化してしまう一面もありました。
作詞家としてのラッパーは、作曲家としてのDJとともに金銭的なパワーも持つようになり、社会的には悪影響とみなされるアーティストや曲が台頭し、一時期はさまざまな暴力事件も起こりました。
「Parental Advisory Explicit Content」
と書かれた黒白のシールを見たことはあるでしょうか。アメリカ政府が未成年にふさわしくないと認定し、警告するCDである、というマークです。多くのヒップホップのCDジャケットにはこのシールが貼られています。CDで音源のやり取りをすることが減り、早口で語られるラップの内容を確認しない日本人ダンサーは、このシールが警告する「悪影響」について無頓着です。
また、スポーツ庁後援事業「日本ダンス大会」の規定には以下のように書かれてます。
公序良俗に反する要素(暴力、わいせつ、差別用語など)を含む歌詞が入っている楽曲の使用は不可とする。例)bitch、fuck、shitなどの単語や銃声音などを指します。
※音源の事前提出後、委員会にて内容確認をし、問題がある場合は該当箇所を修正・変更して頂きます。事前に修正・変更した場合については、本番時の減点対象とはなりません。
※楽曲によっては、クリーン・バージョン(不適切な部分を適切なものに置き換えたもの)が、各種音楽系ストア、楽曲配信サイト等で販売されている場合がございます。
ラップやヒップホップはカッコいいし、ヒップホップダンスには欠かせないものですが、こういった悪影響があり、歌詞の内容は誤解を受けるものが多いことをまず知っておきましょう。
オリンピック開催を目前に控え、グローバルスタンダードが求められる日本人ですから、
「知らなかった」では済みません。
無知は時として罪になります。
ヒップホップダンスをやるなら、こういった面をしっかり学んで、楽曲の歌詞をチェックする必要は絶対です。
今の時代、検索すればそのラップの内容はわかるでしょう。
わからなければ、英語の先生に聞いてみましょう。
どうしてもその曲を使いたければ、該当箇所をミュートしたバージョンを使いましょう。
その意味でなくとも、洋楽の歌詞の意味を理解してダンスを踊るのは当然としたいところです。
ダンスミュージックやブラックミュージックには、人生や愛や情熱やメッセージを歌った素晴らしい歌詞がたくさんあります。
これを機会に、自分たちが踊る曲の「歌詞」にもっともっと着目してみましょう。
曲やそのアーティストのことを深く理解すれば、絶対に踊りにも返ってくるはずです。
次は「衣装」です。
再び、「日本ダンス大会」の規定には以下のような記述があります。
迷彩服及び武器(模造品含む)の使用、軍隊及び戦争をイメージさせる演出、並びに反社会的勢力をイメージさせる演出は不可とする。また、性風俗的及びわいせつな印象をあたえる演出も不可とする。
ダンス部の大会は、学生・青少年が取り組むものですから、いくら演出やトレンドとは言え「学生らしさ」は常に意識しなくてはいけません。
どこからどこまでがOKでNGなのかという線引は、各学校の方針や大会の規定によって違うでしょうから、まずはそこをしっかり確認してから、衣装作りに取り掛かってください。
部活動として考えれば、衣装=ユニフォームの選択はダンス部だけに与えられた自由とも言えます。
ただし、自由には責任が伴います。
学生らしさ、そして周囲や観客に不快感や誤解を与えない配慮がまず必要になります。
また、衣装についてもう1つ考えたいのが「作品とのマッチング」です。
これが意外にできていないチームが多く、逆に強いチームは完璧にできています。
ダンスの動きを引き立てるシルエットや素材感か?
テーマや曲にあった色合いか?
作品の世界観を演出する役目を果たしているか?
衣装自体のクオリティ(縫製やサイズ感)は?
さらに言えば出場する大会のステージ(屋内、屋外、照明の具合)との相性は?
…などなど、突き詰めて考えられるポイントはたくさんあるはずです。
チームによっては「こんな衣装を着たいから、こんな曲とこんなダンス…」というように、「衣装始まり」の発想法もあるぐらいです。
次に「ポージング」です。
先の「日本ダンス大会」の規定にも触れられていますが、ガンアクションやギャング集団や暴力を想起させるポージングが、ヒップホップダンスにはたくさんあります。
こちらもラップの歌詞同様「単なる振り付けや演出」では済ませられない、あらぬ誤解を生む可能性があります。
例えば、ヒップホップファッションのパンツの腰履きが囚人服をルーツとしていたり、左足だけ裾を上げるのは「銃を持っていない」というサインだったりする、というのは意外に知られていないことです。
ここで言いたいのは、それらを決してやるな、というわけではありません。
そういった知識をしっかりと得て、誤解を受ける可能性を知り、大会の規定を事前に調べる必要があることを、初心者の高校ダンス部には知ってほしいのです。
メディアに取り上げられる機会も増え、盛り上がり続けるダンス部だからこそ、ダンス部員一人一人が責任を持って、必要な知識を得て適切な行動を心がけていってください。
テキスト:石原久佳(ダンスク!)