【編集長からのアドバイス】ダンス部は「新しい時代のリーダーズ!?」

2024.05.21 COLUMN

ダンスク編集長からのメッセージ

ダンス部は新しい時代のリーダーズ!?

 

文:石原ヒサヨシ(ダンスク!)

フリーマガジン『ダンスク!』2024年4月号より転載

 

強いダンス部の共通項

 

『ダンスク!』の取材で日々、全国のダンス部へ伺っています。おそらく、日本で一番、高校ダン ス部に訪問しているのは私じゃないかと自負しているのですが、強いダンス部に共通するいくつかの特徴があることに気づきました。

それは…「椅子を出してくれる」…のです(笑)。

冗談ではなく、私たち取材陣が行くと学校によって、ちょっとした対応の違いがあります。
挨拶、礼儀、そして椅子出しなどの取材対応をしてくれる学校とそうじゃない学校の違いです。

…いやいや正直、椅子の有無を気にするほど神経質ではないのですが、礼儀や挨拶は気になりますね。

「自分たちが今何をすべきか?」「相手はどう思っているか?」
を常に考えられることが、部の規律や自主性、積極性につながっていると思うからです。
その象徴の1つが「椅子出し」なのです。

言い換えれば「オモテナシ」の心でもあります。それは練習への意識と質、そして作品自体にも現われていくでしょう。

自分がいま何をすべきか、その場に何が望まれているか、それを即座に察知できるかーーその能力は、良い部活作りや作品作り、みなさんの将来の社会生活においても、とっても重要になっていきます。その力をぜひダンス部の活動で養ってください。ホント、良い予行練習の場なんです。

……あ、別に椅子は出さなくていいです。結局、取材で動き回っていて、座れませんので(笑)。

そして、そういう良いダンス部は練習の雰囲気もまるで違います。
私は普段からヨガや瞑想をするので「エネルギー」に敏感な方ですが、良いダンス部は、練習が始まった時から高いテンションと熱気が充満し、それを皆で共有し、ある種のトランス状態を練習場に引き起こしています

声出し、お互いのチェック、指導者のリード。全国トップ校の練習には、慣れた取材陣も圧倒され る迫力があります。毎日同じ基礎練でも、それを流れ作業でやるのと、1回1回を高めていこうとする意識の持ち方では、積み重ねた上での成果がまるで違いますね。

そして、良いダンス部には「逃げ」や「妥協」が ありません。
取り組み方が足りない部員をその瞬間・その場で叱咤したり、課題に真剣に向き合ったり、作品作りの仕上げにギリギリまでこだわり抜いたり、「こんなもんでいいか…」みたいな妥協ではなく「もっと! もっと!」と突き詰め、ブツかり合い、高め合っています。
部活の醍醐味は、馴れ合いではなく「ブツかり合い」ですからね。

だから良いダンス部は練習の時から、皆が良い表情をしています。
イキイキと目が光り、ついでにオデコも光っています。オデコには「第三の目」が隠れていて、心と体が一致すると中で輝き出すんですね(本当ですよ)。

あと、よく「表情をつけて!」という指導がありますが、本当の表情とは「する」ものではなくて、「出 る」もの「成る」ものだと思います。ダンスの楽しさ、仲間と踊れる歓び、支えてくれる人への感謝。 そういう感情で心を満たして、素直に体に繋いでいけば、誰でも良い表情は出せると思います。
それがたとえグシャグシャな顔でも、泣いてしまってもいいじゃないですか?
良い表情とは、 舞台用に「する」ものではなく、普段の成果から「出す」もの。いわば、尊くて美しいコミュニケーションなのです。

そんなスゴい方法と場所を持っている、みなさんダンサーは本当に恵まれていると思います!

 

お金を払ってでもやりたい仕事

 

たまに取材先の高校生から「どんな仕事についたらわからない」という声を聞きます。コロナ禍で個々人の生き方や幸福感が見直された時代でもあるので、そういう疑問は怠惰とも無知とも思いま せん。

このまま自分が何かしらの経済活動に従事して良いのか……などなど、自分の感覚に正直な疑問なんだと思います。

そういう時に私が出すヒントが「お金を払ってでもやりたいことってある?」という質問です。

みなさんにはたぶん、お金を払ってでも受けたいダンスのレッスンがあるでしょう。それはもちろん、好きだからです。

そこで「お金を払ってでもやりたい仕事、入りたい会社」とまず考えてみてください。

給料や待遇、自分の労働との等価交換で仕事を考えるから、わからなくなったり、間違えたりするのです。

本当の仕事には幸福感と充実感があります。いくら忙しくても疲れません。
仕事とは、自分が人々や世の中にコレが貢献できた!という歓びそのものだからです。

それを「ライフワーク」という言い方をする場合がありますね。やり甲斐や使命感のある、言わば天職です。でも最初からこんな仕事に出会 えるのは稀です。

その前に考えたいのが「ライク(LIKE)ワーク」。その仕事が好きどうか、です。本当の「好き」を仕事にしているか。
もっと言えば、世の中に用意されたものからわりと好きな仕事を選択するのではなく、本当の「好き」から派生する独自の仕事のアイディアが思いつくかどうか?

次に考えたいのは「ライス(RICE)ワーク」。 その仕事で食べていけるかどうか?
その仕事の対価は、世の中にどれだけ必要とされているかの指標だと考えてみてください。
もしお金で苦労して、好きな気持ちが削られていくならば、 それは間違った「好き」ではなく、たぶんやり方が間違っているのです。
「好き」の気持ちを賢く形にしていきましょう!

そして、LIKEとRICEが合致すれば「ライフ(LIFE)ワーク」になります。
自分の「好き」で人が喜ぶ、それが持続して拡大されていく。
世の中の凸と凹が合致する理想的な循環ですね。

 

今の一歩一歩を楽しむ!

 

みなさん、将来の夢を見る年頃かと思いますが、「自分はこんなものかな」とか、あまり現実的に妥協しないでくださいね。

先ほどの通り、まずは自分の「好き」を大事に、夢はなるべく大きく、見るのではなく「感じる」ぐらいで良いのだと思います。

山登りで、高い高い頂上のことを考えると途方に暮れてしまいますよね?
「あんなところに行けるのかな…無理!」とか「まだ着かないのかなぁ…、疲れたぁ…」ではなく、まずは目の前の一歩一歩を楽しんで欲しいのです。

いつか頂上に行けたらいいなぁと感じながら、一歩一歩に快さを集中させていけば、いつの間にか頂上に辿り着いています。
気づけば、 そこに辿り着けた新しい力もついています。

「夢は持たない。今を楽しむこと」と、私が行ったインタビューで新しい学校のリーダーズが言っていました。
>>【インタビュー】新しい学校のリーダーズ「好きから生まれるエネルギーって素晴らしい!」

実は、リーダーズのMIZYUとRIN は子供の頃からの知り合いなのです。彼女たちがこの 15 年間で、キッズダンサーからアーティストへ、そして世界デビュー、紅白出場、武道館ワンマンと、「個性と自由ではみ出して」どんどんデカいことを実現してきた姿を遠くから眺めていました。

そう、ホントに夢はかなうのです!

彼女たちが子供の頃から、全力でその日、その時を楽しんでいた無邪気な姿を、昨日のことのように 思い出します。

明るく、真っ直ぐで、一生懸命。ダンス部の高校生たちは日本の宝だと思っています。

キミたちが、次なる、新しい時代のリーダーズになってくださいね!
ずっと応援してます!



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