音を感じる!音を探す!音にこだわる!〜ダンスの曲選びを編集長とDJ Hirokngが完全解説!

2020.05.29 MUSIC

>>前章「音を感じる」より

 

#2:音を探す

 


文= DJ Hiroking
ヒロキング●ダンス界で知らぬ者はいないファーストコールDJ。DANCE ALIVE HERO’S を始めバトルでのプレイは評価が高く、自身もブレイクダンサーである。音楽制作やイベント制作などその活動はダンス界のみなら多岐に渡る。
www.hiroking.com

ここからはDJ Hirokingがお送りします!音楽をよく知ることはダンス上達の一番の近道です! 音楽を知れば知るほど、自分のパフォーマンスをよりよく魅せることができるようになり、今以上に楽しく踊れるようになります! 上手なサーファーだったら海や波のことをよく知ってるし、上手なパイロットだったら空や雲のことをよく知ってるはずですよね。ダンスは音楽ありきですから、その土台になる音楽を理解すると、自然とダンスも上手になるわけです。

ダンスコンテストなどでの音楽のチョイスや音質について、審査員から指摘があがることも多い今日この頃。キミも音楽フリークになって、まわりに差をつけちゃおう! でも、アーティストの名前とかあんまり知らないし、CDとかレコードもあまり買ったことないし……そんな君に、音楽フリークになるための最短距離を順を追ってご紹介しますね!

「好きな曲」を深く知る

誰が歌っているのか、歌詞はどんな内容なのか、どれくらい人気のある曲なのか、いつリリースされた曲なのか、などなど、まずは好きな曲について調べまくりましょう。曲名がわからないときは、ネットで調べてもいいし、詳しそうな人に聞いてみたっていいんです。DJの僕だって、しょっちゅう人に教えてもらってますよ。「この曲って誰の曲だっけ?」とリズムに乗りながらノリノリで歌うと相手にも伝わりやすいです(ノリノリでいけ!)。MVを見たり歌詞を調べたりするのもおすすめです。洋楽の場合は「曲名(スペース)lyrics」などと検索すれば、おおかたの曲の歌詞は見つかります。英語の勉強にもなって一石二鳥!

   

 

「好きなアーティスト」をもっと知る

他にどんな曲をリリースしているのか、どこの国の人なのか、何歳なのか、誰に影響を受けたのか、仲の良いアーティストは誰なのか、受賞歴や評価はどうなのか、プロデューサーは誰なのか、などなど好きなアーティストであれば興味は尽きないはずです。

アルバムのCDを買ってみたり、ネットで他の曲を探して聴いてみるのもよいでしょう。勉強がてらに英語のアーティストサイトを覗いてみるのもおすすめです。大勢のアーティストについて知っている必要なんてないんです。まずは自分の好きなアーティストや踊りたい曲について、一点勝負で詳しくなってみましょう

   

 

「ジャンル」を細かく知る

好きな曲がどんなジャンルに分類されているのか調べてみましょう。好きな曲やアーティストがどういったジャンルに分類されているのかを知ると、近い雰囲気の音楽を見つけやすくなります。例えばヒップホップの中でも、イースト、ウエスト、サウス、90年代、2000年代、ヨーロッパ系やアジア系など地域によって特徴があり、その質感によってさらに細かく分類があったりします。それぞれについて正確なことを理解できなくても「自分の好きなのはこの辺に固まってるんだなー」ぐらいを知っておけばいいんです。そこから、そのジャンルの中ではどんなアーティストが有名なのか、定番曲やヒット曲は何か、なんて感じでどんどん広がっていくからね!

ファンクミュージックにはロックダンスやポップダンスなどのオールドスクールなダンスがよく合います。最近はEDMやダンスポップで踊るヒップホップダンサーも多くなってきましたが、基本的にはヒップホップダンスはヒップホップミュージックで踊るのが一番です!

一方、ジャズダンサーはジャズミュージックで踊ってるケースは最近は少なくなってきていて、ダンスポップやR&Bで踊るケースのほうが一般的になりつつありますね(僕はジャズミュージックで踊るジャズダンスが好きです)。

POINT▶︎▶︎曲の背景をよく知ることによって、曲への理解や愛情、音楽への探究心が生まれます

 

「プレイリスト10曲」を作る

CDでもApple MusicでもYouTubeでもなんでも大丈夫です。自分のイチ押し10曲でプレイリストを作ってみましょう。「あの曲とこの曲が続いたら最高!」「この曲も入れたいからあの曲はカットかな…」、そんな工夫や葛藤が、あなたの音楽に対するセンスを磨いてくれます。単純に好きな10曲でももちろんOK。通学用10曲、ダンス用10曲、バラード系10曲とかテーマ別にするのも面白いと思います。

作ったプレイリストについて他の人がどう思うのか、意見を聞いてみましょう。人それぞれの好みや受け取り方に触れることで、さらに音楽センスが磨かれていきます。「リズムトレーニング用10曲」とか、「振り付け用10曲」などメンバーで出し合ったりすると、楽しみながらみんなでセンスを高めていけます!

ダンスの仲間と一緒に音楽を聴いて話し合うことは、ダンスの練習と同じくらい、あなたのダンス力を高めてくれる大事なプロセスなんです。上手なダンサーだったら誰でもやってることですよ。

 

好きなジャンルの定番・名盤を聴いてみる

どのジャンルにも「これは知っとかないと」と言われる定番や名盤アルバムがあります。それらは、CDを買ったりレンタルしたり、Apple MusicやYouTubeでも聴けるものが多いです。高校生ダンサーの皆さんにとっては古臭く聴こえるものもあるかもしれませんが、あまりスキップせずにじっくり聴く時間を作ってみてください。それが音楽フリークへの近道です。先輩や詳しい大人に教えてもらうのもよいと思います。出来れば仲間と一緒に、大音量で聴く時間を作ってみてください!

POINT▶︎▶︎自分の好みを知ることで、音楽を分類することができ、音楽センスをアップできる

 

 

#3:音にこだわる

 

選曲の前に「歌詞」に注意!

さぁ、ついに選曲です。パフォーマンスの曲をアナタが選べるとしたら、どんな曲にしますか? 盛り上がる曲? クールでカッコいい曲? 有名じゃないけどカッコいい隠れた名曲? 選曲はダンスのパフォーマンスにおいてもっとも重要な要素です。カッコよく魅せれる最高の曲を選べるように、日頃から音楽センスを磨いておくのです。また本番で使う音楽については、歌詞や音質にも気を付けましょう!

暴力的な言葉や差別的な言葉が含まれていないか、含まれている場合は「クリーンヴァージョン※」を使いましょう。学生や未成年が参加するコンテストにおいては、過激な歌詞や放送禁止用語を含む音楽の使用は、減点対象や失格になってしまうケースもあります。場にふさわしい音楽をチョイスするのも、ダンスにおいて大切なことです。

※クリーンヴァージョンとは?
歌詞に過激な言葉や放送禁止用語を含む曲の場合、ラジオやテレビでも使えるように修正したクリーンヴァージョンという修正版音源がリリースされているケースが多いです。iTunes Music StoreやAmazon Musicでも豊富に販売されています。

 

ダンスを活かすも殺すも「音質」

次に大きな音で鳴らして、音質をチェックしておきましょう。練習用のスピーカーでは気にならなかったけど、ステージで大音量で鳴らしてみるとヒドい音質!なんてことが多いのです。これは違法にダウンロードした音源やYouTubeの音源や圧縮音源※に多いケースです。音質がヒドいのでは頑張って練習してきたダンスも台無しです。努力を水の泡にしないためにも、本番で使う音源の音質を慎重にチェックしましょう。

※圧縮音源とは?
音楽データはwavやmp3などのファイル形式でパソコンに保存されます。一般的に使われるmp3はデータ量は小さくなるが、それだけ音質が劣化してしまう圧縮音源です。なるべく圧縮されていないwavやaiffなどのファイル形式で保存しておくのがポイントです。音源データの調べ方は、拡張子(. wav、.ai ff、.mp3)で見るか、データ容量でわかります。目安として、3分の曲がwavだと30MBほど、mp3だと3MBほどになっています。データ容量節約のためにmp3を使いたい、という際はビットレートの高い(320kbps)の設定を使用しましょう。

 

曲の編集にチャレンジ!

パフォーマンスの際に、曲を短く切って編集したり、複数の曲をつないで使うために音楽編集(MIX)に挑戦してみましょう。有名なソフトだと、Macに搭載されているGarage Bandや、Windows 用のSony Acid などが有名ですが、無料でダウンロードできるフリーソフトなどもたくさんあります。iPhone上のiMovie(本来は動画編集ソフトです)の機能の一部を使って音楽編集をやる人も少なくないようです。

いざやってみると、「曲が変わるたびに音量がバラバラになってしまう…」とか「曲のつなぎ目でどうも盛り上がれない…」というのもよくある悩みです。ダンスをよく魅せるための最大の武器が音楽ですから、上手に編集して、大音量で気持ちよく聴ける状態を目指しましょう!

ただし、一度にMIXを仕上げる必要はありません。振り付けや踊り込みのプロセスと並行して少しずつ修正していくのがおススメです。何度も踊りながら聴くことで、「もっとここの間を短くしたほうが…」とか「このつなぎを工夫したいよね」とか様々なフィードバックが出てきます。そういった状況に合わせて少しずつ仕上げていくのがスマートです。だからこそ、人に頼むのではなく、自分たちで音源編集をする意味があるんですね。編集をすることでさらに音楽に親しむようになり、音を大事にするようになり、ダンスと一緒に楽しめることが1つ増えるわけです!

POINT▶︎▶︎歌詞や音質の知識を知り、編集に挑戦することで、音楽とダンスのより深い関わりを体験できる

 

DJ Hirokingのワンポイント編集アドバイス

 

●音量のレベルを合わせる
全体を通して、音量のバランスが取れているか、大きな音で鳴らしながら確認しましょう。編集ソフトの画面上でも確認できます。(図参照)3つのデータすべて同じ曲ですが、一番上が通常の良い状態の音源です。2つ目は書き出しの際に音量を上げすぎて割れてしまっている状態、波形が天井に突き刺さってるような状態になってますね。3つ目は音が小さすぎる状態です。自分のチームだけ他より音量が小さかった、なんてよくあるトラブルです。どの編集ソフトにも、必ず音量を調整する機能がありますので、目で見て、耳で聴いて、心地よく聴ける音量のバランスを目指しましょう。

●曲の「つなぎ」はていねいに
良い「つなぎ」はDJのMIXテープが一番参考になると思います。上手なダンスチームの音源を注意して聴いてみるのもよいでしょう。「つなぎ」に関しては大まかに以下のやり方があります。
①フェードアウト:曲の途中で、徐々に音量が小さくなっていくアレです。サビの最後まで終わっ
て、2番の始まりでフェードアウト、なんてよくありますよね。
②カットイン:勢いよくビシっと曲を替えてしまう手法です。前後の曲のカウントやタイミングをきれいに合わせてつなぐのがポイントです。
③フェードイン:前の曲とテンポを合わせながら徐々に後の曲をかぶせていく、まさにDJのようなMIXです。ただし、高度な技術が求められるうえ、曲同士の相性によるところが多いので、あまりおススメしません(でも、うまく使いこなせれば超カッコいい!)
④効果音を使う:爆発音やガラスが割れる音など、効果音を使うことで振り付けの余白を効果的に見せたり、場面転換をしたり、印象的なフィナーレを演出することができたりします。

(ダンスク2018年5月号より転載)



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