【大会レポート】新たな全国大会ストダン“クライマックス”の存在意義とは?

2024.09.06 HIGH SCHOOL

2024年の夏は、ダンス部の大会にとって大きな変化の年だった。

単純に言うと、また大会の数が増えたのだ。
大会に出たいダンス部にとってはさらに夏が忙しくなっていた。
部員や顧問にとっては嬉しい悲鳴、といったところだろうか?

大きな変化は2つ。

最大規模のダンススタジアム(日本高校ダンス部選手権)が、これまで8月中旬に決勝大会としてパシフィコ横浜などで開催していた大会を「準決勝大会」と位置付け、後日に決勝大会を開催する形になったこと。

そして、これまで「高校ストリートダンス選手権」「高校ストリートダンスグランプリ」と、東西に分かれてアドヒップが開催していた大会が、「全日本高校ストリートダンスクライマックス」として、全国で予選を展開、決勝大会をパシフィコ横浜で大規模開催したのだ。

 

ストリートダンスを守る大会?

 

アドヒップとは、日本のストリートダンスカルチャーを、イベントやメディアで築いてきた関西の老舗ダンスイベント会社。その昔、関西のストリートダンスのレベルが高かったのは、アドヒップの存在によるところも大きく、その歴史はDANCE ALIVE HEROSやD LEAGUEを母体運営するアノマリーよりもはるかに古い。

元ストリートダンサーの顧問の先生方にとっても、アドヒップは馴染みと信頼のある名前でもあり、DANCE DELIGHTなどの大会で、ストリートダンスコンテストのマナーを作り上げてきた。
当然、ダンス部向けのコンテストイベント「ストダン」もそのマナーに従っている。

まず、ジャッジはストリートダンサーで固めていること。
コンテストやバトルで実績を残し、シーンからリスペクトされる各ジャンルからのダンサーたちを選出。
審査基準は、「ストリートダンスらしさ」として各ジャッジの主観に委ね、評価ポイントを項目分けしていない(今回、他のダンス部大会と数名のジャッジがかぶっていたのは、考慮すべきだった)。

という理由からか、他の大会で見られる創作ダンス系のチームのエントリーは少なく、オールドスクールやヒップホップ、ニュースタイル系のチームの元気の良さが目立つ。

他大会のように大編成と小編成でクラス分けはしていないが、同一校からのエントリーは可能(同好会も出場可)。学校名ではなく、チーム名をメイン表記し、「HIPHOP、JAZZ、FREESTYLE…」とアドヒップの他大会と同じく、ダンスジャンルを並記する。

 

大会の冒頭で主催者が語る通り、出場チームを「高校の部活」としてではなく、「いちストリートダンサー」として捉えている大会なのだ。

各チームの直前紹介も、チーム名のコールのみにとどめ、メッセージや紹介動画などで審査にバイアスがかかるような演出もない(ココは他の大会も参考にすべき)。

アドヒップが長年築き上げてきた「ダンスコンテスト、かくあるべき」という形が、あえてパシフィコ横浜で開かれることに、彼らの意地とプライドを感じさせる。

 

ダンス部にストリートダンスを取り戻す——。

もしかしたら、そんな意気込みがあるのだろうか。

 

 

結果から見るストダンの存在意義

 

そして、大会の結果の方だが、ハイダンやDCC、ダンスタ準決勝などで紹介してきたチームがほとんどであるために、全チームレポートは割愛する。
>>DCCレポート
>>ダンスタ準決勝レポート

結果は以下の通り。

優勝: “WARA”B-BOYZ(BREAKING/武南高等学校)
準優勝:Realize(FREESTYLE/日本大学明誠高等学校)
3位:N9SD CREW(FREE/北九州市立高等学校)
4位:TEAM 唸(FREESTYLE/樟蔭高等学校)
5位:Einheit(HIP HOP/奈良市立一条高等学校)

優勝チームは、この日の4日前のDCCで優勝したBBOYチーム。
準優勝も、DCCのブロック予選1位通過チーム。
4位は、DCC2位、ダンスタ決勝スモールの優勝チーム。

3位と5位には、ダンスタ準決勝にもDCC決勝にも出ていなかった、ストリートらしい本格派チームが入賞したが、準優勝と4位は、いわゆるストリートには分類されないニュースタイル系のチームだ。ここに、他大会に出ていた創作系チームが出場していたら順位はどうなっていたか……という想像をしてしまった。

大会は違えと順位がほぼ一緒ならば、複数の大会が存在する意味とは??

よく「ジャッジが変われば結果も変わる」という意見もあるが、真に突き抜けているダンスは、ジャッジが変わろうが、得意ジャンルが変わろうが、創作だろうがストリートだろうが、評価はほとんど変わらないと個人的には捉えている。
プロの審査員とはそういう目を持つべきだし、多ジャンルが競い合うダンス部の大会のジャッジならば、なおさらそういう人選が肝要だ。

この「クライマックス」が、ストリートダンスチームを真っ当に評価する大会としてダンス部に定着するのか、はたまたその年のTOPチームが連覇を目指す大会になるのか、入賞を逃したチームにとってのリベンジ的な意味合いになるのか……。

 

ブレイキンが五輪を経て、競技化への一歩を辿っている。
ストリートダンスが、ダンス部大会の中において、突っ張るのか、調和するのか、変化していくのか。

そもそもこの時代、ストリートダンスというカテゴリーは何だろうか?

そして当事者の高校生たちにはそういう意識や自負はあるのだろうか?

 

大会が乱立し、すでにダンス部側が大会を選ぶ時代になっている。

「ストダン」シリーズは、ダンス部側(教育側)からも異質、ストリート側からもまた新質なダンス部大会として独自の進化をすべきだと、個人的には期待している。

来年以降の動向を見守っていきたい。

 

9月1日に行なわれた、ダンススタジアムの決勝大会については、後日レポートする予定だ。

レポート:石原ヒサヨシダンスク!

 



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