ダンサーKotoriは「今」を生きる〜Dリーグ退団を決意した想いとは?

2023.08.14 INTERVIEW

今を大事にしたいんです

 

「今やりたいこと、今できることを全力でがんばっていきたい。今あることを全力でやっていけば、その先が何かにつながっていくと思ってます」

ダンサーKotoriは「今」を生きる。
だからなのか、将来の夢を訊かれてもうまく答えられないのだという。

「具体的な目標を立てて頑張れる人はすごいなって思いますけど、私の場合はそこに縛られてしまうのもイヤだし、もともと目の前のことしかできない性格なんです。今を大事したいんですよね」

Kotoriは富山県出身の23歳。キッズの頃からバトルを中心に活動し、3年前に活動場所を東京へ移した同時期にDリーグへの参加を決めた。

「富山とかの地方は都会に比べてダンサーが少ないんです。がんばりたいダンサーにもなかなかチャンスがない。……だから私がダンスをする目的をあげるならば“もっとダンスを広めたい”になりますね!」

ダンスを広める、その大きなチャンスと考え、Dリーグの「CyberAgent Legit」へ加入。TAKUMIや地獄など同世代の個性派・実力派ダンサーが集まるチームだが、2020 年からのファーストシーズンではリーグ中最下位という苦難の始まりだった。

「Dリーグの戦い方もわかっていなかったし、評価されないことでチームにも迷いができてしまった。メンバーのこともお互い知っているようで知らない部分がたくさんあった。みんな目標は一緒なんだけど、気持ちの大きさやその出し方、仕事としての活動の向き合い方に違いがあったのがわかりました」

「CyberAgent Legit」のチームディレクターであるFISHBOYも「まずはチームワークとコミュニケーションが大事」とメンバーに話していたという。事実、2週間に1作品という過密なペースでシーズンが進行するDリーグでは、母体となる結束力があったチームが上位を勝ち取っている。
その中で「CyberAgent Legit」は、よく言えば個性派集団、そう言わなければ“チームワーク不足”が結果として露呈されてしまっていた。

「FISHさんやメンバーいわく、私はチームの中で空気を和ませてくれる存在だそうです。人と人の間を中和してくれる存在だって。例えば、練習の空気が悪い時なんかは、静かに間に入っていって、話したり、笑ったり、空気を和ませていく意識はあるかもしれません。大声でみんなを引っ張っていくタイプじゃないんですけど、私は基本的にずっと平和主義で、ずっと笑顔でいたい性格なんです」

ここにも、Kotoriの「今を大事にする」メンタリティが発揮されているのだろう。
リーグでの結果や作品のクオリティを追い求めてすぎて、「この時」をおろそかにするのではなく、充実した「今」の地続きにこそ、より良い未来が待っている。
まだ起きてもいない未来を想像して不安になるのではなく、もちろん変えられない過去に引きずられるのでもなく、集中すべきは「今」、自分の力で変えられるのは「今」だけなのだ。

 

自分のために、なりたい自分になるために

 

「次の2021年のシーズン後半で徐々にチームがまとまり始めて、2022年ではガッチリって感じ、2023年はレギュラーシーズンで優勝できました! FISHさんやTAKUMIががんばってくれたし、3年も一緒にいるからだんだんと家族みたいになってくる。やっぱりチームワーク、コミュニケーションが一番大事なのがわかりました」

 


▲Kotoriが一番思いれのあるLegitでの作品は、2023シーズンFINAL MATCHでのもの。悔しさが残る一番最初の作品のオマージュでもあった。

 

3度のシーズンの中でKotori自身もダンサーとしても大きく成長した。元々はHIPHOPだが、POPをメインにするチームでは、積極的にスキルシェアをし、ダンサーとしての幅を広げた。自己流だが、WAACKダンスもそのルックスと相まって武器になり始めた。
また、「Dリーグでかわいいダンサーランキング」では1位に選ばれるなど人気も上昇し、SNSのフォロワーも増加。その影響力をチームの発信のためにと、ダンスだけでないところでの自分の動き方を意識していた。

「振り付け作品はお客さんやメンバーのために踊っている意識が強いのですが、フリーで踊る時は完全に自分のために踊っている感じです。ダンスは音楽を感じて踊るのが根本だから、人の目を気にせずに自分が踊りたいままに踊ることが一番自分らしいダンスなんだと思います。昔は、バトルに勝ちたすぎる時期もあって、その時は自分らしいダンスだったか?というと、ちょっと違ったかもしれません。やっぱり、ありのままに踊っているダンスが心を動かすし、結局バトルにも勝つんですよね」

元々はアンダーグラウンドシーンの出身であるKotori。Dリーガーとして、インフルエンサーとして、大手アパレルからもオファーを受けるモデルとして活躍を広げながら、自らの内部の変化に気づいていく。

「Dリーグでの経験は、本当にスゴいことばかりだったし、いろんな人やステージへの感謝の気持ちを気づかせてもらいました。でも活動が忙しすぎて、それ以外のことができなってしまって……。良い経験をさせてもらいましたけど、自分のために、なりたい自分になるために、次のステップに行こうって決めました」

2023シーズンFINAL MATCHの作品では、自分の中ではこれで最後だと決めていたので、練習中から涙を我慢していたという。
Dリーグへの感謝、メンバーへの愛、ファンへの想い。それらを背中で感じながら、Kotoriは次を目指して「今」を自分らしく生きる。

「自分の好きなダンスに触れつつ、応援してくれる人のためにいろんなことをやっていきたいです。ダンスはもちろん、ファッション関係やナンバーイベントにも興味があります。あと、BELISH CLUBという、映像ディレクターとダンサーで作っているチームでは、新しいことや面白いことをやっていきます。地元の富山でも月イチでレッスンをやり始めました。いろんな形で“ダンスを広めていく”ことにつなげていきたいです」
「自分自身、ダンスで世界が広がったんです。仲間が増え、音楽やカルチャーや勝つ喜びを知り、いろんな経験をダンスから得てきた。ダンスも歌や音楽と同じことができると思うんです。ダンスでみんなとひとつの輪ができたら、面白いコミュニケーションができたらと思っています。ダンスの輪を、富山とかの地方にまで広められれば、すごく幸せなことですね」

地に足をつけ、周りに感謝し、自分らしさを大事に、そして人の幸せを願う。
人生の本質を、幸せに生きる道を感覚的に知る23歳のダンサーは「今」を輝かしく生きている。

インタビュー&文:石原ヒサヨシ

◾️Kotori:Instagram
◾️Kotori〜TikTok
◾️BELISH CLUB:Instagram

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