ダンスタ2018年夏の地方大会全日程終了!決勝出場チーム決定&今年の傾向を石原編集長が読む!

2018.08.10 COLUMN

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★全体のレベルアップと平均化

さて、昨日でダンススタジアムの地方大会がすべて終了し、決勝大会の出場順も決定した。
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昨年の同志社香里高校と登美丘高校とのドラマティックな一騎打ちや、登美丘高校による社会現象とも言えるブームもあり、今年は例年になく大会への注目度が上がっているようだ。
地方大会への参加校も一気に増え、今年は関西・関東ではそれぞれ3日間の予選を開催。
関東甲信越大会の初日Aブロックを取材したのだが、出場校全体のレベルも高く、ひと昔前に見られた「いかにも初心者」なダンス部はほとんど見られなくなった。それぞれが、しっかりとした練習と取り込みのもと、自信を持って大会へ挑んできているようだ。

ただし、先の地方大会を取材した様子からは、点数でいえば60〜70点のレベルのダンス部が団子状態で固まっている状態で、80点以上あるいは90点を超えて突き抜けるダンス部がいなかった印象が残る。
シーンが盛り上がり、参加者が増え、ノウハウが蓄積され、勝てる方法が共有されていくと、このようにある一定以上のレベルで平均化が進んでいく傾向は、ダンス界のみならず、さまざまな分野で起こる現象と言えるだろう。

だからこそ、日本一を狙うならば、これまでの優勝校とは全く違うアプローチやサプライズ、圧倒的な作品としてのレベルが要求される。
バブリーダンスをきっかけに、ダンス部全体がネクストステージへ入ったと言えるのかもしれない。

★常連校の苦戦と新鋭校の躍進
取材をした8/7開催の関東甲信越大会の初日Aブロックは、特に混戦だったように思う。
決勝大会の常連校が多く出場していたのだが、そのいくつかが予選落ちをした。
ダンスク直近号では「夏のダンス部大会注目チーム」として優勝候補の35チームをピックアップさせていただいたが、そのいくつかがすでに予選で敗退してしまった。
つくづく、予想というものは難しいと感じる。ダンス部の場合は特に、その年の主力となる代のレベルや人的ボリューム、作品のアプローチの成否によって、年ごとのバラつきは出やすい。
そこを、部の伝統や練習法の改善や諸条件への対策で「凌駕」していくのが真の強豪校と言えるのだろう。
また、決勝初出場の学校も今年は多い。昨年は決勝まであと一歩という位置の学校が、地方大会で目覚ましい飛躍を見せ、その勢いのまま決勝で上位に食い込む可能性だって十分にあり得るのだ。

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▲盤石の強さでビッグクラス1位通過した強豪・狛江高校(ダンススタジアム関東甲信越大会Aブロックより)

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▲古豪復活とも言うべき見事なパフォーマンスで決勝進出した品川女子学院(ダンススタジアム関東甲信越大会Aブロックより)

★審査員との勝負
決勝での見所というか、勝負を分けるポイントを考えてみたい。
まず、ダンススタジアム決勝のパシフィコ横浜国立大ホールは会場が大きい。ステージも大きい。そして、審査員席も他の大会に比べるとステージからの距離が遠い(これは関東予選も同じく)。
筆者は、同じ作品をステージ前と審査員席の近くで見比べたことがあるが、「こうも違うか」というぐらい印象が変わってしまうのだ。

ということは、細かい表情付けやその変化、体の細かいニュアンスでグルーヴづけをしてもなかなか審査員席までは伝わりにくい。
逆に、体全体を使った大きな動きや強力なユニゾン、ダイナミックでスピーディなフォーメーションチェンジ、頻繁な出ハケによる目線の散らし方など、広い舞台、大きな会場、遠い審査席に合わせた対策を図るのが1つのポイントと言える。練習時からその距離を想定して作品を見直すことも必要になってくるだろう。

かつてJ-POPを席巻した音楽プロデューサーが、曲の最終ミックスを高音質再生のミキシングルームだけでなく、ユーザーが聴くであろう音楽環境(ラジカセや車内やイヤホン)でも判断していたという。それと同じく、最終的に「誰にどういう状況で届けるのか」ということまで想定する必要性が、レベルアップを続けるダンス部大会では必要となるのだ。

ダンス部の場合、大会で届けるべき相手は「審査員」、次に「観客」ということになる。

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▲全身をフルに使った大きな踊りで、ビッグ/スモールともに決勝進出を果たした東野高校(ダンススタジアム関東甲信越大会Aブロックより)

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▲持ち前のポップダンスに加え、ダイナミックな移動やグルーヴでステージをフル活用した二松学舎大学付属高校(ダンススタジアム関東甲信越大会Aブロックより)

★最後のプラスαが「感情移入」
毎年、優勝校それに準ずる学校のパフォーマンスにはある共通点がある。
それは演舞後の観客の反応、というか会場の空気感だ。

パフォーマンスが終わった瞬間、演舞中はステージ上に飲み込まれていた観客の「波」が一気に引いていく感じというか、一瞬無反応のような間(マ)があり、そのあと「フワ〜」とか「オォ〜!」というような感嘆の声がクレッシェンドのように広がっていく。
そのリアクションが、そのチームの別格感を作り上げ、審査にも少なからず影響していくところはあるだろう。

そういった反応の源には、観客の大きな感情の揺れがあるのだと思う。
喜怒哀楽、何かの感情が大きく揺さぶられる。それを生んだ演者に感情移入する。
昨年ならば、登美丘高校のハイセンスな笑いであり、同志社香里や堺西の息を飲むような芸術性であり、久米田高校や三重高校のような爽快なスピード感がそれに当たる。「何度見ても飽きない」というレベルまで、その作品のファンを一瞬で作るのだ。

この「一瞬のファンになる」というプラスαが最後の勝敗を分けるのだと考える。
仮にダンスのレベルが全く一緒ならば、より感情移入できる方、より親近感を持てる方に票は集まる、ということだ。

今年のダンス部大会で、そんな素晴らしい喝采を浴び、大勢のファンを作るダンス部の姿を期待したい。

レポート:石原久佳(ダンスク!)



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