2017年DCC優勝は「登美丘高校」バブリーダンス!出場全36チームを写真入りレポート&編集長の総評!
2017.08.07 REPORT
〜Cブロック〜
C-1)清明学院高等学校(大阪)
動兵(オモチャ)
終始笑顔でロックダンスからニュージャック系の流れで盛り上げる。ダンス力はまだ物足りないが、本人たちが心からダンスを楽しんでいる雰囲気が伝わる。
C-2)宝仙学園高等学校女子部(東京)
贖罪(ショクザイ)
配役や構成、ストーリー、世界観などかなり練られている。作品の伝える力が素晴らしい。
C-3)大阪府立金岡高等学校
呪華(ヒガンバナ)
ダークな前半からハイテンションな後半へ、一瞬の衣装替えと共に表情をガラリと変える。ややスキルのバラつきが目立った。
C-4)豊島岡女子学園高等学校(東京)
魂叫(コキュウ)
民族的な衣装とダンスから、一瞬で白いドレスに変わる演出にもしっかり必然性があって引き込まれる。ダンスが古来から祝祭的な意味合いを持っていることをにじませるような作品。
C-5)京都明徳高等学校
心響(ビート)
キレとパワーを操る自在の動きとユニゾン力の高さが、衣装の光沢感とマッチング。曲のリミックスも素晴らしく、ダンスと音楽の融合を一番意識していたチームと思える。高水準ですべてのバランスが良い。
C-6)群馬県立安中総合学園高等学校
不諦(アキラメナイ)
同校のひとつの作風である邦楽1曲使いでのストレートなメッセージ作品。まるでの手話のような表現力のある振り付けと、メンバーの気持ちの乗せ方に目を見張る。
【決勝進出】
C-7)立川女子高等学校
超人(スーパーマリオ)
ダンス界では王道のマリオ作品だが、コンセプト負けしていないダンス力とチーム力が素晴らしい。クッパのアクセントも効いている。リオ五輪の閉会式でもわかる通り、日本が世界に誇るのはやっぱりマリオですね。
C-8)山村国際高等学校(埼玉)
魔球(サウスポー)
本家ピンクレディーよりはるかにダンスも衣装もクオリティ高いエンタメパロディ作品。あえて注文をつけると、応援歌に曲が変化したところで終わってしまっても良かった気がする。
【決勝進出】
C-9)千葉敬愛高等学校
別嬪(ベッピン)
千葉勢というか、もはや関東勢で抜きん出た存在である同校。すべてレベルが高いのだが、特に「抜き」の感覚に秀でていて、押して引いた部分で観客をステージに引き込むような、高い吸引力があるのだ。
【決勝進出】
〜Dブロック〜
D-1)川口市立川口高等学校(埼玉)
舞泡(ウォッシャー)
コンセプトが衣装に明確に現われたコミカル作品。ただし、コンセプトとダンス自体がやや剥離している様に感じるので、振り付けへのテーマの落とし込みの部分をもっと突き詰めて、全編にそれを散らしていきたい。
D-2)昭和学院高等学校(千葉)
華流(ドラゴン)
民族的なビートに乗って、徐々にダンスを拡大させる構成。立ち位置の変化にもっと工夫があっても良かった。
D-3)千葉県立松戸六実高等学校
颯爽(サッソウ)
全員が地毛を前髪パッツンしたという気合いの入った新鋭校。高揚感のある曲を、フォーメーションやカノンで元気に表現した。
D-4)品川女子学院(東京)
激愛(ゲキアイ)
毎回コンセプトものが楽しい同校は、ヤンキーとスケバン激愛で構成。見る度にダンスの精度も上がっていて、集団ペアダンスとしても楽しめる。
D-5)奈良市立一条高等学校
歓働(ハッピーワークス)
ストリート強豪校のガテン系作品。ブルーワーカーとダンスの組み合わせは元来相性が良いので、この目の付けどころがナイス。衣装を黄色いタオルで締めているのもうまい。
D-6)広尾学園高等学校(東京)
葛藤(タラレバ)
情熱的なジャズ表現に定評のある同校。一人一人の表現意識が高く、2分半とは思えない作品の密度と芸術性を持っている。
D-7)大阪府立久米田高等学校
瞬華(シュンカ)
全国レベルの強豪校。持ち前の立体的な群の展開やスピード感は変わらずに、以前よりも余裕が出て来た分、表情の良さやグルーヴを作る間(マ)につながっている。出ハケを使わずに、大所帯を効果的に使う構成も素晴らしい。
【決勝進出】
D-8)大阪府立登美丘高等学校
扇舞(ジュリアナ)
エアロビ〜大阪のおばちゃんと来て、今年は「バブルな女たち」。もはや高校ダンスで孤高の道を突き進む絶対王者。オンリーワンであり、異端でもあり、アンチテーゼでもあり、日本高校ダンス界が生んだ究極のエンタメ集団。
【決勝進出】
D-9)同志社香里高等学校(大阪府)
荊棘(ケイキョク)
逆に、ダンスがアートであることを痛感させられる作品。今年は、ファンキーな音取りとワックの派手さが際立っていた。
【決勝進出】
<<結果>>
優勝:大阪府立登美丘高等学校
準優勝:三重高等学校
3位:同志社香里高等学校
3位:山村国際高等学校
漢字二文字の表現性を評価するというポイントにおいて、他のダンス部大会に比べると、コンセプト性の高いチームが有利になってくる本大会。ダンス力に寄り過ぎても通用しないし、ダンス力を伴わないコンセプト作品も認められない。そして作品からにじみ出る「学生らしさ」も重要である。そういう意味では、一般にも伝わりやすいチームが評価され、予選ブロックを順当に通過したように思う。
決勝は、審査員をしながらレポートさせていただいた。決勝に進出するチームにでもなれば、それぞれの表現とテーマを具現化するには充分なスキルと練習量を備えているため、予選では技術的な粗はほとんど見えてこない。しかし、決勝戦としては12チームを立て続けに見比べれば、「差」や「違い」はわずかに浮かび上がってくる。
あくまで個人的にだが、どの部分が決勝チームの「差」となったのかを以下にあげてみたい。
*引き算の感覚……全体的に押せ押せのチームが多い。スポーツでいったらオフェンスのことしか考えていない状態。観客も審査員も一日に何十チームも見る訳で、得意の振り付けや展開を隙間無く詰め込んだ作品ばかりが続くと、逆にそれが平均的な印象になっていく。そこで有効なのが、思い切って「引く」こと。振り付けを間引く、体を止める、リズム取りを後ろに引っ張る、2倍で取ってみる。あるいは実際に後ろに歩を下げる、そういくところをそういかない、観客の予想を心地よく裏切る、観客をステージ上に誘い込む感覚。すると、見ている側は「アレ?」「やるな〜」という感覚が、そのチームへの特別な印象や興味につながるのだ。
*ライブ感…当然、何十回も練習して来ている振り付けなわけだが、作品としては「今そこで生まれました!」というライブ感をいかに出せるかが重要だ。それにはまず演者が心から演技を楽しんでいる感覚が必要。観客とのコミュニケーションの意識が肝要。結果「何度でも見たくなる」という芸の域にまで昇華され、コンテストを越えたレベルでの多くの拍手と笑顔を生むのだ。この日唯一それができているのが登美丘高校だった。
*下半身と軸…これは、日本のダンス番組の生みの親でもある審査員のテリー伊藤さんの指摘でもあるのだが「日本人は上半身ばっかりで踊る」のだ。決勝に進出したチームは、自分たちに必要なユニゾンの精度やキレは持ち合わせていたが、根本的な下半身や体幹の安定感には差が出ていた。ダンスのグルーヴは下半身で支えるもの、ダンスは手先ではなく体の中心で踊らせるもの。そのためには、地道な基礎トレーニングをいかに突き詰めてやれるか、しかないのだ。ダンスを踊れる体作りができていれば、奇抜な振り付けやコンセプトや衣装がなくても、ベーシックなステップだけで充分に見せることができる。準優勝の三重高校がその好例と言えるだろう。
レポート:石原久佳(ダンスク!)