振付師の思考法【MAA】叡明高校ダンス部2021 年ハイダン優勝作品をセルフ解説

2022.08.15 COLUMN

新シリーズでスタートする「振付師の思考法」
第1回目は、Rockwilderなどのチームで活躍し、キッズダンスのコーチとして何度も日本一を獲得。
高校ダンスでは叡明高校を短期間で全国トップレベルへ導いたHIPHOPダンサーMAAさん。

●叡明高校での賞歴
・マイナビHIGHSCHOOL DANCE COMPETITION(ハイダン)2020&2021 LARGE部門 全国大会優勝
・第14回ダンススタジアムBIG CLASS:関東・甲信越大会1位、全国大会3位(優秀賞)
・第11回全日本高等学校チームダンス選手権:関東予選1位、全国決勝大会2位(準優勝)
・マイナビHIGHSCHOOL DANCE COMPETITION(ハイダン)2022 LARGE部門 全国大会優勝


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>MAA主宰のダンスサークル:PROPS
>過去のインタビュー&記事:叡明高校の躍進に見るダンス部大会「HIPHOPの逆襲」

『ダンスク!TV』でもドキュメンタリー「渇きと進化」でその指導手腕を見せてくれました。

彼独自の振り付けメソッドを、手がけた作品をサンプルにして、具体的にその「思考法」に迫っていきましょう。

●解説する作品
叡明高校ダンス部2021年作品
(マイナビHIGHSCHOOL DANCE COMPETITION(ハイダン)2021 LARGE部門全国大会優勝作品)

●参考動画

【2021 FINAL WINNER】AWESOMEST( 叡明高等学校) / マイナビハイダン【マイナビDANCE ALIVE HERO’S 2020&2021 FINAL】

 

テーマは「外国人から見た日本」

 

●制作のいきさつ
この振り付けは、当初は自身のダンス団体の2017 年の小学生のコンテストチーム用のものとして作りました。
そこから2019年に、LAで決勝が行われた「WORLD OF DANCE」用にパワーアップ。
さらに2021 年に叡明高校ダンス部用にバージョンアップさせた作品です。
展開がハッキリしているので、今回の解説例としてわかりやすいと思います。

制作当初に見えなかった部分も、時が経てば新たな発見や改善点も見えてきて、結果的に4年の歳月をかけて進化させてきたネタとなりました。
当時の叡明高校の部長(2年生)がLAでのこのネタをすごく気にってくれてて、コーチを頼まれた時に「それならこのネタをやろう!」て事になり、叡明高校の当時1、2 年生が見事なまでに踊りきってくれました。振り落とし期間は2021 年8 月〜12 月末ぐらいでした。

テーマとしては一目瞭然な「和」です。
しかし、三味線の音や着物を使ったストレートな表現ではなく、自分が目指したものは「外国人から見た日本」。
つまりは、映画とかで日本のシーンの出てきても、「いやいや、ここ絶対、日本じゃないじゃん!汗」みたいな胡散臭さというか、非現実な日本のイメージの面白さを全体のセンスとして意識しました。

なので、使用楽曲は外国人が日本の音をサンプリングした楽曲にこだわって探して組みました。

●使用楽曲リスト
01. XZIBIT / CONCENTRATE
02. HIFANA / WAMONO
03. STAWHATZ – KOTO
04 . MISSY ELLIOTT / GET UR FREAK ON(MEGAMIX)

 

パートごとの解説

0:00〜0.22
●オープニング
始まりのインパクトを持たすために、曲のお経の声だけの部分を実際より長くしました。
密集隊形で手技などの動きをよりよく見せるために、鈴の効果音を後から足したりして、その部分の印象を強くしました。

 

0:22〜0:31
●ダンス展開
ビートが入ってくるので、密集隊形から一気に広がり、全身で力強く踊ることを見せて、全体での緩急を出しています。

 

0:31〜0:41
●フォーメーション展開
そこから、また一気に密集隊形に戻して、いわゆるフォーメーションを駆使した立体感のある音ハメをしています(音ハメのパターンが何通りかあり、音によって使い回しています。なぜなら作るのがすごく大変だから… 笑)。

 

0:41〜1:04
●スピード展開
密集からまた位置を広げていきます。
このパートのポイントとしては、全体でのスピード感!
JAZZのナンバーのような、上下左右の動きやシンメがあったり、中央と端の振りが違っていたり、とにかく目まぐるしく構成が変わっていく様子を見せています。
そしてラストもあえて音を繰り返しにして、映画のクライマックスのような畳み掛ける感じを作って、一気に次の曲に変わり(動から静)また新たな展開へと変化します。
急に展開が変わるのではなく、1:04〜1:08 はあえての空白の間を作っています。

 

1:08〜1:18
●コミカル展開
2 人のメンバーの腕に仕込んだ暖簾を出して、そこから笑顔が素敵な部長が覗き込んで、阿波踊りを踊りながら1人づつ出てきます。
ここは、全体の転換という部分で演出上は非常に重要です。ここがあるとないとでは全体の印象が大きく変わります。
見る側の休憩する場所というか、全曲をイケイケのフルパワーにしちゃうと見る方も疲れてくるのです。
そういった意味での箸休めの部分でもあり、阿波踊りというコミカルな動きを取り入れることによって演出としての面白さも出て、全体のメリハリがさらに増します。
(笑顔が素敵な部長が阿波踊りを習っていたのも功を奏しました!)

 

1:18〜1:51
●スピード展開#2
ドルフィンでカノンを見せたり、様々な構成を主とした、でも思い切りのあるダンスをしてさらに盛り上げていきます。

 

1:51〜2:11
●和の世界観
また密集隊形に一気に集まって、正座の状態から琴を弾くような動きだったりと、「和」の要素が強く出るフリを意識しました。
途中から立体的になるところも気に入ってます。

 

2:11〜ラスト
●エンディング
後ろ向きからパーカーのフードを被って、狐の顔になるという演出を駄目押しで用いてからのラスト畳み掛け!

 

●全体のポイント
目まぐるしく変わる展開や阿波踊りや狐の顔になる等、構成と演出のバランスがいい作品になったと思います。
しかしながら、どんなに良い作品でも、踊り手の完成度が低ければ機能はしません。
ほとんど自分達だけでここまでのクオリティに昇華させてくれた当時の部員達には感謝しかないです!
そして、「このネタを踊りたい!」という部長の情熱とカリスマ性がチームを一丸とさせていたのも、成功の大きな要因かと思います。

 

MAA「振り付けの思考法」まとめ

 

自分の振り付けのこだわりを言うならば、フリ・音・衣装の全ての統一性
つまりは、なぜそのフリで、なぜその音で、なぜその衣装なのか?ってところが、きちんとリンクしているという点でしょうか。

他にアドバイスとしてはたくさんありますが、一つをあげるとするなら、音と音の転換をハッキリさせること!
曲が変わっているのにフリのテンションが全く変わってないとか、曲ごとに振付師を分けたら全部サビみたいな詰め込み方になってしまった、という状況にならないように、曲ごとに展開をつけたり、全体を監督する作業も重要ですね。
例えば無音で作品を見た時に「あ!ここが音が変わった!」ぐらい、わかりやすい転換が1箇所でもあれば良いと思います。

みなさんもぜひ、こだわりのある作品を作ってみてください!



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