【連載2回目】チームを鍛える!!!〜基礎・応用・振り付け〜練習メニューと作品作り

2022.10.13 HIGH SCHOOL

チームを鍛える!!

〜強いダンス部の組織作り〜

>>第1回目より

文:石原ヒサヨシ(ダンスク!)
ダンスク!No.40から転載

 

#03:練習メニュー

 

基礎は正しい形・負荷・意識で。強豪校は基礎と振り付けの「間」を大事にする

 

#正しい基礎練のあり方
#意識の持ち方
#基礎と振り付けをつなぐ応用練習

次に練習メニューを考えていこう。筋トレから基礎練、そして振り付け練習という一般的なダンス部の練習の流れというのはあるのだが、筆者が取材に訪れる強豪校では、その微細は異なっている。現在の練習時間自体はコロナの事情もあり平日1.5〜3時間と長いとは言えない。限られた時間で、いかに有効に練習を行なうか。その「出口」をどこに設定しているかで、組まれる練習メニューは決まってくる。

まず基礎体力やダンスの基礎力が足りていないダンス部や初心者は当然、基礎練習に重点を置くべきだろう。ストレッチ、アイソレ、筋トレなどの基礎メニューを「正しい形」で「正しい負荷」で「正しい意識」で行なうことが大事になってくる。

まず「正しい形」だが、筆者が取材で見たところ、ココをきちんとやれているダンス部は決して多くなく、そのチェック機能も精度が低いようだ。同じ筋トレやアイソレでも、正しい形や角度、正しいアライメント(骨の配列)で行なわないと、意味がないどころか怪我につながる可能性もある。
「負荷」に関しても同様で、正しい形で行なわないと正しい負荷がかからない。その運動でつけるべき筋肉や柔軟性が得られないのだ。形や負荷を正しくできるということは、「正しい意識」につながっていく。いま行なっている基礎トレーニングが、どこを動かしていて、どこを鍛えていてダンスのどの動きにつながっているかを意識することは非常に重要である。

話はやや逸れるが、優秀なダンサーやスポーツ選手は、体内に意識やエネルギーをめぐらすことがうまい。指先なら指先、膝なら膝、体幹、下半身など指示通りにその部分に意識を集中することで、動きのポイントを素早くつかんでいく。こういった基礎トレーニングでは、動きだけではなく、「意識」を鍛え、鋭くしていく意味もあるのだ。

基礎トレーニングを正しく行なっていくには、やはり客観的なチェックが必要だ。初心者のうちは、コーチや経験者に見てもらって、マンツーマンでチェックしてもらうのが良いだろう。外から見た「形」だけではなく、ここでも体の内部でどこを「意識」していくかも指導したいところだ。気をつけたいのは、絶対に無理をしないということ。部活動のノリで、筋トレの回数を無理に重ねたり、可動域以上にストレッチしたりすると、思わぬ怪我につながってしまう。それぞれのレベルに合った適正な形や負荷を見極め、日々ちょっとずつ頑張れるレベルを引き上げていくのが理想だろう。

基礎練習のあとは、その時に必要な振り付け練習に入っていく練習スケジュールが多い。大会がある場合はその振り入れや踊り込み、振り付けが必要な場合はその制作に入る。ここで気をつけたいのが、それまでの基礎練習と、振り付けなどのダンスの動きや意識が連動しているかどうかだ。なぜ基礎練習があるのかと言うと、当然ダンス技術のベースアップもあるが、「出口」としての振り付けをより良くしていくためでもある。基礎をうまく応用して、振り付けの動きにつなげているか? あるいは、振り付けをより良くしていくための基礎練習ができているか?などを今一度確認していきたい。

そこで、強豪校が取り入れているのが、基礎と振り付けの間にある応用練習だ。学校によって呼び名は違うが、振り付けにある特殊な動きを強化するための基礎練習だと思っていてほしい。踊りの流れで回数を重ねていくのではなく、その部分だけを反復したり、部分的に強化したりする。踊ってみて特定の筋力や可動域が足りない場合は、筋トレやストレッチに戻る場合もある。踊り込みの回数を増やしても、なかなか良くならない場合は、この基礎と振り付けの「つなぎ」の部分に着目して、練習メニューを見直してみても良いだろう。


▲ダンスク!プロデュースの基礎トレ動画シリーズ。ストレッチ〜アイソレ〜筋トレ〜リズトレ〜ジャズ基礎まで、見ながら一緒にできる!

 

#04:作品作りのポイント

 

自分たちの気持ちと強みに特化し、客観性とバランスを大事に

 

#振り付けは作曲、テーマ決めは作詞
#選曲にこだわる
#自分たちの強みに特化する

大会やイベントのために作品作りが必要となるが、ここで、ダンスの作品作りを「作曲」とたとえていくと、さまざまな制作方法が見えてくる。

まず「振り付けをする」ということは、歌で言うと作曲をする、メロディを作る行為とする。中には鼻歌を歌っているうちに歌ができていた、という才能の持ち主もいるだろうが、大概は何曲も何曲も歌っているうちに自分も作曲できるようになったというパターンが多いだろう。聴いたり、歌ったり、あるいは分析したりして、ヒット曲や自分が好きな歌のメロディやリズムを自然にインプットしていく。そうした曲の断片の集積や、曲全体のムードというのが、いざ自分が曲を作る段階になって自然に出てくるわけだ。最初は模倣になっても構わない。とにかく、まずはたくさんのインプットをしていくことが大事だ。だから、たくさんの振り付けを経験してきた経験者が、振り付けをできるようになる、というのはごく自然の話なのだ。
さらに言うと、歌ならば自分の声質や声域、ダンスならば自分の体型や得意スタイルを活かした振り付けになっていくだろうが、プロの作曲者や振付師とは、対象に合わせてさまざまなスタイルを作り分けることができる。言うならば、そこがアマチュアとプロの違いなのだ。

そして作曲があれば作詞があるわけだが、ダンスの場合で言うと、作詞はテーマ性やメッセージにあたるだろう。非言語表現のダンスの中で「何を伝えたいか」を明確にすることは、特に教育的意義の強いダンス部では重要な要素だ。作品作りの順番として、作曲よりも作詞が先、ダンスならば振り付けよりも「何を伝えたいか?」をまず話し合うことが、表現としては自然な流れだろう。最初に「想い」あり、なのだ。そのためにまずは部員だけで話し合おう。全員が想いを一つに、イメージを共有できるまで話し合っていくべきだ。
観客の心を動かすのは、メロディだけでも詞だけでもない。それらがバランス良く合わさった時に初めて名曲が生まれる。ダンスでいえば動きとメッセージ、競技性と表現性、肉体と精神、そのバランスが作品の世界観を作る上で一番重要なわけで、他の競技では味わえない、ダンス部の活動でしか取り組めない最大の魅力だと思う。

先ほどの「模倣」に関してだが、ダンス部によって先輩たちが踊ってきた作品を、後輩が「踊り継ぐ」練習方法もある。場合によっては、代(メンバー)が変わって、同じ作品で大会やイベントに出場することも。これは、その部の伝統やスタイルを継承して次に活かしていく意味もあるだろうし、音楽もダンスも良い作品やクラシックに学ぶことは、創作への近道とも言えるのだ。

では話をダンスだけに絞ろう。作品作りには、振り付けだけでなく、その前に選曲やあり、構成があり、衣装やメイクなどの行程がある。筆者の見たところ、強豪校は特に選曲に時間をかけているようだ。選ぶ基準はいろいろだろうが、当然「その曲で踊りたい!」という強い気持ちがメンバーにあることが大前提。途中で作品作りがうまく進まない時、実はメンバーの大半がその曲があまり好きでなかった、なんてことは結構あることなのだ。また、ポピュラーな選曲ならば盛り上がれるし、それはダンス文化の基本でもあるが、大会作品の場合は他校と曲がかぶったりするので注意したいところでもある。

ダンス部の大会を1日見るだけで実にいろいろな曲が楽しめる。踊っている高校生の世代、教えているコーチや顧問の世代、それを応援する親世代など、いろいろな世代の音楽が入り混じっているし、高校ダンスの場合はいわゆるダンスミュージック以外のからの選曲も増えているので、言わば日本独自のダンス文化の多様性を味わうこともできる。ダンス自体のスタイルも同様、ストリートからモダン、ジャズなどが入り混じり、その審査は年々難しくなっているが、ある種の異種格闘技戦のような趣がダンス部大会の醍醐味なのだ。

そんな中、大会で上位の成績を残したいならば、ポイントはここに尽きる。「自分たちの強みに特化する」ことだ。それは例えば、ダンス技術なのか、表現力なのか、アイディアなのか、構築力なのか、メンバーの個性なのか。「他にはないウチだけの武器」、まずはそこをとことん話し合い、客観的に分析し、作品作りに落とし込んでいくことだ。

その強みを押し出しつつ、その他の要素をバランスよく構築することは、作品の仕上げの部分として重要だ。ダンスと曲が合ってない、表現したいことと表情や衣装が合ってない、などなど。神は細部に宿る、とも言うだろう。初心者のダンス部にありがちな、、このバランスの悪さというのは非常にもったいないマイナス要素であることを知ってほしい。そのためには「客観性」を養うこと、あるいはさまざまな人に見てもらうこと。ちなみに、物事には3つの視点が必要だという。1つは当事者たちの視点、1つはそれを指導監督する人の視点、そして全く関係のない人の視点だ。

ダンスは抽象表現であるゆえに「伝わってない」ことが思ったよりも多い。例えばストーリー性の強い作品など、踊ったあとに部員からの説明を受けてようやく意味が把握できる場合があるが、それでは意味がないのだ。個人的には、ダンスの場合は説明的な作品よりも、イメージ訴求を重視した作風の方が伝わる力が強いと思うのだが、どうだろうか? 観客は理解をしたいのではなく「感じたい」と思うのだ。


▲生徒全員が振り付けに参加する連覇王者・同志社香里のスタイル。

 

>>第3回目へつづく



  • 妥協せずに踊り進んでいく【菅原小春】がブルーノート東京ソロ公演で見せた「問いかけ」