振付師の思考法【TERARIE&生徒】都立三田高校ダンス部ダンスタ準優勝作品をセルフ解説

2023.10.06 HIGH SCHOOL

<<前半の解説より

 

ユニゾン〜舞台の幕開け

 

◇生徒振り付け部分「39羽が目線を動かす」
39人で踊る大所帯のユニゾン。
最初の幕開けといったところでしょうか。39羽の孔雀がジャングルを駆け回るイメージです。
このユニゾン部分の音源(GO_A「SHUM」) を決めた際に、何処となくSF感のある、どこに連れて行かれるのかわからないメロディラインに惹かれて、それを踊りでも表せるようにみんなでイメージ共有しました。
振り付けの構成的な面では、この部分は立ちとフロアがワンエイトずつ入れ替わるのがポイントです。ワンエイト目に立ちで踊っていた人がツーエイト目にフロアで踊る、逆も然りといったイメージです。そうすることで、観客の視線をたくさん動かすことを狙いました。

 

◇生徒振り付け部分「2人のティンカーベル」
ここでジャンプをしている2人のイメージは妖精。次のシーンが第二幕の幕開けだとしたら、この2人はステージの雰囲気をガラッと変えてくれる存在です。

ティンカーベルのような、2人がジャンプしたらキラキラと粉が吹きかけられて場面が変わってる、そんなイメージで2人にはたくさん振り付けを考えてもらいました!

 

 

中盤〜孔雀の動きを表現

 


◇生徒振り付け部分「チョ!」
今回の作品で最もキーとなる部分。「チョ!」と言いながら首のアイソレをします。

チームの中では、孔雀と言えば「チョ!」だよねと全員が口を揃えて言うほどみんなお気に入りの振り付けです。
アイソレをしながら、客席を見渡すように顔を左から右へ動かし、どんな獲物も逃さない孔雀の野生的な部分を表しています。
元々、鳥をやることが決まった際にTERARIEコーチとのミーティングで、「アイソレを使った鳥のような動きをしたら面白そう?!」と話していて、このフリが生まれました。孔雀という生命体をもっとも”身体”でファニーに表現しているところです。

 

 

◇生徒振り付け部分「圧をかける」
前乗りしながら、三角形を逆三角形に移動する部分。

ここは、とにかく圧!
踊りでも感情でも前に圧をかけることを意識して、わざと足音を大きく鳴らしたりしていました。
さらに、三角形のトップの子が”親鳥”になって群れを引き連れ、みんなが親鳥についていくという孔雀の群れ、集団で行動する習性を表しました。親鳥役の子の抜群なキャラクターとダンスセンス、カノンになっている群れの振り付けの連続性。注目して欲しいポイントのひとつです!

 

◇生徒振り付け部分「3部隊の役割」
3部隊に分かれてそれぞれ別の振りを踊るシーン。

実はこの3つの部隊には、それぞれに孔雀としての役割があるんです!
私たちの中ではA・B・C部隊と呼んでいて、
A→孔雀の女王(千手観音で1 番真ん中に来るグループ)
B→獲物を獲る部隊(鳥の動きをしながら下手から上手を横切るグループ)
C→孔雀の巣を守る部隊(写真に写っているジャンプするグループ)
という確固たる役割がそれぞれにあり、部隊ごとにその役割を達成できるよう踊っていました!

振り付けという確固たる役割がそれぞれにあり、部隊ごとにその役割を達成できるよう踊るのです。
振り付けも、Bグループは鶏冠を手で表すように動かして威嚇したり、Cグループはジャンプしたあと手を体の前でクロスさせて自分の身を守るようにしたりと、それぞれの役割に合わせて作りました。
とはいえ3部隊をあのステージで、ぶつかることなく綺麗に踊るのはとても難しく、振り付け構成ともに何度も何度も変更して試行錯誤した部分でもあります。

 

 

ラストに向けて、解き放つ準備!

 

♡コーチ振り付け部分「解き放つ前兆」
羽を広げる部分。
孔雀が求愛する際に羽を大きく広げる姿がとても神々しく綺麗な孔雀。そこをサビ前の見せ場として表現したく音源制作から孔雀の羽を広げるイメージで制作しました。
ストーリーとしては〝解き放つ前兆“です。しかしなかなか難しくて羽扇子を使ったり、色々試行錯誤して三列の千手観音で1 匹の大きな孔雀の羽を表現しました。

 

 

♡コーチ振り付け部分「鋭さ」
孔雀の目や羽を表しています。
孔雀の羽の模様である目。鋭いイメージです。

 

◇生徒振り付け部分「何かを掴む」
ラスト使用曲(Sia「Move Your Body」)が繊細な音から始まるので、その一つ一つの音をしっかり取るような振り付けにしました。

キュッと締まった千手観音の構成でセンターに視点を集めて、そこを中心に徐々に広がり、解き放つ準備をしている様を表現しています。
センターの振りは、ラスサビに向けて、私たちの気持ちが、作品が、どうか届いてほしい!…届け!!!という気持ちで片手を前に出し、何かを掴むようなイメージです。

 

 

ラストユニゾン〜解き放て!

 

♡コーチ振り付け部分「飛び立つ!」
サビ頭。
全員が青空に飛び立つ、解き放つイメージです!
孔雀はあまり空を飛ばないのですが、空高く飛ぶイメージでジャンプをしてサビの躍動感、一体感を出しました。

 

♡コーチ振り付け部分「肩を当てる」
孔雀の勇ましさや力強さを、肩を当ててアイソレを生かして音楽を表現しました。

 

◇生徒振り付け部分「さらなる解放」
全身で解き放つイメージで、両手を大きく広げて、表情も口を大きく開いて、とにかくパッ!と広がる感じを表現しています。

 

◇生徒振り付け部分「リズムを見せる」
足のステップを最後に入れて、ラスト曲の「オーオオオー」のリズムがしっかり見えるような振りを作りました。

 

◇生徒振り付け部分「孔雀の動き」
孔雀を意識して、右手は鶏冠、左手は孔雀の尾を表したポーズを取っています。そのポーズを取りながら、ラスト曲の声に合わせて首のアイソレを1 回入れています。

 

◇生徒振り付け部分「大ジャンプ!」
最後の力を振り絞って大きくジャンプ!
解き放った私たちの姿、大きく飛ぶ私たちの姿をここに全部詰め込んでいます。ラスト曲の音に合わせて、前からカノンでジャンプしています。

 

 

◇生徒振り付け部分「フィニッシュ!」
孔雀が羽を広げるように、みんなで大きく手を広げて終わります。
私たちの内に秘めた思いが解き放たれた!という気持ちで、スポットライトの光がパッ!と当たるような、そんなイメージで最後のポーズをとりました。

 

 

まとめ

 

〈生徒より〉

勝利へのこだわりを捨てず「届ける」ことを

今回の大会で 1 番こだわったのは、観客に「届ける」ということです。
予選後、全国優勝を目指すと口では言っていたものの、私達の代にとっては初めての全国大会だったので、なんとなく“優勝”という目標が遠く感じてしまっている部分がありました。
予選後数日間の練習は、何のために練習するのかリーダー含めメンバーのほとんどが見失っていたと思います。
私たちが本当にやりたいことは何か沢山考えた結果、辿り着いたのは、「この孔雀の作品を、私たちの思いを観客に届ける」ということでした。
勝つことへのこだわりは捨てずに、でも何より、今まで一所懸命練習してきたこの作品の楽しさを観て下さ る人に届けたい。全国の舞台ではその気持ちで、メンバー全員踊ることが出来たと思います。
これからも、私たちが本当にやりたいことは何か日々問い続けて、さらにパワーアップした作品を作っていきたいです。

 

〈TERARIEコーチより〉

みんなの底力をこじ開ける

作品を作る上で大切にしていることは、まずは骨組みをしっかり作ること。
全体の流れとしては「起承転結+結」を大切にしています。 群舞で難しいのは全員が作品を理解し、同じ景色を観れているか?が難しく大切だと思っているので、テーマとメッセージなど、キーワードをまずは色んな視点から幅広く生徒達で掘り下げれるだけ掘り下げる。
幅広くしてから、自分達の強みややりたいことを考えながら〝ダンスでどう表現していくか?″を絞って作品を創っていく作業をします。

都立三田高校の教育目標として「自主性」「思考力」「計画性」「協調性」などがあり、 一つの物事に対しての生徒たちの進行の進め方が本当に素晴らしいです。
今回、何より大切にしていたことは「最後の最後まで絶対に満足しない」「私が満足したら終わり」という鞭の様な気持ちで全国大会まで意識しました。
満足してしまうと、みんなが持っている底力やもう一つの扉みたいなものが開かない
それをこじ開けるのが私の役目!というメンタル的な面も強く意識しました。

人が表現するからこそ生まれてる感動は、いくら外の造形が美しくても、心が無くては人の心を揺さぶるダンスは生まれないと思ってます。
孔雀作品はみんなが一丸となり創り上げた想いが乗っかった作品です。
顧問の先生、サブコーチ、後輩やOBOG、家族のたくさんのサポートなどがあったからこそ、1人では成し遂げることは出来ないこと、だからこその魅力が群舞にはあると思います。

嬉しい想いも悔しい想いも、どんな経験も全てが人生一度切りの高校生活の財産だと思うので、皆さんも、大好きなダンスを通して、仲間と本気でぶつかりながらも、作品を作る過程を楽しみながら、素晴らしい作品になります様に願っています。 

 

-終-



  • 現役高校ダンス部カンパニー始動!