ダンス【呼吸】本番直前の緊張感を吹き飛ばす方法〜その1
2021.12.03 COLUMN
文:石原ヒサヨシ(ダンスク!)
本番直前って緊張しますよね?
どれだけ練習や準備をしても、本番直前はいろいろ考えてしまって、不安でいっぱいになるもの。
そこで今回は「緊張感」について考えていきましょう。
筆者は、長年ダンスのメディアをやりながら、普段は武道や気功、ヨガに親しんでいます。それらのエッセンスを取り入れて、ダンサーに向けた本番前の緊張感を拭き飛ばす方法をお伝えしたいと思います。
ポイントは「呼吸」「丹田」「全集中」。
全3回でお送りしましょう。
深呼吸をする
1)深い呼吸をする
2)呼吸数に集中する
3)ヨガの呼吸法を取り入れる
緊張してくれば当然、スーハースーハーと深呼吸をしたくなるでしょう。でも、その「やり方」まで深く考えている人はいないはず。
まずリラックスするための呼吸は当然「深く」するべきです。
現代人は、呼吸が浅いと言われています。これは呼吸筋と言われる筋肉が弱っているからなのです。だから、普段から呼吸が浅いと、呼吸筋が鍛えられていないので、いきなり深呼吸をしても逆に苦しくなってしまうこともあります。すぐ息が上がってしまうのも呼吸筋が弱い証拠です。
そして緊張状態になると、落ち着かなくて呼吸が浅くなる>脳に送られる酸素が薄くなる>ストレスが溜まる>落ち着かなくてさらに呼吸が浅くなる、という悪循環に陥ってしまうわけです。
呼吸は深く長く、そして普段の生活から吸うのも吐くのも「鼻」で行なうことがポイントです。鼻呼吸は、ホコリやウィルスに対して鼻毛や粘液がフィルターとなり、保温・保湿などの効果がある上に精神的な安定をもたらすと言われています。
そもそも、口呼吸は人間だけがするもので、息が上がった時に緊急用にあるのだそうです。普段から口で呼吸をするクセのある人は要注意です。雑菌やウイルスが体内に侵入する大きな原因にもなります(特に寝ている時の口アングリは注意!)
では鼻で大きな深呼吸をしましょう。お腹〜胸〜首が順に膨らんで新鮮な空気が入ってくるのを感じると思います。
本番直前、舞台袖などでは目を瞑って呼吸の数を数えてみましょうか。
1つ、2つ、3つ……と呼吸の数を数えてみる。それだけに集中する。呼吸を「観察」するように繰り返します(これを坐禅では数息観と呼びます)。
あるいは、呼吸の長さをカウントするもの良いです。その際、吸う=2カウント:止める=1:吐く=4の割合で行うのがコツです。例えばこんな感じでカウントします。
吸う:1・2・3・4
止める:1・2
吐く:1・2・3・4・5・6・7・8
のような割合。この割合で、自分に合わせて短く/長くを調整しましょう。吸うよりも吐く方を長くすることでリラックス(瞑想)効果が高くなります。
そうやって呼吸だけに集中していくと、だんだん緊張感が遠のいて、リラックスしてくるのがわかるでしょう。
これは、緊張をうながす交感神経と、リラックスさせる副交感神経のバランス=自律神経が整ってくるからです。吸う息は交感神経、吐く息は副交感神経が受け持っています。
さらにできる人は、ヨガの呼吸法を取り入れていきましょう。ヨガにはたくさんの呼吸法がありますが、ここでは自律神経のバランスを整えるナディ・ショーダナ(片鼻呼吸)をご紹介します。
1)まずは、右手親指で右の鼻口を押さえ、左の鼻だけで息を吸います。
2)次に、右手薬指で左の鼻口を押さえ、右の鼻だけで息を吐きます。
3)そのままの形で、右の鼻だけで息を吸います。
4)再び右手親指で右の鼻口を押さえ、左の鼻だけで息を吐きます。
1)〜4)を繰り返します。
その時に、どちらかの鼻が通りやすく/通りにくいことに気づくでしょう。
右の鼻は交感神経(活動的・緊張)を司り、左の鼻は副交感神経(リラックス・沈滞)を司っていると言われていますので、このナーディ・ショーダナを繰り返して、鼻の詰まりをなくし、自律神経のバランスを整えていくことができるのです。
この呼吸法で「活動的であり、リラックスしている」というベストな精神状態を作ることができるのですね!
数分やるだけでも効果抜群なので、ぜひ本番前に取り入れてみてください。
次回は、意識を下に=丹田におろすリラックス方法をお話しします。