【ダンス部取材】京都明徳高等学校〜声出し日本一! 若者を変える〝鬼顧問〞の愛に満ちた厳しさ

2020.03.19 HIGH SCHOOL

京都明徳高等学校

声出し日本一! 若者を変える〝鬼顧問〞の愛に満ちた厳しさ

※『ダンスク!』2020年2月号(1/25刊行)より転載


▲スピード感、フィジカル力、キレ、気合い、勢い。明徳のステージから放たれるエネルギーが尋常でない。

練習場所であるホールに入った瞬間、部員たちの大きな声が響き渡る。一瞬何を言っているか聞き取れないが、全員が大きな声で励ましあいながら、瞬時に指示を出しながら練習をしているのだ。声を出していない者がいない、まるで何かのセッションのような盛り上がりで、練習場所からは尋常でないエネルギーとテンションが放出されている。


▲練習中はとにかく声出しが絶えない。上級生下級生関係なく、叱咤激励が飛び交う。「練習でやったことしかできない」という意識のもと練習でも本番でも大きな声を出す。

京都明徳高校ダンス部の創部は1999年、スピード感溢れるダンスで、ダンス部黎明期からダンスドリルやダンススタジアムなどの大会で好成績を挙げている。テレビで取り上げられる機会も多く、その中心には鬼顧問岩倉先生の厳しい指導が描かれる。

「テレビの影響力は怖いですね。私だけなら良いのですが、生徒たちが“やらされている”“ 怖いからやってる”と見られるのはかわいそうやな、と思いました」


▲岩倉先生の指示を仰ぐ部員たち。指示は簡潔ながら難易度が高く、部員たちは歯切れの良い返事の直後にすぐさま行動に移す。「自分たちの弱さに目を向けないのがまだ足りないところ」と先生は語る。

岩倉先生は学生時代ずっとソフトボールに打ち込み全日本チームに選ばれるほどの実力者だ。世代的には行き過ぎた上下関係のある体育会系部活動のなか、それに違和感を感じながら育ち、母校である京都明徳に教員として戻ってきた際に、何の縁もなかったダンス部の顧問を任された。

「最初の頃は駅で踊ってるダンサーやテレビのバックダンサーを注目して見たり、キッズに混ざって習ってみたりしました。変なプライドを持たないで打ち込むと教えてくれるキッズが出てきたり、ちょっとずつ踊れると“楽しい”という感覚が自分でもわかってきました」

就任当時の周囲の冷たい目を背に「負けず嫌い」という先生がまず着手したのは、ダンスへの悪いイメージを払拭するための礼儀や服装や学校生活の見直しだという。そのため当時は半分の部員が辞めてしまったというが、残った部員と「3年で全国大会出場」の目標を掲げ、ダンス部にソフトボールのような「チーム」の意識を植え付ける改革をした。冒頭の声出し練習も、生徒たちが自主的に始めた「チーム作り」のための方法なのだろう。

「まずは怪我をしないフィジカルを作る練習量とそれをこなすことで得られるメンタル強化。そこで生まれるスピード感を明徳らしさとして見つけました。ある時の生徒が“何回も踊り込みたいんです”と言ったので、ランニングや体幹トレなども始めました」


▲基礎練習に時間をかける。筋トレ、アイソレ、リズトレ、ビートトレのあとは、ヒップホップ、ロック、ハウス、ブレイクなど各ジャンルの基本をみっちり。


▲練習中に部員を叱咤する部長の高橋さん。未経験者ながら持ち前の根性でがんばり、部を引っ張る。「先生の厳しさは愛と優しさなんです。怒ってくれていることに感謝を感じています」

そうして創部3年での目標も達成、2010年には日本代表として世界大会に出場、ヒップホップ部門で優勝という快挙をなしとげる。周囲の目線もだんだんと変わってきた。

「テレビの良い面の影響では、“こういう厳しい環境でやりたい!”という入学を希望する生徒が増えたことです。中学時代にいじめや不登校などの悩みを抱えた生徒もいます。そういうコには“絶対に変われるよ。私もダンスで変わったよ。変われる環境は用意するし、あなたの中学の時のことは先生知らないよ。ここからスタートすればいいんだよ”と伝えています」

岩倉先生の厳しさは「愛」そのもの。それを全身で感じるからこそ部員たちは厳しい練習にも耐え、規律と集中力に満ちた練習をガムシャラにこなすのだ。

「行き過ぎた上下関係はいりませんが、規律と礼儀を徹底するのは、社会に出た時に通用する人間になってほしいからです。社会に出たときにこの子と仕事がしたいと思われる人間になるために、損をしないために必要なことだからです」

若者はダンスで変わる。愛で成長するのだ。

レポート:石原久佳(ダンスク!


▲響と照明を備えた大きな専用ホールに鏡を持ち込んで練習。交代で振り付けの習熟度をチェックする。


▲男子部員も女子に負けないテンションで技を磨く。ブレイクは女子もやるそうだ。


▲この日は、扇を使った振り付けに挑戦。20年近い大会出場キャリアの中での振り付けアイディアの蓄積も豊富だ。「生徒が一番イキイキできるダンスを見つけてあげたい」と先生は語る。


チーム名:M’s E Crew

●部員数:56 名(1年15 名/2 年17 名/3 年24 名)
●活動時間:平日3 時間、土日6 時間(週6 日活動)
●入部時の初心者比率:1/3
●おもな成績:MissDanceDrillTeamInternational(世界大会)5 回出場、全国高等学校ダンスドリル選手権大会6 回優勝、USA Nationals4 回優勝、第1 回日本ダンス大会優勝
●振り付け:コーチ・顧問



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