ダンスをシェアして高め合う! 強豪ダンス部顧問&コーチが教える「バトルのススメ」

2021.12.29 INTERVIEW

ダンスをシェアして高め合う!

強豪ダンス部顧問&コーチが教える「バトルのススメ」

 

文&写真:石原ヒサヨシ(ダンスク!)

年末のダンス部イベントと言えば、ダンススタジアムのバトルトーナメント
東日本と西日本に分けて行なわれるこの3on3のバトル大会では、毎年レベルの高い熱戦が繰り広げられる。
女子の多いダンス部は、振り付け作品の制作がメインの活動であり、かつてはダンスバトルは無理じゃないかと言われていた時期もあるが、年々バトルに取り組むダンス部は増えており、そのレベルもぐんぐんと上がっている状況だ。

ダンススタジアムのバトル大会では、バトル大会への参加しやすさを考慮して、1回戦は持ち込み音源による対決。事前に振り付けをして、模擬バトルに挑むことができる。

今回、東日本大会を取材したが、強豪がひしめく中、優勝したのは強豪の二松學舍大学附属高等学校のチーム「Butterfly effect」。なんと学校として大会7連覇の偉業を達成した。


▲5連覇を達成した際の二松學舍のドキュメンタリー動画。

それ以外にもいくつかの強豪校の活躍が目立ったが、上位にはバトル常連校の顔ぶれが固定化されてきているのも事実だ。

筆者がダンス部を取材する中でも、バトルを日常的に練習に取り組んでいる学校は多いとは言えない。そういう部にその理由を聞くと
「バトルはちょっと怖い…」とか
「作品作りが忙しくて…」なんていう声をよく耳にする。

ストリートダンスの醍醐味の1つである「ダンスバトル」。
世界でも日本でも、一番盛り上がるダンスイベントというのはズバリ、バトルなのだ(オリンピックのブレイキンもそう!)

果たして、ダンスバトルを一部のダンス部(ダンサー)のものにしてしまって良いのだろうか?

今回は「バトルのススメ」として、その魅力や、初心者向けのアドバイスを強豪ダンス部の顧問とコーチにインタビューした。

 

バトルやサイファーはお互いが高め合っていけるもの

まずは今大会も抜群の強さを誇り、大会7連覇という偉業を果たした二松學舍大学附属。
その影には、ストリートダンサーであり、バトルにもDJにも精通する顧問の松澤先生の力がある。

「部員にはバトルで勝てる方法なんてことはほとんど教えていなくて、いつも“どれだけ自分を出せるか”ということを言っているだけです。ダンスバトルは得点のある競技ではないから、どれだけジャッジの心に自分たちのダンスを響かせることができるか、その日一番の人気者になれるかが大事だと思っています。結局、そういうチームが結果を出しているんじゃないでしょうか」

その言葉通り、二松學舍が送り出す2チームは毎年、メンバーは違くとも、自分自身を思う存分に表現し、会場を沸かせ(ロックし)、そして優勝をさらっていく。


▲今年も会場を沸かせた二松學舍の優勝チーム「Butterfly effect」

「どこよりもカマしてやろう、という気持ちよりも、どこよりも盛り上げてやろう!というチームであってほしいと思っています。自分のダンスを押し出すというよりも、ダンスをシェアする感覚ですね。バトルでは、相手のダンスに影響を受けて、少しずつ自分のダンスも意図せず変わっていくことがあります。上手い方が必ず勝つんじゃなくて、より場の雰囲気を持っていった方が勝つ。スキルは大事ですが、ヘタだと負ける、というネガティブな考えはまずなくしたほうが良いと思いますね」

バトルに尻込みするダンス部は、まずサイファー(円になって次々にフリーで踊り合う)から始めるのも1つの方法だと松澤先生は話す。例えば、練習の最後の時間に、勝敗をつけずに気軽に楽しく踊り合う。使うのは定番のダンス曲じゃなくて、みんなが普段聴いているような曲でも良いだろう。二松學舍の場合も、J-POPを使って「ヤバいヤツ選手権」なる遊び練習をやっているそうだ。


▲「ヤバいヤツ選手権」について松澤先生が話す、ダンス部顧問対談。

「私が思うサイファーというのは“お互いが高め合っていけるもの”なんです。その場のライブで、ダンスをシェアして、ダンスで会話ができる。ユニゾンで振り付けを踊るのも一体感はありますが、サイファーの場合は、違うことを踊っているのに一体感がある、という感覚なんですね。サイファーでは前の人からバトンタッチするような感じ、バトルでは相手のやったことを受けて対応する感じですね。教育的意義で言えば、個性の尊重=“みんな違って、みんな良い”という場が作れるんじゃないかと思います」

また、サイファーやバトルをやることは、振り付け制作にも影響するという。

「フリーで踊ることができるようになると、それを振り付けに発展させることができますね。しっかり考え込んで作るよりも、いろいろやってみて出てきたものを選ぶことができるから、振り付けの幅を広げることにもつながると思います」

 

ソロ、チームダンス、バトルの能力が影響し合う

そしてこの日、二松學舍と決勝で対戦した叡明高校のコーチ、プロダンサーのMAAさんも同様のことを話してくれた。良いダンサーを作る「3つのバランス」についてだ。

>>記事:叡明高校とMAAさんの躍進について

「チームダンスは振り付けをきっちり踊る能力を鍛え、ソロコンテストは自分で振り付けをする能力、バトルは対応力や応用力などの能力を鍛えることができます。その3つをバランスよくこなすことが、それぞれに良い影響をする。振り付けをメインでやっているダンサーでも、ソロやバトルをやることは絶対にプラスになる。振り付けをもらうばかりで、自分からダンスを出していないと、ダンスが生きてこないんです」

振り付けを優秀なプロダンサーが担当をする場合が多くなってきたダンス部では、もらった振り付けを「自分のモノにする」ことは常に課題だ。

「よくコーチに“振り付けを自分のモノにしなさい”とか言われると思うんですけど、自分でフリーのダンスをすることで、その言葉の本当の意味がわかってくると思うんです。もらった振り付けを咀嚼して、自分のダンスとして出す。振り付けを変えちゃうということではなく、振り付けを自分のモノにする力がついてくる」


▲準優勝に輝いた叡明高校のチーム「AWESOMEST」。今年のダンスタ全国3位に続く快挙だ。

そう言えば、チームコンテストの全国トップ常連校に限っては、普段の練習からバトル練習を取り入れている学校が多い。今回のバトルトーナメントでも、勝てる勝てないに関わらず参戦し、常日頃からバトルに親しんでいる様子がうかがえる。

「チームダンスでも上位を狙うとなると、個々の力が必要になってくるから、振り付け練習だけをひたすらやっても限界があると思います。そこで、個々がソロやバトルをやっていることが生きて来るんじゃないでしょうか」

バトルの意義は、勝てる/勝てないではない。ウマい/ヘタでもない。ダンスが好きなら、その楽しみ方の1つとしてぜひ気軽にやってみたい。それがさらにダンスへ興味や愛情や技術を向上させ、新しい自分の可能性を広げてくれるかもしれない。

「まずは好きになることだと思います。好きになれば、曲も知りたくなるし、大会で試したくなるし、勝てる方法を自分なりに考える。好きになるためには、まずやってみましょう! 振り付け練習だけだど行き詰まってしまう時もあるから、まずは練習の息抜きみたいにやってみてもいいと思いますよ」

最後に、二松學舍の松澤先生はサイファーやバトルへの取り組み方をこうたとえてくれた。

「カラオケでみんな知ってる曲になると大合唱したり、Aメロやサビで分けて、マイクリレーしたりするじゃないですか。あの感覚でいいと思うんです。練習というよりも、遊び感覚で“ダンスをシェア”すればいいと思いますよ!」

 

<第14回 日本高校ダンス部選手権 冬の公式大会 東日本大会:結果>
優勝 二松學舍大学附属高等学校(東京) Butterfly effect
準優勝 叡明高等学校(埼玉) AWESOMEST
3位 富山高等専門学校(富山) goodies
3位 宝仙学園高等学校女子部(東京) ReX:STAR
入賞(ベスト8)
武南高等学校(埼玉) “WARA”BIG-Ⅲ/東野高等学校(埼玉) MOBB/帯広北高等学校(北海道) North Aufguss/日本体育大学桜華高等学校(東京) kali

 

<フォトギャラリー>



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