独自表現で台頭する山梨の新星「日大明誠高校」〜正解のないものに答えを、答えを正解に。
2019.05.24 HIGH SCHOOL
今年のHIGH SCHOOL DANCE COMPETITION(HSDC)、両国国技館DANCE ALIVE HERO’S内で行なわれた決勝大会において、登美丘高校、愛知の桜丘高校という全国トップと争ったダークホースが日本大学明誠高等学校。
数年前から各大会で奮闘していたが、ここに来て一気に関東大会を勝ち上がり、静と動を活かした世界観と独特の構成力で存在感を示した。
始まりは2012年。元ストリートダンサーながらもバレー部の顧問を務めていた小泉先生のもとに一人の生徒が訪れたのがきっかけだという。
▲写真はHSDC決勝より。チアダンスの活動を続けていることが隊列で見せる作風に影響しているのかもしれない。バスケ試合でのショー出演などで、360度から見られる経験が豊富なのだ。>>大会のレポートはコチラ
「いまGANMIで活動しているKENZO MASUDAが当時の生徒で、私と一緒に文化祭に出たんですね。それが縁で、ダンス・チア同好会の顧問を頼まれました」
思いがけずダンスの世界へ舞い戻り、ダンス・チア部として部に昇格したのが2013年。発表の場を求め高校ダンス部のコンテストへ出場する。演出やテーマや衣装に凝り、数十人の群舞で見せるそのスタイルは、先生が経験してきたダンスとは趣を異にしていた。
「最初はその潮流に合わせていこうとしていましたが、やはりストリートダンスの面白さがあるところで勝負しようと思いました。その頃にちょうど踊れる生徒が入ってきたり、KENZOの影響もあったと思います」
▲基礎練習のメニューは、ストレッチ~筋トレ~アイソレ~リズムなどベーシックなものだが、強度や正確性には注意しているという。
とは言え、初心者が8割を占めるメンバーでは真っ向からダンス勝負できない。そこで、音に対する表現力を突き詰めること、その作品を踊りきるスキルを身につけることをまずは徹底した。振り付けに関しては、詰め込むよりもシンプルな形まで引き算していく形に。無駄を省き、見せどころを引き立たせるスタイルだ。
「ベースとなる振り付けと選曲とテーマは私が考えますが、それはあくまで“お題”として生徒に与えたもので、あとは自分たちで考えさせます。結果、今回の作品も半分ぐらいしか原型は残っていないんです」
プロのコーチが振り付けした作品に対して、ダンサーとしての自分では敵わない。では、教師としての力で生徒の能力を引き出すことができれば、勝負できるのはないか。そのプロセスはまさに教育的であり、先のHSDCでは1つの結果としても証明できたわけだ。
「ダンスと教育には親和性があります。正解のないものに答えを出して、それを自分たちで正解にしていく。新しい教育に求められるアクティブラーニングの実践がそこにはあるのではないのでしょうか。目的がなければ本質的な行動は起こらない。理想論だけでは絵に描いた餅になってしまう。目的が共有できれば、友達ではなく、仲間になれる。友達と仲間は違います。意見や価値観が違うことを認め合い、話し合い、ぶつかり合うことでお互いが磨かれていくのが仲間だと思います」
▲部長と3人の副部長。効率的に部を運営するために、副部長はそれぞれ「ダンス部門」「企画部門」「広報部門」を担当している。企画は合宿や文化祭や新年会など。広報はSNSやTシャツデザイン、ポスター製作など。会社組織のような運営で「社会」への予行練習をしている。
また部をスタートさせた時にテーマにしたのが「一生モノ」という意識だという。部活動を精一杯やった日々を一生残るような意味のあるものにしよう。その思い出を何年経っても仲間と熱く振り返られるような大切なものにしよう。そのためには毎日を悔いなく、全力でぶつかっていく。そして、やるからには日本一。大地広がるキャンパスから、日大明誠が大空に描き始めた軌跡は今年、どんな放物線を見せてくれるのだろうか。
レポート:石原久佳(ダンスク編集長)
▲男子部員は2割に満たないが、女子が男子部員をポジティブに捉え、頼りにする雰囲気がある。
▲練習場所の広さが足りないために、大会作品を確認する際には外を使う。フォーメーションや踊り分け、カノンなどを多用し、群として見せるスタイルを突き詰める。
▲ダンス部に入ると別人になるぐらい変わるという。学校の中心になる生徒も。ダンスによってエネルギーが引き出され「個」を確立させていくのだ。
DATA
●部員数:74名(1年28名/2年22名/3年24名)
●活動時間:平日2時間(土日なし)
●ジャンル:ヒップホップがメイン
●おもな活動:Jリーグ、Bリーグ、プロ野球などでのショー。HIGH SCHOOL DANCE COMPETITION2019関東大会優勝
●振り付け:先生と生徒
今日はGW練習中の山梨の日本大学明誠高校に取材に行きました。HSDC関東予選で優勝し両国国技館での決勝へ駒を進めた新鋭校です。取材は5/15のダンスク6月号に掲載!@meiseidc #hsdc #日大明誠 pic.twitter.com/CnS0jVesIF — ダンス部専門マガジン「ダンスク!」 (@Danstreet203) 2019年5月2日