可能性を感じる〜 ダンス部コーチASUKA Yazawaの連載コラム「ホンネとオモイ」#10
2018.08.30 COLUMN
#10:可能性を感じる
Photo by insects (Ryusei Imai, Kai Boettcher)
Hair and Makeup by Tatsuya Suzuki
まだまだ暑さは続きますが、夏の終わりを感じる時期になってきました。
ダンス部の夏の大会のラッシュも、終えましたね。
どの学校も、自分たちの作品に誇りを持って、堂々としている姿はとても素敵で……でも、大会は勝ち負けの結果が出るもので、私はたくさんの学校の嬉し涙も悔し涙も、目にしました。
いろんな感情といろんな思いが、それぞれあったかと思いますが、それもまた、素敵だなあと思えるものでした。
皆さんは大会に向かって一生懸命に頑張る時、何を目標としていましたか?
何が頑張る源でしたか?
いろんな向き合い方があると思いますが、私は作り手として毎回、「この作品を完成させる」という旗をゴールとして掲げています。
大会結果は形として出てくるものなので、目指しどころとしてわかりやすく、そこを一番に目指したい私も、実際にはいます。
でも、それより何より、みんながやり切ってスッキリした顔を見た時や、その作品に「ありがとう」と言いたくなる胸の高ぶりが、どんなに気持ちいいかを、何年も高校生のみんなと関わる上で知りました。
逆に、作品に何か引っ掛かりを感じる時には、結果が出てもどこか気持ち悪さが残ります。
リベンジをしたい思いがどこかに残るんです。
ダンスは見方によってはスポーツのようにも見えますが、アートでもあり、エンタメにもなっていますよね。
様々な側面があり、だからこそ、正解もない。
作り手や踊り手の中に、その正解はあるのだと私は思います。
だから、ある程度のレベルまで引き上がってくると、それ以降はその時、その場所で、見ていた人にフィットするかどうか。
そういうことが、大会結果には表れる気がしています。
いろんな大会がありますが、私にとってみんなと挑んだこの夏最後の大会は、「ダンススタジアム」でした。
その講評で、審査員だったISOPPさんが話した言葉を、私は忘れられません。
「皆さん、不安の正体を考えたことがありますか?」
と彼は会場の皆さんに問いかけたのです。
そして続けて言いました。
「可能性があるものにしか、不安って抱かないんです」と。
すごくわかりやすい例えで、「皆さんは新幹線のぞみを、片手で止めてください、と言われたらどう思いますか?」
……ありえなさすぎて、「不安」を抱くことはありませんよね。
「どうやってこの新幹線を止めよう……」と不安になったりはしませんよね。
そんな話をISOPPさんはされていました。
私はこの話を聞いて、何かとても腑に落ちました。
そして、高校生のみんなが目指した夢を達成できずに、流している涙を見ながら、この「悲しみ」も「不安」の正体と同じだ、と思いました。
同時に、目標達成して喜んでいる「笑顔」もまた、きっと根本同じことだ、と思いました。
可能性がなかったものには、皆さんおそらく何も感じていないでしょう。
「悲しみ」も「嬉しさ」もないと思います。
それぞれ流した涙やこぼれた笑顔は、自分たちの可能性を信じながら、精一杯堂々と挑んだことを表すものです。
ダンスを頑張る全国のダンス部のみんなには、そんな可能性を感じていてほしいと思います。
「不安」でいっぱいになった時、「悲しみ」でいっぱいになった時、だからこそ「嬉しい」の可能性があったという事実を忘れずに、前向きに進んでいきたいですね。
(つづく)
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