寄稿【二松學舍】バトル10連覇達成を支えた「ダンスの捉え方」【松澤先生】
2025.02.21 COLUMN
寄稿シリーズ「顧問の考え」は、桜丘高校、日大明誠高校に続いての3回目は、先日ダンススタジアム東日本大会で前人未到の大会10連覇を記録、高校生ダンスバトル選手権では、見事全国優勝を果たした、二松學舍大学附属高校の、頼れるダンサー先生「松澤先生」の登場だ!
▲松澤先生はYouTube「ダンスク!TV」にて、二松學舍の部員とともに、ダンスバトルの取り組み方を解説してくれた。
私を形作った幼少期
人はいつダンスを始めて、いつまで続けるのだろうか。
私の家族には陽気な人が多く、クリスマスにはディスコタイムがあり、ディスコミュージックがかかる中、母親からのディスコステップ講座に強制参加をさせられていた。
強制参加と書いたが、我が家はそれが当たり前だったから、何の疑問も持たずに楽しく踊っていた。
また、小学生のころは外遊びから家に帰ると、姉により子供部屋がジュリアナ東京のように改造されており、即席のお立ち台で扇子を片手に踊らされるなどもした(こっちは本当に強制参加だった)。
姉のバレエ教室について行ったら成り行きで発表会に出ることになったり、なぜかエイサーを習っていた時期もあった。
かなり稀なケースだとは思うが、幼少期から私にとってダンスは身近な存在であった。なので、いつダンスを始めたかと聞かれると難しい。
ストリートダンスに出会ったのは中学3年である。
夜、道端に這いつくばるっている友人を見て本気で心配したが、ブレイキンの練習だったと知り、共に練習するようになった。
ダンスは「始める」もの?
歌を歌わない人はいないと思う。
私もカラオケが大好きだ(ダンス部顧問は歌がうまい人が多いし、一緒に行くとめちゃくちゃ盛り上がる)。
しかし、カラオケに行って「いつから歌始めましたか?」と聞く人はいないはずだ。一気に変な空気になるだろう。
幼少期からいつの間にか歌っているので、歌を歌うことは「始める」ものではないとの共通認識があるからだ。冷やし中華とは違うのである。
ではダンスはどうか?
日本に住む我々にとって歌よりかはダンスのほうがハードルが高い場合が多く、それによって「始める・やめる」という切り口が生まれるのではないか。
しかし、本来ダンスも歌も同じであり、「そこにある」ものなのだ。
みんな違ってみんないい
ダンス部に入部した時の気持ちを思い出してほしい。
きっと、友人たちと楽しく踊っているその中心に自分がいることを想像していたと思う。
だが、ダンス部の大会(特に大編成)で主役を立てている学校の数は少なく、群舞として皆で1つの物を作る学校がほとんどである。
よく言えば、みんなが主役、誤解を恐れずに言うと、個が目立ちにくい場合が多い(大会のシステム上仕方がないのだが)。
ダンスの初期衝動は「ダンスで目立ちたい」や「あの人のようにカッコいいダンスがしたい」であるはずだ。
「その他」になりたくて入部した人はいないと思う。しかし、ユニゾンで主役になるのは難しいのだ。
良いとか悪いとかではなく、そういう難しい事実がある。
その点バトルやサイファーでは絶対に個人が主役になれる。
ソロで踊っている瞬間は全員の目を独り占めできる。
もちろん即興で踊る難しさはあるが、どんなに初心者でも主役になれる。
こんなに気持ちいいことはないはずだ。
しかしバトルには勝敗がつく。
「どうせ勝てないから」、「負けるのが怖い」、などとよく相談されるが、バトルに本当の意味の勝敗はあるのだろうか?
サッカーやバスケットボールのように明確に点が決められるなどがあれば話は別だが、ダンスバトルの勝敗はジャッジの主観である。
極論「自分的には負けてない!」と言い張ることも可能だ(笑)。
でもやっぱり勝ちたい。それもわかる。
そういった人は、他の人との違いを探し始める。自分だけの個性的なダンスを探すのである。
これがめちゃくちゃ大事で、今後の人生にも影響するほどの成長になると考えている。
みんなで1つのものを作り上げること、アイデアを出し合うこと、皆と心を1つにすること、大事。全部大事。
でも個も大事だよね。それぞれが強烈な個を高めることも大事。
個とチームワーク、どっちも向上できれば組織レベルは急成長するはずだ。
しかし、学生の年代だと他と違うこと、独特であること、ユニークであること、強烈な個がある事は勇気がいる事なのかもしれない。
他との差異に個性を感じる我々は、同時に他との差異を常に気にして生活をする文化の中に生きている。
でも、みんな同じダンスしてても面白くないよね。
使い古された言葉だけど、「みんな違ってみんないい」。
▲2024年ダンススタジアム・バトル東日本大会で前人未到の10連覇達成! 二松學舍はコンテストでも全国大会常連、自主公演もクオリティ高く、まさにストリートのカッコ良さ!
ダンスのある人生を始める
バトルやサイファーではこれを感じられるから私は大好きだ。
そして、フリーで踊れるようになったら鼻歌を歌うようにダンスを踊ることが出来るようになる。
そしたらダンスは「やめる」ものじゃなくなる。ダンスのある人生が始まるのだ。
私が顧問として伝えたいことは、ダンスの楽しさである。
だから何歳になっても生徒と踊っていたいと思う。だって楽しいから。
ダンス楽しんでる大人が身近にいるって、なんだか楽しいと思わない?
学生のみなさんにもそういう大人になってほしい。
それぞれの夢に向かって沢山チャレンジしてもらいたい。
そして、その人生の中にダンスがあり続けると、きっと素敵な人生になるはずだ。
この文章を読み終わったら早速、好きな音楽をかけて好きに踊ってみてほしい。
ポイントは楽しむこと。
うまく踊れなくても良いから。
皆さんのダンス人生が個性的で楽しいものであるように願っています!
いつか私とも踊りましょう!
二松学舎大学附属高等学校
ダンス部顧問 松澤龍