優勝は都立狛江高校!2017年「日本ダンス大会」出場全チームレポ&総評

2017.06.12 REPORT

 

21)大阪府立久米田高等学校
立体的な見せ方と芸術性をスピード感と迫力で見せる強豪校。このスピード展開を踊りきる体力と集中力の高さは出場校の中でも随一だが、さらなるビッグインパクトを残すためには、ここから大きな引き算か足し算が必要なのかもしれない。

【準優勝】
【羽賀多賀子賞】

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22)東京都立清瀬高等学校
東京には珍しいワックを主体にした女性チーム。ノリ方や表情は良いので、ひとつひとつを急がずに丁寧に踊りきる意識を持ちたい。

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23)埼玉県立川越南高等学校
続いて、同時代のソウル/ディスコネタ。アフロに柄シャツにパンタロン、ステージに浮遊するマフラーの散りカス(笑)。自らがダンスを楽しんで、観客を楽しませる印象の良いチームだ。

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24)大阪市立鶴見商業高等学校
関西らしいフィジカルパワーの上に、重心の低いヒップホップをかます精鋭チーム。迫力で押してくるが、時折見せる笑顔も高校生らしくて素敵だった。

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25)桜丘中学・高等学校(東京)
初心者が多いチームだろうが、和気あいあいとした雰囲気で、それぞれの得意ジャンルを構成に活かしながら、エンディングまで元気に駆け抜けた。

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26)沖縄県立北中城高等学校
ダンス基礎力の高い沖縄チーム。土地柄のせいか切れ上がった顔つきのメンバーが多く、ワッキングのカッコ良さと相性が良い。エンディングはもっとスタミナをつけて疾走感を出したい。

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27)千葉敬愛高等学校
ビート感の弱いソウル曲に、ダンスでリズムとグルーヴを足して行くような高度なアプローチ。さすがは関東随一の強豪校。後半はゆるめのR&Bに、速く遅く自在の符割で緩急を付け、素晴らしいリズムコントロール力を見せた。
【寺川綾賞 ※特別審査員賞】

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28)天理高等学校(奈良)
BPM遅めのビートに乗せて、ふんわりとアップダウンのグルーヴを乗せて行く独特のアプローチ。ある意味、力の抜け方が他校との違いとなっていた。

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29)日出高等学校(東京)
ダンス部大会常連校のパフォーマンス。最後の和のアプローチに落ち着くまで、衣装・ダンス・曲のバランスが何を目指しているかの今ひとつわかりにくい。

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30)椙山女学園高等学校(愛知)
女性チームの楽しさ・華やかさが全面に押し出されていて、スキル不足を補っている。自然に出ている笑顔が良いのだが、曲がシリアス調だったので、そのバランスや表現の方向性を一考したほうが良いだろう。

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31)神奈川県立光陵高等学校
これは面白い! 応援団スタイルに、80年代テイストを加えて、凝ったカノン展開や表情やストーリーで見せる。独創性とそこに賭ける強い想いも伝わってくる。

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32)広尾学園高等学校
芸術的で情感に訴えかける作風で急成長中の同校。基礎のしっかりしたジャズダンスをベースに、ニュースタイル的なトレンド感も交えて、パフォーマンスをさらに進化させていた。

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33)名古屋市立西陵高等学校
名古屋らしい重心の低いヒップホップ。よく鍛えられたフィジカルの強さにチーム力の高さ。中盤からのハッピーな転換に合わせて衣装も変えたかった。

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34)大阪府立豊中高等学校
宮崎アニメの設定を借りた叙情的なパフォーマンス。大会作品となると設定負けしないプラスαが欲しいが、後半に元気な声出しとステップで「らしさ」を出してくれた。

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35)三重高等学校(三重県)
この日珍しいガチ揃えスタイルのロックチーム。ダンスは素晴らしいのだが、中盤の曲以降が、音質が落ちていたのがもったいないところ。スピーカーやヘッドフォンではわかりにくいが、大会場ではミックス時の音質の差が如実に出てくるので気つけたい。

【MIZUNO特別賞】

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36)昭和学院高等学校(千葉)
ダンス力の高さの上に、高揚感のある構成が素晴らしい。大所帯なのだが、一人として集団に埋もれていない個の強さも感じさせる。今後の成長に期待大!

【長濱佳孝賞】

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37)群馬県立安中総合学園高等学校
全国優勝経験のある同校得意の邦楽曲使い。あえてシンプルな衣装で強いメッセージ性を演出し、全員での叫びもアクセントに。引き算の美学。

【3位】

【TAKAHIRO賞 ※審査員長賞】

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38)山村学園高等学校(埼玉)
架空のスーパーヒーローものという設定が面白い。悪役との対決構造も見せ所で、同校得意のジャンプやシフトもバッチリ。同校の特色や伝統がダンスにしっかり受け継がれている。

【競技委員長賞】

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39)大阪市立汎愛高等学校
ヒーローのあとは完全に悪役トカゲ集団のようなコンセプト。世界観と迫力とスピード感で見せた。

【MASAMI賞】

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40)茂原北高等学校(千葉)
CA姿にカラフルなスーツケースを小道具。アプローチは独創性があって良いので、もっとコンセプトやスーツケースの使い方を斬新にトリッキーにダンスの中で活かしたい。

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41)北九州市立高等学校
毎回、斬新な作品作りをする同校は、まるでショーケースのような余裕を感じさせる、こなれた展開。強豪校ならではのアンチテーゼ的なアプローチなのだろうか。

【明日は、きっと、できる賞】

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42)鎮西高等学校(熊本)
恋する乙女たちを演出する邦楽1曲使い。衣装もカラフルでキャッチーなのだが、ダンスをより良く見せる衣装作りという意味ではディティールを一考すべきだと感じた。

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<総評>
出場校のダンスや作品のレベルが上がっていくのは、もはや当たり前というか驚くことではないだろう。
何せ、ダンス部はいまだ上り調子の部活。
ダンス部がない学校に同好会ができ、やがて部に昇格し、創作ダンスやチアー系がストリート系に変化し、大会出場のために練習でレベルをアップし、大会ではしのぎを削り合う、という状況が続いているわけだ。
本大会でも、初出場の顔ぶれや出場常連校の作品の推移や伝統などに注目してみると、非常に興味深いことに気づく。
例えば、前回の上位入賞校が今年はパワーダウンしていたり、プレッシャーからか狙いすぎていたり、かつての強豪校が久々に会心作を繰り出したり、あるいは目立たなかった学校が急に生まれ変わったように力強い作品を作ったり。
部活というのは、各校の練習方法や作風(戦い方)に伝統があって、それを次の代がブラッシュアップさせながら受け継いでいくものなのだが、そうは毎年簡単にいかないところが観客としては面白い部分なのだ。
おそらく、高校野球ファンもそんな感じで楽しんでいるのだろう。
そういう視点や地元愛などで、一般の方がダンス部の毎年のパフォーマンスを応援してくれるような「高校ダンス部ファン」となっていけば、このシーンは大きく変わっていくに違いない。
ダンス部大会もかなり数が増え、それぞれのやり方や審査基準などは統一されない状況は続いているが、野球部やサッカー部と同じように「ファンを作る」という意識だけは関係者の総意・共通課題としてあってほしいところだ。
そして「注目が集まる」という状況が、ダンス部のそもそもの教育的意義とうまくシンクロしていくことが、個人的には理想だと考えている。
やや話が外れたが、全体のレベルが上がっていく一方で、なかなか改善されないポイントもあげておこう。これらも「ダンス部の一般化」という意味では非常に重要なポイントなのだ。

 

*曲・ダンス・衣装の合致
生徒主体で作品を作るとよく起こり得ることなのだが、曲がシリアスなのに表情が満面の笑みだったり、衣装がポップすぎたり。あるいは衣装とダンスの動きの相性が悪かったり、歌詞の意味をきちんと捉えていなかったり。
曲・ダンス・衣装の3つのイメージの合致は、最初からしっかりと見据えて、制作途中で何度もチェックを繰り返すようにしたいところだ。

*パロディのリスク
ここ数年で目立つ強豪校がパロディを得意としていることもあり、大会初心者の学校が取り組みやすいアプローチとしてパロディや扮装ものをとる場合が多い。
観客との共通意識や設定を作るために手っ取り早いやり方でもあるのだが、ほとんどの場合、これらはいわゆる「出オチ」なんだということを覚えておいてほしい。
舞台に出た瞬間に「あ〜」とわかる設定は、コンテストの場合は逆に自らのハードルを上げてしまっている。
ダンススキルや構成力で、そのハードルを越えていかないと「設定負け」してしまうリスクがあるのだ。

*曲の音質について
これはダンス部がずっと抱えている問題。
おそらく「音質」という意識が、最初からスマホやハードディスクプレイヤーなどで音楽に親しむ現代の高校生には薄いのだと思われる。
一般人が入手できるその曲の最高音質はCDに収録されている状態だと思ってほしい。
これをPCやスマホに取り込んだ場合、設定によってはデータ容量が圧縮されてしまい、音質が低下する。ちなみにYouTubeから音源をとった場合は、CDの1/3以下のデータ容量となる。
これによって、低音感や音域が損なわれてしまって、本大会のような高品位の大音量PAで会場に流されると、より顕著に伝わってしまうのだ。
せっかく重心の低いヒップホップをやっているのに、曲の低音感が足りなかったり、曲をつないだ(ミックスした)瞬間に、音質や音量のレベルが下がって、作品の勢いがなくなってしまったり。
曲のミックスを部内で行なっている学校は多いと思うので、今一度、音質やミックスやレベル調整について、君たちのダンスを最大限活かすために、しっかり調べて対策してほしい。

音質の良し悪しを知るためには、まず「良い音質」がわかる耳を持つこと。ダンスの良し悪しを知るためには、「良いダンス」を見る目を持つこと。両方、同じことなんです。

 

レポート:石原久佳(ダンスク!)

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