【ダンス部取材】京都文教中学校・高等学校「たかがダンス」だからこそ学べるリスペクトとチャレンジ精神
2020.02.18 HIGH SCHOOL
京都文教中学校・高等学校
「たかがダンス」だからこそ学べるリスペクトとチャレンジ精神
ダンス部の日々(ダンス部潜入取材)※『ダンスク!』2020年2月号より転載
▲昨年の日本ダンス大会で優勝を決めた大ジャンプ! 激しいROCKに乗せたLOCKを目まぐるしく構成。スピード感、ダイナミックさ、声出し。ステージからはみ出さんばかりのドラマティックなパワーを感じさせた。
ダンス経験のある顧問=ダンサー顧問は年々増えている。中には、昔のダンス仲間がお互いダンス部顧問となっ て再会することもあるだろう。三重高校のハリキリ顧問・神田橋先生と京都文教高校の矢下先生は元チームメイト。今では、ダンス部大会でお互いを意識する良きライバル 関係なのだ。
「高校生の時に神田橋先生と出た大会で彼が組技から転落して気絶した、なんて思い出もありますね(笑)。高校大学と一生懸命ダンスをやってましたが、“たかがダンス” です。将来、ダンス部の顧問として再会するとは思いませんでしたよ」
▲京都の中心地に校舎があるため敷地の関係でメインの練習場所は広くはない。中1~高3までがひしめき合って基礎練習。
矢下先生が顧問に就任したのは8年前、あまりパッとしない当時のダンス部を、ロックダンスを主体とした“ 認められる”部活へと改善していった。ロックを選んだのはさわやかなイメージで学生が楽しむ雰囲気に合っているから、という理由だが、そのダンススタイルもまた三重高校と被ってしまった。
「部を改善していった当時は、きちんとやりたい生徒とそうでない生徒がいて、二分化されるような状態になりましたけどね。ウチは大会で優勝することよりも“他がやらないことをしよう!”と挑戦することがモットーで、それが部のモチベーションにつながっていると思います」
スタイルはロックであるが、選曲にJ-POP やアニメソングを選んだり、テーマやストーリーを持たせる作風が京都文教らしさ。取材当日は振り付け制作に精を出していたが、中高生が入り混じる部活の雰囲気は和気藹々としたもの。タイプ的には真面目な生徒が多いようで、ダンス部の活動を通じて学校生活も積極的になっているという。
▲寒い中、外でも笑顔で練習に励む。この日はOBがコーチとして訪れていた。振り付けは生徒とOBコーチで行なう。
「大事なのは、お互いをリスペクトする気持ちです。相手の立場になって相手を尊重して行動すること。仲間と創作するときもそうですし、コンテストに挑むときにも審査員の方の気持ちに立つことを意識しています」
そんなリスペクトの気持ちは観客にも向けられている。“他が やらないことで楽しませる”のは見に来てくれた観客を尊重しているからこそ。大会によって異なる審査基準や審査員に対してもそう。審査員や審査基準を批判するよりも、出る側がそこに合わせていく方が意義があると考えるのだ。
「ダンスの大会って就職の面接と同じようなものだと思うんです。自分に合う会社もあれば、そうでない会社もある。入社したいなら面接を研究して挑めばいいし、結果が出ないときも大会のせいではなく,自分たちのこだわりが足りなかった、というだけなんです」
▲武器はスピーディなロックダンス。男子部員の元気さも京都文教の目印だ。
▲別室ではジャズのフリ写しが行なわれていた。J-POPを使った、京都文教らしい楽しい作品。
ダンスを楽しみ、ダンスで導かれ、ダンスの魅力を日々学生に伝える先生だが、それでも「たかがダンス」という 想いは忘れないでいるという。
「ダンスって伝統芸能でもないから、もっと軽いもので良いと思うんです。お菓子で言えば和菓子ではなく、ポテトチップみたいな手軽さがあるというか、“めんたい味”を作っても許される感じ(笑)。だからこそ、ダンスに乗せていろんなものを表現できるし、ウチのダンスが常に他と違うアプローチを楽しんでいるのも“たかがダンス”の姿勢があるからなんです」
歴史を重ねて、今や教育機関にも入って来たストリー トダンスだが、その出自や本来の魅力、自由さを知るからこその“たかがダンス”という想い。しかしその裏には愛するが故の“されどダンス”という想いも同居しているのだろう。
レポート:石原久佳(ダンスク)
▲部長の長尾さん(左)と副部長の堀脇さん。中学生からの大人数をまとめるのは大変だと言うが、持ち前の笑顔で部を引っ張っている。
▲練習中でも笑顔が絶えない部員たち。カメラを向けるとノリよくポーズ!
京都文教中学校・高等学校ダンス部
チーム名:団-UP(ダンアップ)
●創立:2004年(2009年より部に昇格)
●部員数:73 名(高1年22 名/高2年14名/高3年20名/中1年4名/中2年6名/中3年7名)
●活動時間:平日2時間(週4回)、土2時間
●入部時の初心者比率:8割ほど
●最近のおもな成績:第5回全国高等学校日本大通りストリートダンスバトル優勝、第7回日本ダンス大会優勝、UDO STREET DANCE WORLDCHAMPIONSHIP JAPAN 2019優勝