【解説】2021年夏のダンス部大会のコロナ対策・審査傾向・大会の特徴

2021.10.22 HIGH SCHOOL

コロナ禍で開催された2021年の夏のダンス部大会を振り返ろう。

コロナ対策、審査傾向、全国の勢力傾向、今後についてなどなど。各大会の詳しいレポートや動画は以下にあるので、ぜひ参照してもらいたい。
ダンススタジアム(日本高校ダンス部選手権)>>ビッグクラス
DCC(全国高等学校ダンス部選手権)>>記事動画
全日本高等学校チームダンス選手権>>小編成大編成

 

文:石原ヒサヨシ(ダンスク!)
『ダンスク!』37号より転載

コロナ禍での苦心のリアル開催

 

今年も夏の大会が終了した。昨年オンライン開催だったDCC(全国高等学校ダンス部選手権)の決勝は無観客でのリアル開催、ダンススタジアム(日本高校ダンス部選手権)は昨年に続いて入場者数を制限してのリアル開催で、感染の報告もなく無事に終了したとのことだ。
2年目となる コロナ対策も板についた感もあり、出場数や観客の協力的な姿も見慣れたものに映る。夏の大規模イベント開催がいろいろと取り沙汰された時期ではあったが、学生たちにとって、人前で大きなステージで踊れることは何よりの価値があり、 集大成的な思い出になる。開催に尽力した大会関係者には拍手を送りたい。


▲顧問と学生で運営される「チームダンス選手権」も、今年はコロナ対策を徹底して決勝をリアル開催。

 

際立った審査傾向の違い

 

今年のDCCではストリート系の評価が低かった。漢字2文字の表現性に高得点があてられる大会ゆえに、ジャズ系や創作系との相性が良かったことに加え、審査員の審査傾向も影響したと思われる。
優勝した山村国際は、ここ数年の作品では出色の出来で、ダンス力・ビジュアル・表現力・エンタメ性すべてにバランス良く秀でていた。
ダンスタジアムではジャズ/ヒップホップともにバランス良く評価されていたが、福岡大若葉の初出場での初優勝はやや驚く結果だった。確かに高度な技術と完成度を持つ作品ではあったが、こうも創作ダンスへの高評価とストリート系大会への進出が続いてしまうと、ダンスタがだんだんと「神戸化」してしまいそうで、各大会の棲み分けが曖昧になってくるのではないだろうか。今後は、ストリート、ジャズ、コンテなど、出場校のスタイル分布に基づいたバランスの良い審査員の選出がより必要になってくるだろう。


▲DCCで優勝した山村国際は、ダンスタでは入賞ならず。

 

関西強豪校の苦戦ぶり

 

入賞常連だった関西のチームがやや苦戦したようだ。いわゆる形(カタ)と言えるほど、得意スタイルを打ち出すパフォーマンスではあるが、代ごとのバージョンアップは必要になってくるだろう。伝統やプレッシャーに負けず、知恵と勇気をもってどのような進化を踏んでいくか、関西の伝統校の 〝進化に真価〞が問われていく時代になってきた。同様の課題はこれから、創作ダンス系のチームにも問われていくだろう。


▲関西の強豪校である久米田高校は、プレッシャーにも負けずスタイルを進化させていた。

 

ダンス部大会が向かうところ

 

ダンス部大会が増え、定着していく段階に入った今、先ほどの通り各大会の〝棲み分け〞が、学生の取り組みやすさや各大会の生き残りにとって必要になってくる。現在継続中の主な高校ダンス部大会とその特徴を簡潔に記すとこうなる。

ダンススタジアム ……認知度、規模、作品力を評価
DCC ……評価の独自性、華やかさ、エンタメ力を評価
チームダンス選手権 ……公的な運営、北九州で決勝開催、ダンス力を評価
ハイダン/高校ストリートダンス選手権 ……ストリートダンス寄り
全日本高校・大学ダンスフェスティバル ……歴史、創作ダンスを評価
ダンスドリル/USA ……チア系大会、フロアでの演舞、厳密な審査基準

すべての大会に出場するのは到底無理だ。自分 たちのダンススタイルがどの大会で評価されるのか? その大会へ挑む教育的意義は? またはスケジュールの問題などで、ダンス部側が〝大会を選ぶ〞状況にはなりつつある。大会側もしっかりと独自性を打ち出し、ダンス部界全体としては各大会の棲み分けが明確になり、『ダンスク!』としてはそれぞれの価値をしっかり伝えることが命題であると考えている。



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