「KAORIalive」の芸術性とメッセージ〜ダンスや表現は自由、頭ではなく心を解放させること!

2018.03.07 INTERVIEW

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プロフィール●京都府出身、高校時代にダンスを始め、ダンサー/演出家/スタジオオーナーとして活躍。主宰する表現系ジャズダンスチームMemorable Momentでは世界的評価を受ける。

 

舞台は立体的な額。そのキャンパスに絵を描くイメージで作る

——まず、カオリさんの作品の着想はどのように始まるのでしょうか。
テーマ性とかメッセージ性というところから難しく考えてしまうと、起承転結とか構成がうまくいかないこともあるんです。私は、もっと日常的に引っ掛かることや不思議だと思うことを作品に練り込むことが好きなんですね。例えば今なら、携帯依存とか。目の前の人と対話をしないで携帯をいじっていたり、見えない人との繋がりの方を気にしている姿を見ると、いろいろと感じることがあるんです。そういうことの方が、今の時代の本当のメッセージになるんじゃないでしょうか。

——例えば、それをダンスで表現すると?
まず、その姿が抽象的にどういう風に見えるかを話し合ってみる。例えば、頭にボックスを被って周りが全く見えない人達に見えるとか、黒い人達に見えるとか、人間じゃない人に見えるとか。そういう風に別の抽象的なイメージで捉えて膨らませてみるとか。

——その表現方法は、高校生が考えたら意外な発想があるかもしれないですね。
そう、若いからこその枠に捉われないセンスは面白いです。なんでもアリだと思うんですよ、ダンスは。始まりは絶対二本足で立たなくてもいいし、寝転がっても、端からスタートしても良い。舞台は一つの立体的な額だと思うんですよ。そのキャンパスに絵を描くっていうイメージで立体的にダンスを作ってみる。そういう風に構成立てしてみると、フォーメーションもすごく面白くなる。ずっとセンターで踊ってる必要もないから、ちょっと上前にいってみて、上前いくってことは下奥が空くから、下奥のスペースをどう埋めるかとか。ド頭だけでもちょっと面白い始まり方をすることで、見ている人を「おっ」って掴むことができますし。


▲KAORUaliveが主宰するMemorable MomentのPV。


▲「反戦」をテーマにした作品。その存在を世界中に知らしめた。

 

見えないもの、言葉にできないものを表現できるのがダンスの魅力

——1回作ったものを再構築することもありますよね。
ありますね。ある程度まで作って1回潰してたり、引き算したりして、本当に必要なものだけ残す。すごく大変で勇気のいることでもあります。ただ、正解はずっとわからないものですし、これでいいのかっていつも思っています。お客さんの反応を見て良かったんだって思えることもあるし、それでも自分の中で腑に落ちなくて再演の為にもう1回作り直すこともあります。終わりはない、完成形はないなって。そうやって、作品の中で自分が成長させてもらっている感じもありますし、やっぱりそういう作業が好きなんですね。衣装ひとつでも、気づいてもらえるかわからない細かいことを修正していたりするんですけど、でも実際それで見え方は全然変わりますからね。

——なるほど。ディティールに神は宿る、というわけですね。カオリさんの作品は芸術的と言われますが、それに対して意識することはありますか?
意識的になることはないですが、とにかくダンスは自由だし、表現は自由だと思いますから、まずは頭ではなく、心を解放させることが大事。カッコ良く踊らなくちゃいけないとか、若くないからできないとかじゃなくて、どんな人がどんな表現をしてもオッケーなんですよね。心を解放することって今の若い子は苦手なところがあって、頭でこうしないといけないんじゃないかとか、なんとなくダンスってこういう感じだからとか、それは習ったことないから……みたいな感じで、心を解放するまでに時間がかかる。まずはお風呂で自由に歌うみたいな感じで、100%自分を解放する。それを人に見せるために、50/50にバランスをとっていく感じですね。

——まずは心を解放することが、人に表現を伝える、芸術的な感性を震わせるエネルギー源になるということでしょうか。
そうですね。私は、見えないものを表現できるのがダンスだと思うんです。言葉で表せないもの、自分の気持ちですら色が出るものではない。その空気感や内面的なものを表現したいんです。

——最後に高校ダンス部員へメッセージを。
私も高校からダンスを始めたんですけど、ダンス部員ではありませんでした。色々しんどい時もあると思うんですけど、横を見たら一緒に全力で走っている仲間がいますよね。それって今しかない、社会に出たらあまりない貴重な時間だと思います。一人じゃないですから、みんなで心を解放していきましょう!


▲こちらは、ポカリ×ダンスク「ガチDANCE部サポート」で登美丘高校を訪問した時の様子。ダンス部は苦手なフロアの動きや、心を解放させて表現する大切さを伝える。

インタビュー&写真:石原久佳(ダンスク!)

>>『ダンスク!』第15号特集「プロの助言」より転載



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