これぞ芸術的表現!ダンス史に残る最高ステージMemorable Moment「GIFT」
2015.06.17 REPORT
先に言うと、これまでのダンサーによる公演ではベスト!
ベストオブベスト。ベスト中のベストだった、Memorable Momentの単独公演[GIFT,Tokyo]2015のレポートを、DANSTREETにしてはかなり熱くお届けしよう!
最近では、ダンサーによる舞台が精力的だ。どれも、誰もが、これまでのストリートダンスの可能性を広げようと、もがいてあがいてステージを作っている。
ダンサーによる、ダンサーだけの、舞台公演。
しかし、えてして、それは「ダンサーのための」舞台にも陥りやすい。
ダンサーだけで作ろうとすれば、それ以外の仕事はプロレベルからは当然落ちる。
制作、演出、構成、キャスティング、脚本、ストーリー、テーマ、音楽、照明、衣装、メイク、演技、セリフ。
さらには、広告、宣伝、ビジュアル作り、仕掛け、取材対応、チケッティング等等。
それらは、ストリートダンスで世に出ようと思えば、皆自然にやっていることなのだが、やはりプロの仕事とは一枚も二枚も違う。
そして、そこが「ダンサー公演」が一般に届かない一番の要因なのだ。
特にステージの演出や構成、ココが甘いと、いくら良いダンスでも一般客には響かない。そして予算の問題も受け手を広げることでしか解決しない。
ダンサー公演の域を超えた、「ダンスステージ作品」として世間に認められないのだ。
というところでの今回のMemorable Moment。
まず今回のタイトルになっている「GIFT=贈り物」。
天空から舞落ちた白い箱が、「GIFT」。
人間にとって一番最初のGIFT、それは「生命」なのだろう。
それは幼少時代や学生時代を経て、「愛」という贈り物に出会う。
その「GIFT」が奪われるモノ、それは戦争に間違いない。
戦争により奪われたモノを哀悼する舞=Requiem。
そんな人生を邂逅する=Memory。
そしてGIFTは再び、その手に戻る。
かけがいのないGIFT、それを奪うモノ、悲しみ、無情さ、戦争、平和。
それらのストーリーと情感が、徹底的に鍛え上げられたダンスの上にしっかりと表現されている。
なんせ、Memorable Momentはターンした時のスカートの裾の流線までを全員で揃えるチーム。
セリフや説明がなくても、何を伝えたいのかがダンスを通じて、しっかりと伝わってくるのだ。
その伝わり方は、受け手によってそれぞれの微妙な違いは有るだろう。
子供にはもしかして「印象」としてしか入ってこないかもしれない。
でも、それでいいのだ。
捉え方が人それぞれ、それこそがART。
逆に、これまでのダンサー作品は、ストーリーつけすぎ、説明しようとしすぎ、詰め込み過ぎ、なのかもしれない。
Memorable Momentが「GIFT」でやろうとしたのは、いたってシンプルなメッセージだ。
世界中の人々が永遠に願う、生命への感謝と平和への祈り。
だからこそ、通じる。
もしかしたら、世界にも行けるかもしれない。
Simple is Best.
Simple is Beautiful.
2分30秒のパフォーマンスでも見事に世界観に引き込んでしまうMemorable Momentが、1時間の濃密な公演でやろうとしたのは、エゴも欲も削ぎ落した、凛とした一筋の「願い」だったように思う。
photo by 金 サジ(umiak)