寄稿【日大明誠】自主公演にかける想い「一生もの」の舞台を作り上げるために【小泉先生】

2025.02.02 HIGH SCHOOL


▲自身も元ダンサーである小泉先生。生徒に請われてダンス部を立ち上げたのが2013年。

 

ダンス部といえばイベントでの目を引くパフォーマンス、大会での熱いバトル、SNSでのキラキラした投稿やメディア出演…いろいろな活動が頭に浮かぶと思います。

実際に、その活動内容は学校やチームごとに個性があって、多種多様です。

そんな中、私たち日本大学明誠高等学校ダンス部が最も力を入れている活動は何か、と聞かれれば、「自主公演です」と即答します。

この自主公演は、単なる舞台パフォーマンスにとどまりません。部員一人ひとりがこれまで積み重ねてきた努力や成長を形にし、観客へ届ける集大成の場なのです。


▲本年度は、2024年12月17日に、2,000人キャパのJ:COM八王子ホールで行なわれた。

 

創部からの歩みと「一生もの」というテーマ

 

私たちのダンス部がスタートしたのは2013年。まだ若い部活ですが、創部当初から掲げているテーマがあります。

それが「一生もの」

青春の一コマとして終わらせるのではなく、この部活で得た経験が人生の大切な宝物になってほしい、そんな願いが込められています。
練習で流した汗や、大会での悔し涙、仲間との絆、それらすべてが部員一人ひとりの「一生もの」を作り上げる大切なピース。
そして、その中でも自主公演は、その年の努力を形にし、観客へ届ける特別な場です。その特別さゆえに、部員たちの想いも自然と高まっていきます。


>>参考記事(2019年):独自表現で台頭する山梨の新星「日大明誠高校」〜正解のないものに答えを、答えを正解に。

 


▲2021年に取材した際の日大明誠の練習レポート動画。

 


▲同じく2021年の「強豪校の顧問トーク」でも、小泉先生は「一生もの」への想いを語ってくれた。

 

初めての自主公演と試練の年

 

2019年、私たちは初めて自主公演を計画しました。翌年3月に本番を迎える予定で、準備を進めていました。しかし、直前になって世界を襲った新型コロナウイルス。その影響で、公演は中止となりました。
予約済みの会場も泣く泣くキャンセル。その悔しさは言葉にできないほどでした。
ただ、この出来事があったからこそ、「自主公演を成功させるぞ!」という想いは一層強くなりました。

2021年からは、少しずつ規模を拡大しながら自主公演を実施できるようになりました。
この公演は、部員たちが感謝の気持ちを込めて表現する場として位置づけられ、ダンス部にとって欠かせない行事となっています。

公演のたびに成長を感じ、挑戦を重ねる。そのプロセス自体が、部員たちにとって忘れられない「一生もの」なのです。


▲2022年の自主公演制作の密着ドキュメント。制作段階から、トラブルのあった当日までを追った。

 

自主公演に込める想い

 

自主公演で最も大切にしているテーマは、もちろん「一生もの」。
3年生にとっては、この舞台が最後の晴れ舞台になることが多く、特別な意味を持っています。

ダンスに正解がないように、舞台にも「これが正解」という形はありません。部員たちは自分たちで答えを見つけ、それを形にして観客に届けます。その過程は時に悩み、時にぶつかり合いながらも、成長の糧となっていきます。

大会で披露した作品や文化祭で踊ったナンバーをさらに磨き上げて再演をしています。
この取り組みは、自分たちの成長を実感し、観客にもその進化を伝える貴重な機会になっています。そして何より、これが次のステップへの大きな原動力になっているのです。


▲アクティングを多用し、静と動のコントラストでシアトリカルに展開する日大明誠の大会ナンバー。これを目当てに自主公演に足を運ぶファンも多い。いちダンス部が一般のファンの心をつかんでいるのだ。

 

大会への向き合い方

 

近年ダンス部の大会は乱立状態にあり、それぞれの大会が独自のルールや審査基準で運営をしています。どの大会に出場するのかもダンス部によるところではありますが、私たちはなるべく出場できるものには出場をし、「日本一」を目指しています。

「日本一」となれば、その喜びや達成感は「一生もの」となることは確実です。
そして大会に向けていい作品、いいチームを作ることができれば、自主公演の内容を充実させることもできます。

さらに大会で結果を出すことができれば私たちを知ってくださる方も多くなり、自主公演に足を運ぼうと考えていただける可能性も高まります。

そしていい公演を目指す中で、部員たちがスキル、メンタル共に成長すれば、次の大会にもつながるという訳です。


▲2024年度は、ハイダンで全国優勝、DCCで全国5位、チームダンス選手権(大編成)で全国5位、ストリートダンスクライマックスで全国2位という好成績を残す。

 

公演作りにおける「バランス」の追求

 

私が自主公演を構成する上で特に重視しているのが、「バランス」です。具体的には以下の3点を意識しています。

・プロようなの演出と高校生らしさの調和
私たちはプロのような舞台演出や照明技術を取り入れることで、完成度の高い公演を目指しています。
しかし、それだけでは”高校生らしさ”が薄れてしまう。未完成な部分や手作り感を大切にしながら、高校生ならではのエネルギーや感情を伝えられる舞台を作りたいと考えています。
ここの絶妙なバランスが、観客の心に響くものになると信じています。

・世代をつなぐ舞台作り
自主公演は、引退する3年生にとっては集大成の場であり、1・2年生にとっては成長の場でもあります。そのため、3年生のセレモニー的な要素を入れながら、次世代が主役となるパートも意識的に盛り込んでいます。
ここをどう両立させるかは、毎年の課題です。引退する先輩たちの背中を見て、次世代が成長する。そうした循環を舞台の中で表現できるように努めています。

・身内ネタと普遍性のバランス
観客には保護者や学校関係者がいます。感謝を伝えたい相手ですし、部員たちの成長を感じて欲しい思いは強くあります。
一方で、ありがたいことに一般の方々も多数いらっしゃっているので、誰にでも楽しんでもらえる内容にすることも心がけています。
感謝のメッセージは大切に、観客全員がワクワクできる舞台作りを目指しています。これには、演出や構成において慎重な調整が必要で、難しいところでもあります。


▲送り出される3年生たちの涙や感謝の想いは、自主公演のハイライトでもある。

 

舞台の裏側で奮闘する部員たち

 

舞台に立つのは数分。しかし、その裏には膨大な準備があります。
振り付けや練習計画の立案、衣装作りやメイク、照明の調整など、すべてに部員たちが主体的に関わります。
もちろん、意見の衝突も日常茶飯事。それでも最終的には力を合わせ、一つの舞台を作り上げます。
自主公演は、単にダンススキルだけでなく、問題解決や協力の大切さを学ぶ場でもあるのです。


▲2023年の自主公演では、当日にダンスリーダーの病欠という緊急事態が…。

 

チケットは無料。その理由

 

私たちの自主公演は指定席ですが、チケットは無料です。これには理由があります。
それはタイトルの「Gift(贈り物)」が示す通り、私たちの公演はダンスを通じて感謝の気持ちを届けることが目的だからです。
もちろん予算の確保には苦労しますが、それもまた「一生もの」の経験。限られたリソースでやりたいことを実現する力…これも自主公演で得られる大きな財産です。


▲無料のチケット予約はあっという間に終了するという。会場のロビーには、思い出の品々が飾られ、部員から家族や来場者にメッセージカードが贈られる。

 

地域に根付く公演を目指して

 

毎年公演の会場としてお借りしているのは「J:COMホール八王子」です。この自主公演が八王子の「名物イベント」になる…そんな未来を目指しています。

年に一度、皆さまに楽しみにしていただける存在となるよう、伝統を受け継ぎながらも新しい挑戦を続けています。

ダンス部の自主公演は、ただのイベントではありません。
部員一人ひとりが努力と成長を積み重ね、感謝の気持ちを形にして届ける「一生もの」の瞬間です。

この経験が部員たちの人生にとって大きな財産となり、未来への力になると信じています。そしてその舞台を、これからも私たちは心を込めて作り上げていきます。

日本大学明誠高校ダンス部顧問 小泉宏太


【最新動画】本年度の日大明誠自主公演のレポート動画です。ダンス部カンパニー「Wonder School」のメンバーAkoの引退を中心に追いかけました!


Wonder School自主公演
「H.E.A.R.T.」
日時:2025年3月23日(日)
場所: SUPERNOVA KAWASAKI

*昼公演: 開場15:30 / 開演 16:00
*夜公演: 開場 18:30 / 開演:19:00
*チケット金額: ¥4,290 (税込) +1ドリンク

>>チケット購入はLivePocket
>>クラファンは2/10スタート:CAMPFIRE

※未就学児は保護者の膝上鑑賞可(小学生以上チケット必要)
※ご入場時に別途ドリンク代をいただきます。



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