日本で一番学校に訪問したダンサーISOPPが説く「グルーヴと恋愛のカンケイ」

2020.10.12 COLUMN

『ダンスク!』2020年10月号連載記事「新★完全燃焼」より転載

 

#1:グルーヴと恋愛のカンケイ

 


ISOPP:ブレイクダンスで世界の頂点を極め、ダンスのみならず、DJ、グラフィティ、ヒューマンビート、タレント、さらに執筆、講演、物真似、お笑い、YouTube動画制作まで縦横無尽に活動を広げるダンス界きってのエンターテイナー。「日本で一番学校を訪問したダンサー」としても有名!▶︎▶︎ISOPPチャンネル

 

質問:私のダンスは、よく「グルーヴがない、キレがない」と言われます……

人生経験こそがグルーヴを生む

身体能力や技など、いわゆるスキル的なことは鍛錬すれば誰でも伸びていきます。しかし、食事を変えたり、睡眠の勉強をしたり、スポーツ選手と一緒にトレーニングをして身体を鍛え抜く所までやっているダンサーはほとんどいません。逆に言えば、そこまで本気で追い込むことができれば、キレや技量は理屈的に変わっていきます。身体能力の伸ばし方には具体的な方法がたくさんあるので、そこは各自が研究してほしいところです。
しかし、ダンスでもっと難しいのは、理屈や身体能力ではどうにもならない「グルーヴ」の伸ばし方です。基礎的な練習を淡々と続けたとしても、決められた規則性のあるロボットのようなダンスになってしまいがちで、「その人」を感じることはなかなかできないでしょう。
グルーヴには基礎練習に加えて、自身の経験や性格、感性がモロに出るものです。筋トレを増やしたから筋肉が成長するという理屈的なことではなく、グルーヴの成長は何がキッカケになって発動するかわからないのです。
ある人はHIPHOPの歴史を勉強することで、ある人は自分で曲を作ることで、ある人は恋人との別れ、ある人は怒り、悲しみ、屈辱、喜び、楽しさ、幸せ……そういった人生におけるあらゆる経験が、自分の持っている技量と合体して滲み出てくるのが「グルーヴ」なのではないでしょうか?
振り付けなどルーティーンを合わせるよりも、雰囲気やグルーヴを合わせることのほうがよほど難しい。イメージや気持ちまでを合わせる必要があるからです。大会へ挑む挑戦者たちが、同じ練習場所で、同じ景色を見ながら、同じ経験の中で1つの目標に向かって走っていく過程の中で、だんだんグルーヴの色が合ってくるものです。個人においても同じことが言えます。軽くダンスをかじったくらいでは、すぐにグルーヴは出ません。1つの信念に向かって踊り続けていく過程の中でグルーヴが生まれてくるものです。
うまく踊ろうとすることより「どんなつもりで踊るのか?」が大切になってきます。踊っているときに何を感じるかが重要なのです。

本当にダンスがうまくなりたい人の「違い」

ダンス業界には「ダンスがうまくなりたい!」と言う人がたくさんいますが、本当にそう思っている人は少ないです。それは行動を見ればすぐにわかります。ダンスの練習はしているが、それ以外のところではフツーに戻ってしまいダンスに触れていないのです。
例えばあなたが大恋愛をして、胸が痛くて相手のことが頭から離れなくなったとしましょう。朝から晩まで四六時中その人のことばかり考えてしまい、寝ても夢にまで出てくる。そんな経験がないでしょうか? あなたにとってダンスがそんな存在なら、あなたのダンスは確実にうまくなる! ダンスの練習を1日4時間しているならば、残りの20時間で差がついてくる。言い換えれば、20時間がリハーサルで4時間が実技練習なのです。
「私はまだそんな経験なんてないです」と言う人は、その世界の経験値がないのでこれまたグルーヴに差が出てきてしまう。大恋愛の経験がある人でも、その経験をダンスにインストールすることができなければ、ダンスはダンス、恋愛は恋愛として別々になってしまう。だから踊っているときに何を感じるかが大切なのだ。
喜びも悲しみも日常で起こった様々な出来事を腹にかかえて、全部ステージに持っていくことで、気迫やグルーヴといった雰囲気を感じることができます。そして、そんなことを繰り返していると、やがてそれが普通になり、意識をしなくてもグルーヴが自然に溶け込んでその人のものとなる。それが「オーラ」です。オーラを身にまとったヤツは何をしても絵になる。いるだけで存在感があり、影響力も大きい。そんな人が踊ろうものなら魅力が爆発拡散して、観客は感動の鳥肌が立つでしょう。そんな人は、あらゆる経験値を持ち合わせているため、いろんな人の気持ちに共感できる。だからいろんな人の心に届く。そしてどんどんファンが増える。
ダンスの道を志す者ならば、誰しも「カッコよくなりたい!」と思うでしょう。何をカッコいいと思うかはみんな違うでしょうが、心・技・体、すべて備わった魅力あるダンサーは誰もが放っておかないことだけは確かです。
とにかく、まずはみんなが思いつく練習方法は片っ端からやればいい。しかしあなたがスランプにぶつかり、どうしても抜け出せない時は、技術以外のパワーアップが必要な時なのかもしれないです。ベーシックに基礎練習を続けながら、あなたのダンススタイルにプラスαの経験値や想いを乗せてみてはどうでしょうか?
きっと一皮剥けた新しい自分が誕生すると思います。

 

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