優勝は京都文教高校!2019年「日本ダンス大会」出場全47チーム写真付きレポ&総評
2019.06.25 HIGH SCHOOL
24)我孫子二階堂高等学校(千葉)
初出場チームはゴージャスな衣装でワックを披露。初心者の多いチームだろうが、大会に意欲的に臨むことでレベルアップを重ねたい。
25)埼玉県立坂戸高等学校
ピエロの世界観を伝える表現力が素晴らしい。構成にメリハリがついてくるとよりコンセプトを活かせるだろう。
26)東京都立目黒高等学校
大きな踊りでさわやかなイメージ。シンプルなことを自信を持ってやることの大切さをわかっている。
27)北星学園女子中学高等学校(北海道)
北海道からの参加チームは和を融合したヒップホップ。チームワークと元気の良さが光る。
28)立川女子高等学校 (東京)
主役を立てた見やすい構成。各自の表現力も高く、世界観やストーリーがしっかりと伝わる。女子好みの不思議な魅力の作品。
29)埼玉県立杉戸高等学校
ポップとロックをベースに、しなやかなグルーヴをミックス。西遊記のコンセプトもうまいが、もう一つ展開が持てるとより面白くなるだろう。
30)東京都立白鴎高等学校
今年、同好会から部に昇格しての挑戦。TRFのソウル調の曲を使い、衣装やムード作りも良い。ダンスの基礎力がつけばもっと伸びるはず。
31)さいたま市立大宮西高等学校
今大会では少なくなった、正統派ヒップホップチーム。ヒップホップの普遍的なカッコ良さが凝縮されている。同校は廃校となるそうで、最後の大会でしっかり爪痕を残してくれた。
32)神奈川県立光陵高等学校
ロックダンスに面白いコンセプトを乗せる同校。アクティングのパートが多すぎたようで、ダンスとのバランスをどう見せるかがこれからの課題だろう。
33)天理高等学校(奈良)
他校とは一線を画すアダルトなムード。難しいアプローチだが、ソウル、スイング、ビバップとダンスを展開し、幅の広さを見せる。
34)広尾学園高等学校(東京)
息を飲むような表現力と集中力。椎名林檎のバラードに乗せ、女性の美と強さを追求したかのようなパフォーマンスだ。
35)沖縄県立北中城高等学校
スタイリッシュなロック&ソウル。南国の開放的なエネルギーがあふれる。
36)関西学院高等部(兵庫)
魔女をテーマにした作品で、コンテのような高い表現力が印象的だ。
37)大阪府立柴島高等学校
今大会で一気に増えたJ-POP使いで、これまでのグルーヴィなヒップホップからリリカルなジャズ表現へ転身。フォーメーション、集中力、構成、主役の存在感などバランスが素晴らしい。
38)品川女子学院(東京)
新人戦で評価の高かったミスコンをテーマにした作品。女性の憧れ像を演出する、同校の伝統美とも言うべきパフォーマンスだ。主役の存在感が際立つ。
39)山村学園高等学校(埼玉)
強いフィジカルを元に練られたカノン構成で見せる。全員アニーというコミカル演出が印象に残る。
40)成城学園高等学校(東京)
フラメンコをモチーフにしたダンスで、フリルの波動で魅了する。女性らしい華やかな表現で、出場チームの多様性を象徴していた。
41)昭和学院高等学校(千葉)
ダンスのレベルが高く、独創性もある。ただ、男性と女性を二分割にした衣装が演出的に効果的ではなかったように思う。
42)北九州市立高等学校(福岡)
ストリートダンスの原点回帰とも言うべきロッカーズスタイル。そこに高校生らしさとメンバーの明るいキャラを生かしてファンキーさを演出。本日初のパワームーブも盛り上がるアクセントだ。
43)駒澤大学高等学校(東京)
これまでのダークでシリアスな作風から一転。明るくカワいさを全面に出した作風で挑んできた。J-POP曲で高校生らしさも伝わってくる。ノリ方のパターンを増やせば、より変化に富んだ作品になるだろう。
44)京都文教高等学校
激しいROCKに乗せたLOCKを目まぐるしく構成。スピード感、ダイナミックさ、声出し。ステージからはみ出さんばかりのドラマティックなパワーを感じさせる。
【優勝】
45)千葉敬愛高等学校
メンバーを2分割して呼応させる構成がうまい。引き算ができる余裕のある作風で地力の強さを見せる。
46)東京都立狛江高等学校
狛江特有のショーのようなエンタメ感のある作風に、今年は怪しげなムードが加わった。衣装の色彩感覚も素晴らしい。伸び縮みするようなスウィングのノリが同校の特徴だが、音の表現にはまだまだ伸びしろを感じさせる。関東の代表校として全国トップを目指してほしい。
【準優勝】
47)鎮西高等学校(熊本)
女子中心のダンス部大会では見慣れない雰囲気の男子がセンター。定評のある叙情的な表現に今年はパワフルさと熱気が加わった。
<結果>
優勝:京都文教高等学校(322pt)
準優勝:東京都立狛江高等学校(321.5pt)
第3位:大阪府立久米田高等学校(319.3pt)
REACH BEYOND賞:京都明徳高等学校
蝶理特別賞:鎮西高等学校(熊本)
MIZUNO特別賞:北九州市立高等学校(福岡)
特別審査員賞:大阪市立汎愛高等学校
永利真弓審査員賞:大阪府立柴島高等学校
角田美和審査員賞:駒澤大学付属高等学校(東京)
長濱佳孝審査員賞:東京都立狛江高等学校
羽柴多賀子審査員賞:沖縄県立北中城高等学校
岩井孝子審査員賞:埼玉県立杉戸高等学校
競技委員長賞:千葉敬愛高等学校
審査委員長賞:京都文教高等学校
>>全出場校の得点はコチラ
<審査委員長:TAKAHIROのコメント>
大切な青春の時間と夢をダンスにかけてくれてありがとうございます。たくさん良いチームがありました。狛江も久米田もすごかったけど、京都文教が抜きん出ていたのは、コンテストとして見せ方が良い点と、コンテストを超えた見せ方がうまかった点です。
難しいステップを皆が共有していたし、自分たちらしさも追求していた。息使いが聞こえて、生きたパフォーマンスが伝わってきた。年々審査は難しくなってますが、すべてにおいて総合値が高い学校が勝っていく時代になりました。
今日踊ったみなさんにはこれから3つの勇気を大事にして欲しいです。
「受け入れる勇気」
「自分たちを信じる勇気」
「明日に進む勇気」
この3つの勇気を大事にして頑張ってください!
<レポート総評>
関東地区の学校が、西日本の強豪勢にどこまで拮抗できるか、というのが見どころの1つであるこの大会。
演出面だけでなく、ダンス力でしっかり対抗できる関東勢が増えてきたのは良い傾向だ。入賞には至らなかったが、トキワ松、市立川口、清瀬、立川女子、実践、広尾、品川女子など関東勢の復調ぶり・充実ぶりが目についた。
ダンスに限らず、シーンが盛り上がってくると作品が均質化してくる傾向があるが、本大会でもいくつかの面でそれが見られた。1つは、J-POP楽曲の使用。高校生の自分達らしさやリアリティを思えば、自然な流れであるが、使用にあたっていくつか注意点を記しておきたい。
まず、「音のレンジ」。通常のJ-POPは、歌を中心に聴かせるために音のレンジを狭く(コンプレッション)設定してある。いわゆる、一番下のドラムの「ドン」の音と上の「パン」の音域の幅が狭い=メリハリが薄いのだ。
逆に洋楽のダンスミュージックはここが非常に広く、上も下も体に響いてくる迫力がある。イヤフォンや小さいラジカセでは違いはわかりにくいが、会場の大音量で両者を並べて聴くと、その差は歴然とあり、観客の印象に影響してくる。ステージで踊っていても体感としてビートが響いてこないから、違和感を抱いてしまうこともある。だからと言って使用を断念するのは勿体無いので、元音源をCDから取る(レートの低いDL音源はNG)、できる人は音源をレベル調整したりイコライジングするなどの処理をするのが得策だろう。
あとは、ダンス中に声出しをする学校が多くなった。以前に「声出しはダンスとはまた違うエネルギーが出るので有効だ」と本大会のレポートで書いたが、続いてしまうとインパクトは薄れる。昨今の「勝てるスタイル」の進化は非常に速いので、勝ちたいチームは「その一歩先」を見据えるのが必要になってきた、ということだろう。
そして、ジャズ系/ジャズヒップホップ系のチームが一気に増えた。だからこそ、勢いのあるオールドスクールで勝負した京都文教が1つ抜けた面もあるのだろう。また、純ヒップホップのチームが減っており、ポップやブレイクなどのチームは引き続き少ない。女子中心のダンス部が自分たちのやりたい表現を突き詰めると、こういったジャンル傾向になるのだろう。その争いになると、最終的に問われてくるのは衣装でも演出でもなく、ジャズの基礎的なテクニックの精度だ。
「ダンスに丁寧に、音楽に誠実に踊ること」——当たり前のようだが、ココを徹底しているダンス部が結局は「強い伝統」を作るのだと思います。
レポート:石原久佳(ダンスク!)