【特集】ダンス部大会を考える#1「現在の高校ダンス部大会事情」
2024.08.30 HIGH SCHOOL
ダンス部大会を考える。
学校教育活動の一環として行なわれる部活動は、当然、教育的でなくてはいけない。その意味で、教育者である顧問の先生たちが、ダンス部大会をどう捉えているのだろうか?
各大会が健全に運営されるために、ダンス部の活動が未来の教育像につながるために、ここで真剣に考えていきたい。
(『ダンスク!』2024年8月号記事より転載)
現在の高校ダンス部大会事情
創作ダンスから始まり、ストリートダンスともに拡大。
参加者増、レベルアップ、高い注目度、異ジャンル混戦、大会増加の時代へ。
主要ダンス部大会
★規模・認知度ナンバーワンの大会
ダンススタジアム(日本高校ダンス部選手権)
最大シェアを誇るダンス部の大会「ダンススタジム」。
夏の公式戦は、今年で17回目、昨年度の夏季大会は出場600校以上、予選は全国10箇所の開催と、どんどん規模を広げている。
その歴史や大会規模から、全国のストリート系ダンス部の公式大会として学校も認めている状況だ。
創作ダンス系の大会が、ストリート系のダンス部にフィットしていない状況の中で2008年にスタートし、世間で高まっていくダンスブームや、2012年の公立中学校のダンス必修化の煽りもあって、年々規模と認知度をあげていった。中学校の大会があるのも特徴の1つ。
審査傾向としては、作品力やエンターテインメント性に優れたダンス部が評価されやすいところだったが、近年では創作ダンス出身やジャズ系チームの表現力と技術に優れたチームが上位に入賞することが目立ってきた。
また、昨年からは、審査基準に「コレオグラフィー」という項目が追加された。今年は、恒例のパシフィコ横浜での大会は「全国準決勝大会」と位置づけられ、そこを勝ち抜いたチームが「決勝大会」で日本一を争うことになる。
★漢字二文字を競い合う!
DCC(全国高等学校ダンス部選手権)
こちらはエンターテインメント企業のavexが主催する華やかなダンス部大会。
「漢字二文字のテーマ性表現」に審査の重きが置かれているところが特徴の1つ。
それによって、表現のフォーカスが明確になり、審査員や観客への伝わりやすさにもつながっている。
クラス分けはナシ、同じ学校からの複数チーム出場が可能で、審査傾向はストリート系も表現系のチームも公平に評価されている印象だ。終演後のDJタイムでの、戦い合った出場者同士が、ダンス本来の楽しさを分かち合うシーンには心暖かくなる。
★教員による運営
全日本高等学校チームダンス選手権
ダンス部の顧問の先生方による全日本高等学校ダンス連盟で運営される大会で、その意味では他競技のインターハイに近い大会だ。
審査はダンス技術に重きを置かれ、腕に自信のある本格派チームが鎬を削り合う。開始当初から〝ダンスの神様〟故・坂見誠二さんが審査委員長を務めていた。決勝が北九州市で行なわれるのも特徴。
★円形ステージでの決勝ハイライト
ハイダン(HIGH SCHOOL DANCE COMPETITION)
多くのダンスイベントを手がけるアノマリー主催のダンス部大会。各審査項目を個別の審査員が受け持ち、予選に複数回出場できるのが特徴。
ストリートダンスらしさを評価する傾向があり、決勝は両国国技館の国内最大ストリートダンスイベント「DANCE ALIVE HEROS」内の円形ステージで開催される。
★チアダンススタイルでの演舞
全日本高等学校ダンスドリル選手権大会
チアダンスを主にしたアメリカ発のダンス部大会。ダンススタジアム登場以前は、ストリート系のチームは、こちらのヒップホップ部門に出場することが多かった。ステージではなく、チアのように体育館フロア中央で、照明ナシ素灯りの状況で演舞をし、大会用に訓練を受けた審査団によるジャッジが特徴である。類似の大会に「USAジャパン」などがある。
★ストリートダンスの老舗イベンター主催
高校ストリートダンス選手権/高校ストリートダンスグランプリ
ダンスイベントの老舗アドヒップが主催するダンス部大会で、それぞれ関東/関西で開催される。今年から、「全日本高校ストリートダンスクライマックス」が全国規模でスタート、決勝はパシフィコ横浜と、大きな展開となる。審査員には玄人肌のプロダンサー、ストリートダンスらしさに審査基準を置いた大会だ。
★創作ダンス部の登竜門
全日本高校・大学ダンスフェスティバル
今年で36回目、ダンス部=創作ダンスだった時代から続く、ダンス部大会の老舗的存在。強豪の創作ダンス部が多く出場。審査基準や作品の尺などが、ストリートダンス系の大会とは大きく異なる。
【おもなストリートダンス系大会】
歴史
創作ダンスからリズムダンスへ
ダンス部の始まりは創作ダンスからであった。戦後の学校教育において、「舞踊」の科目として女子体育連盟を中心にダンス教育が形作られ、それが創作ダンスを主とするダンス部の活動へとつながった。
70〜80年代にはジャズダンス、80〜90年代にはヒップホップダンスの流行もあり、いわゆるリズムダンスを取り入れるダンス部も増えてきた。
チアダンス系の大会には「ジャズ部門」や「ヒップホップ部門」が創設。2012年の「公立中学校ダンス義務教育化」の前後には、ストリートダンスブームが起こり、ダンススタジアムをはじめとする、ストリート/リズムダンス系の大会が次々に登場した。
2017年、登美丘高校の「バブリーダンス」ブームもあり、ダンス部への世間からの注目が集まる。その後、ストリート系の大会に創作ダンス出身のダンス部が進出するようになり、多様なジャンルのチームが同大会で争い合う「異種対決」の様相になってきた。
▲「高校ダンス部」の面白さを伝え、社会現象ともなった登美丘高校のバブリーダンス。
楽曲
著作権申請がマストに
ストリートダンス勃興期には、音楽著作権をケアするイベントは決して多くはなかった。
ダンスイベントで、しっかりと著作権申請をすることが根付いたのも、ダンス部大会の存在によるところが大きいだろう。
近年では、各大会にテレビ局などの大手メディアが関わってきたこともあり、音楽著作権申請はよりシビアな状況に。マニアックな選曲やDJミックスなど、ダンスカルチャー独自の選曲の自由さが損なわれるのでは、という声も上がっている。
▲曲同士を重ねたりして「ミックス」していくことは、HIPHOP古来のカルチャーの1つだ。
審査
審査員のラインナップで多ジャンルに対応
主要ストリート系ダンス部大会のジャッジのスタイルは、基本ストリートダンスイベントのマナーに従っている。著名な現役プロダンサーがラインナップされ、それがイベントのバリューや出場者の信頼感にもつながり、ジャッジムーブやコメントも演出の一つとして組み込まれる。
審査員は、事前発表の大会もあれば、当日発表の大会も。プロダンサーや専門家以外のジャッジを入れる大会もある。多ジャンルのチームが出場する現在の状況だが、専門ジャンル別にプロダンサー複数人をバランス良くラインナップすることで、その状況に対応しているようだ。
審査基準は、大会によってまちまちだが、技術や構成力などいくつかの項目に分け、それぞれの合計点数を集計して順位が決められるのが通常。項目を1人のジャッジが受け持つスタイルの大会もある。特別賞やスポンサー企業からの賞が多いのも、ダンス部大会の特徴の1つだ。
▲大会によって、審査の順位や得点表のフィードバックがあり、学校側としては有難いところ。
時期とクラス
夏季に集中する決勝大会
決勝大会は、8〜9月の夏休みに集中しており、各予選は、6〜8月にかけて行なわれる。
ダンススタジアムは、1年生チームの新人戦を3月の「春大会」、バトル大会を12月の「冬大会」と設定しており、ハイダンは決勝を4月にイベント「DANCE ALIVE HEROS」内で行なう。
12人以下のスモールクラス(小編成)と、それ以上のビッグクラス(大編成)に分けている大会が多く、それぞれ1チームずつ同校から出場するが、同校から複数チームが出場できる大会や、何度も予選にエントリーできる大会もある。
▲ダンスタのバトル大会は3on3のチームバトルで、2回戦までは持ち込み音源で行なわれる。