【インタビュー】ブレイキン日本代表コーチ「KATSU ONE」が振り返るオリンピックの戦い
2024.09.09 INTERVIEW
すべて出し切った上での結果
「Amiの金メダルに関しては、これ以上ない結果でした。シゲキ(Shigekix:4位)、ヒロト(Hiro10:14位)、あーちゃん(AYUMI:5位)もそう。選手も裏方もみんな、あれ以上の準備はできなかった。それで出し切った上の結果だから、負けても悔いはないし、相手が上だったということです。終わった後に彼らが “すべて出し切った”と言えたこと、それがすべてかな、と思ってます」
そう語るのは、オリンピック・ブレイキン日本代表コーチのKATSU ONE(石川勝之)。オリンピック終了後、1ヶ月近くを経ってようやく日本へ帰国した。年間のほとんどを海外で飛び回る彼のライフスタイルは、まだまだ終わりがないようだ。
インタビューは、「BREAKIN’ SUMMIT」(下写真)という15歳以下のブレイキンバトルイベントの合間を練って。次世代のブレイカーが、自分たちの地元を背負ってクルーバトルするという主旨ベントだ。
「ブレイキンが正式種目に決まった時にあった期待と不安。ブレイキンが変わってしまうんじゃないかという不安は、終わってみれば現実にはならなかった。単純に存在が広まったと思うし、いろんな人に興味を持ってもらった。“ブレイキン”という呼び方も定着しましたね!」
©公益社団法人日本ダンススポーツ連盟
オリンピックへ向けての彼の想いと取り組みは以前の記事でお伝えした通り。
>>【インタビュー前編】ブレイキンを五輪へ!日本BBOY界のリーダー【KATSU ONE】
>>【インタビュー後編】ブレイキンを五輪へ!Shigekixら日本人メダルの可能性?!【KATSU ONE】
ここ数年を、日本ダンススポーツ連盟(JDSF)のブレイクダンス本部長や、日本代表コーチとして過ごし、彼自身さまざまなことを学んだという。
「自分は引っ張る立場、コーチングする立場だったけど、自分が一番学んだなって思います。大好きなブレイキンのカルチャーを世にもっと広めて認知してもらうには、公の場に出向いて、大勢の人に理解してもらわないといけない。その場で、どういう振る舞いや言葉使いをしていけば、自分が伝えたいことを認めてもらえるのかとか、自分のコストで賄えない人の集め方とか、選手への細やかな関わり方とか、言い出したらキリがないけど、めちゃめちゃ学びました!」
本気で取り組んだことが宝になる
金メダルのAmiとは昔からの姉弟関係。決勝戦での勝利に2人で抱き合う姿が感動的だった。
「本戦では勝てなかった選手もいたけど、彼らとも黙って抱き合いました。言葉はいらない。最後はそれしかないです。逆に予選など、まだ次がある時には改善点を具体的に伝えました。全体的な部分で褒められるところは認めて、やりきれてない部分は“どうしたの?”と聞き出したり。それも人によりますね。その時に切り替えられる選手もいれば、そうじゃない選手もいるから、そいつの性格にアジャストして、良い解決法を引き出してあげるようにしてました」
KATSU ONE自身、体育大学時代にスポーツからブレイキンに転向し、教職員の道を諦めて、ブレイキンの世界に飛び込んだ。持ち前のバイタリティとスキルとミュージカリティを武器に、世界から認められるB-BOYになったが、何度も挫折を味わっている。
「勝負ごとって、結果として勝ち抜けるのは1人じゃないですか。でも、そこから数年間生きていると、100%思うことがあるんです。そいつが、その勝負に向けて本気で取り組んでいるかそうじゃないかで、あとで後悔するかしないかが決まる! 優勝しないかもしれないけど、優勝することにすべてをかけたプロセスがそいつの人生の宝になる。他の仕事や困難にあたった時に“あの時も乗り切ったじゃん”って、必ず自分を支えてくれる!」
ダンスで世界の扉を開く
KATSU ONEが踊ることと同じぐらい大事にしていたのが、人との出会い。ダンスを通じたさまざまな出会いが、彼を今の場所に運んでくれた。
「ダンスって、仲良くなるのに言葉がいらない。だから、世界中の人と繋がりやすい。こんな便利なものない! なんで踊っているんですか?と聞かれれば、“人と繋がりたいから”って言ってます。言葉が通じなくてもダンスを見れば、俺はそいつの性格が大体わかりますもん(笑)」
人と繋がること、人同士を繋げること。それによって自分も相手も幸せになり、和と愛が大きくなり、ムーヴメントができあがり、やがて新しい世界の扉が開かれる。彼が、学生時代に溝の口駅で踊っていた時から、ずっと続けてきたことだ。
「忘れないですよ〜、俺らが学生時代に地元の川崎の商店街で初めて踊らせてもらえたこと。商店街の人や地元の人、たまたま見ていた市議会議員さんにも認めてもらえたこと。マイク握って“俺たち不良じゃないんです! 駅で踊っているのはお金がないからなんです。悪いことやってるわけじゃないから、変な目で見ないでください。応援してくださいっ!”って思わず叫びました(笑)」
ストリートから社会へ、日本から世界へ、カルチャーから“ダンス・スポーツ”へ——。
KATSU ONEは次々に新しい世界の扉を開き、ついに「金メダルを創ったB-BOY」となった。
「ダンスじゃなくても、自分が一生懸命やれることが見つかれば人生は豊かになる。それは間違いない。自分はダンスが、ブレイキンが大好き。今でも時間があれば、ダンスの練習をするし、ステージにも出る。俺の人生“食う、寝る、踊る”なんですよ!」
KATSU ONEプロフィール●1981年福井生まれ、川崎で育つ。2000年日本体育大学へ入学、ブレイキンに出会い、海外のバトルへ積極参加。2007年米国での大会「FREESTYLE SESSION」で優勝、2009年韓国で大会「R-16」で優勝、世界的チーム「MIGHTY ZULU KINGZ」のメンバーとなる。2010年にオーストラリアに移住、2013年に株式会社「IAM(アイアム)」を設立、2017年より公益社団法人「日本ダンススポーツ連盟((JDSF)」のブレイクダンス本部長に。
★KATSU ONEが携わる川崎のダンスコンテスト
Le FRONT杯
出場チーム募集中!!
KATSU ONE自身が学生時代に出場していた登竜門的ダンスコンテスト「Le FRONT(ルフロン)杯」が昨年復活し、今年で2回目の開催!
ぜひ部活以外でのダンス活動で、新しい出会い、新しい自分、新しい扉を開いていこう!
【Le FRONT杯 2024】詳細
(日程・場所)
10/27(日)@川崎ルフロン
神奈川県川崎市川崎区日進町1−11
(時間)
11:00~19:00予定
(部門)
・小中部門:30チーム
・高校生部門:20チーム
・大人部門:20チーム
・ソロ部門(年齢問わず、即興もあり):20名
※1チーム:2〜10人/パフォーマンス時間:2:30〜3:00
(ジャッジ)
HANA/Boo/SEIYA/KROW/フォーマーアクション/MiMz
(アンバサダー)
松本利夫 (EXILE)
(エントリー方法)
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★ブレイキンで新しい扉を開く!
KATSU ONEが全国の学校でブレイキン指導ツアー!
エントリー校募集中!!
KATSU ONEが全国の小学校・中学校・高校を対象にブレイキンのレッスン&講演を行ないます。
初心者〜経験者、部活動でも学校団体でも問いませんが、必ず学校や部活の許可を取った上で代表者がご応募ください。
日程や場所は、調整の上決定していきます。
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