叡明高校の躍進に見るダンス部大会「HIPHOPの逆襲」

2021.10.15 COLUMN

ここ最近のダンス部大会では、ストリート系、特にヒップホップのチームの数はガクンと減った。ヒップホップのスタイルはグルーヴやパワー、スタイルやトレンドを押し出していく特徴があり、その魅力の細部は一般には伝わりにくい面もあるが、それに比べ、創作ダンスの美しさや凛々しさといった表現、学生らしい(女性らしい)テーマ性と作品力は高校ダンス部大会とはいかにも相性が良い。しかしストリート系のダンス部大会は、そもそもヒップホップやオールドスクール系チームの受け皿として始まった経緯があるだけに、最近のこの状況は寂しいところでもある。

その中で、ヒップホップチームとして今年ダークホースのように台頭してきたのが、埼玉県の叡明高校だ。以前は男子ダンサーのポップを主体としてバトルやコンテストに出場していた私立高校だが、今年ヒップホップにスタイルをチェンジして出場した大会(ハイダン)でいきなりの全国優勝。そして、ダンススタジアムでは全国大会初出場で3位という快挙を成し遂げた! その躍進の影には新任のコーチの振り付けのチカラがあったのだ。

「知り合いづてに紹介されて、まずは1つだけ振り付けをすることになったんです。そうしたらそれで(ハイダン)優勝してしまって、続いてダンススタジアム用の作品も作ることになりました。でも正直、3位は出来過ぎだと思います。今回初めてダンス部の大会を見ましたが、思ったよりジャズ系が多くて、その中でヒップホップが目立ったんじゃないですかね」


と謙遜するのは、ヒップホップダンサーのMAAさん。ダンス界では知る人ぞ知る重要人物で、指導と振り付けを手がけるキッズチームが何度も日本一に輝き、ダンスサークルやアパレルブランドを運営、最近ではプロダンスリーグの振り付けにも関わっている。筆者も古い付き合いであるが、カルチャーやファッションを汲みつつも、玄人ウケも一般ウケもフォローしていく彼のバランス感覚はダンス界随一と言えるだろう。

「作品の中でパワー感とエンターテインメント要素ははずせないですね」

上々の成果が出て満足しているかと思いきや、まだまだ向上できるポイントはたくさんあるという。
「生徒たちだけの練習を見ていても、ただ繰り返しているだけで意味がない時間があったりして、もっと考えながら練習しないといけないと思いました。あと、高校ダンス部のヒップホップって部活っぽいというか……、揃えることに意識を向けすぎていたり、ちょっと競技っぽい感じがありますね」

今の高校生が世代的にヒップホップのカルチャーやフレーバーを踊りに醸し出すことは難しい。であれば「ある意味プロレスっぽく見せる(MAA)」ことで結果を出せることは今年の叡名高校の躍進で実証されているだろう。本物の格闘技ではないが、ショーとしての格闘技であり、本物っぽく見せる「振り付けとしてのヒップホップ」。

「今回のように結果が出ればモチベーションになるし、本物の格闘技=ヒップホップを学びたければこちらも真剣に教えます。ダンス部への指導のやり甲斐は、こちらが見たいモノを見せてくれるというところです。彼らのスイッチが入ったらその吸収力はすごいですからね!」

今後の叡明高校の活躍、そこに続く全国のヒップホップチームの逆襲に期待しよう!

インタビュー&文:石原ヒサヨシ(ダンスク!)
『ダンスク!』37号より転載

 


▲組技で戦車を作るエンタメ性。このシーンは情報番組でもピックアップされていた。


▲ハイダンで優勝を決めた作品。和をテーマに、目まぐるしくトリッキーな展開の構成と独自性は圧巻!

MAAプロフィール●PROPS代表。SUPER KIDSの小学生部門で日本一を2回、中学生部門で準優勝1回。11年連続決勝出場。世界大会であるWODの決勝にも2度出場。プロダンスリーグのSEGA SUMMY LUXの振り付け、衣装製作に関る。



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