【創作ダンスの強豪校#3】樟蔭中学校· 高等学校〜創作とストリートの融合で目指す新しい ダンスの地平

2020.03.23 HIGH SCHOOL

創作ダンスの「表現力」

#3
樟蔭中学校· 高等学校
(大阪)

文=石原久佳(ダンスク!)
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写真=福田静良(樟蔭)
※『ダンスク!』2020年4月号(3/15刊行)より転載

 

創作とストリートの融合で目指す新しい ダンスの地平

最後に訪れたのは東大阪市の樟蔭中学校・高等学校。歴史は古く神戸の大会では16回の入賞歴。創作ダンス部として光ヶ丘女子に続く形でダンススタジアムに出場し、2016年には初出場で3位の快挙。ダンスタ以外にもチームダンス選手権など積極的にストリートダンスの大会に出場している。先の2校と違う特徴は、創作ダンスをベースとしながらも、よりストリートのエッセンスを取り入れ、それらを融合させたパフォーマンスを目指しているところだ。
「うちには創作とストリートのコーチがそれぞれいて、部員もストリート、チア、バレエなどいろんなダンス経験があります。学校外でスタジオに通っていたり、学校内では体操をやっていたり、自由な雰囲気のなかでいろんな要素を取り入れていますね」
と語るのは顧問の青木先生。以前に取材した時も「ダンスだけじゃなくて、部活を通じていろんなことに気づく人間になってほしい」と語っており、取材陣への応対にも指示が細かく、指導も常にエネルギッシュだ。取材時には、「ちょっとやらせてみましょうか?」と、完全にフリーで踊る練習を率先してくれた。


▲ダンス部のモットーは「なんでもやってみる!」。バレエからモダン、ストリート、体操までなんでも挑戦みるスタンスだ。基本は創作ダンスだが、それに並行してフリースタイルの作品にも取り組んでいる。取材時も、たくさんの新作を見せてくれた。

「最近は創作ダンス部がストリート系の大会に出てますよね。でも、あちらにはまだまだ実力校がいるんです。例えば、日本女子体育大学二階堂とか立教女学院、日大豊山女子、至学館、京都女子、新潟中央、新潟明訓……。そんな学校まで出てきたら大変でしょうね(笑)」
樟蔭は中学もストリート系の大会に積極的に出場し、ダンススタジアムの中学生部門では全国優勝も果たす。シリアスなテーマで、10代前半の女子が踊る静謐な世界観は非常に神秘的であり、必ず「樟蔭の作品」として独特の世界観を見せている。筆者としては、以前に東南アジア地域で見た民族舞踊の神秘性をどこか思い起こさせる。神々との交信を目的とするダンスは、10代前後の少女の踊り手によってより神秘性を帯びてくるのだ。


▲芸術性は高いが、親しみと個性のある作品が特徴。こちらはダンスタ中学部門で披露した大正モダンガール(モガ)をテーマにした作品。

「私も部員もストリートは好きなんですが、〝ザ・創作〟という作品とストリートダンスを比べるのは難しくなるでしょうね。創作はやっぱり〝芸術〟や〝表現〟としてやってますから、テーマの深め方が違うと思います」
先生の言う通り、アートとストリートカルチャーを比較してしまえば、歴史も大衆性にも差がある。アートは前知識がなくとも感じることができるものだが、ストリートカルチャーとはある程度の知識や愛好を前提として発展してきている。極端な話、芸術系とストリート系のダンスがお茶の間で流れた時に、多くに支持されるのは芸術系だろう。芸術とは小難しいものではなく、実は非常に大衆性があるものなのだ。
そして、それら2つを比べるストリート系の大会には、審査の整備をする必要はこれから出てくるかもしれない。ヒップホップやオールドスクール出身のジャッジにはモダンダンスを基本にした創作ダンス部のパフォーマンスの微細は批評できないし、その逆もまた然りだ。それを解決するためには、ダンサーが、プロのジャッジとしてより見識を広めていくか、大会側がジャッジのラインナップのバランスをとっていくか。昨今、創作ダンス部の審査点が高いのは、それを見慣れないストリート系のジャッジによる高評価が要因の1つとも思われる。
「逆に創作ダンスの大会でストリート系のダンスが評価されることは難しいんです。斬新さや奇異なものには寛容だと思いますが、エンタメだけのものには評価が厳しいかもしれないです。常に高みを目指していて、評価基準がブレてないんだと思います」
創作ダンスの歴史は戦後から70年以上、ストリート系ダンスが部活で入ってきたのはまだ20年ほど。歴史が違う、指導メソッドが違う、表現の質も違う、教育との寄り添い方も違う。ここ数年のストリート系大会での創作ダンスの台頭は、ある意味で創作ダンスの「逆襲」とも言えるかもしれない。高度な技術・表現力・エネルギーをもって抽象表現を完遂させ、ちょっとした親しみをプラスさせれば、評価の目線は興味・関心・刺激へと変化する。高いレベルの争いでは審査はどうしても減点法となってしまうが、技術をともなって「やりきって」いれば文句のつけどころがない。減点もしにくい。加えて、創作ダンスは「喜怒哀楽」の感情のうち「哀」をダンスで表現することができ、観客の心をグサリと射抜く。そこがストリートとの大きな違いであり強さの秘密だろう。


▲大会によって、創作ダンス寄り、ストリート寄りを作り分ける。創作にはストリートのカッコ良さ、ストリートには創作の芸術性と、両方のエッセンスが相互に影響し合うのだ。

だからといって、両者の居場所を分けてしまうのは、元に戻ってしまうことになるし、今の時代ナンセンスな話だ。学生目線で考えれば、創作ダンスがストリート系からグルーヴやエンタメの刺激を受け、逆側からはダンス技術や芸術性を学び取ることができる。新しいダンスの時代。それが今の、これからの時代の「学生ダンス」なのだろうし、樟蔭や他校が目指しているのもその地平にあるのだ。
表現とグルーヴ、テーマと解放、芸術とエンターテインメント。それらを併せ持つような作品が、未来のダンサーたちから生まれてくるのを楽しみにしたい。

 

 


▲振り付け一つ一つに意味をつけ、表情や感情を追及し、樟蔭ならではの世界観を大切にしているという。


▲生徒はダンス部に入って大きく成長する。ダンス技術だけでなく、企画力、人から力を引き出す技、地道な努力姿勢など。コツコツやって伸びた実感は自信となりさらなる成長につながる。


▲こちらは幹部の部員。練習で大切にしているのは、自分で与えられた課題の意味を考えること。自主性を大切にし、部員全員のダンスの基礎力はもちろん、人としても成長できるようにスキルアップすることが目標だ。


DATA

●創部:1963年
●現在の部員数:90名(中1〜高3年)
●コーチ:5名
●練習日:平日16:00〜18:45/土14:00〜18:00/日10:00〜18:00
●練習場所:ダンス場
●入部時の初心者比率:3割
●指導で一番大事にしている部分:自分で与えられた課題の意味を考える。
●ダンス部で生徒が変わった部分:企画力、人から力を引き出す技、地道な努力姿
勢など、コツコツやって伸びた実感は自信となりさらに伸びる。

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【まとめ〜石原編集長取材MEMO】
創作ダンス「強さ」のPOINT

★部活のノリは体育会系
・戦後に再編された女子体育から創作ダンスは生まれた。
・伝統や勤勉さ、規律や自律から生まれる芸術表現。
・女子校のダンス部は最後に残された体育会系かも?

★モダンダンスの技術力

・しなやかさ、静けさ、華麗さ、強さなど表現の幅が広い。
・曲に合わせる前に呼吸を合わせる。呼吸はまず声出しで合わせる。
・ストリート系の大会ではテンポ感やリズム感を強調している。

★芸術性が持つ大きな大衆性
・芸術表現には前知識がいらない。良いものは万人の心に響く。
・逆にストリート系のほうがカルチャーや「匂い」への理解が必要。

★少女たちの神秘性
・少女たちによる民族舞踊の神秘性、創作ダンスの中学生はそこに近いムードがある。宗教的な動。
・高度な技術・表現力・エネルギーをもって抽象表現を完遂されば、評価の目線は興味・関心・刺激へと変化する。よって大会では減点されにくい。

★3つの「創作」
・テーマを創作(発見)する、世界観(ストーリー)を創作する。動きや表情を創作する。
・その過程は教育的な意義とシンクロする。部活動で奨励されるだろう。
・もともと教育と相性が良かった創作ダンスが、技術評価に重きを置いてきたストリートの大会で評価され始めてきた。

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