2021年関東ダンス部躍進の秘密#2〜ダンス部顧問が語る「関西との違い」
2021.11.26 HIGH SCHOOL
文:石原ヒサヨシ(ダンスク!)
前回に続いて、関東ダンス部の躍進について考えていこう。
まずは「マイナビ ハイダンEAST vol.2」に参加していた学校の顧問の意見を紹介しよう。
「今はすごくレベルが上がってきて、関東でもダンスに力を入れている学校が増えてきました。あと芸術性の高いチームも増えてきました。関東にはもともと、作品のテーマ性や構成を重視している流れはありますね」(関東ダンス部顧問A)
まず躍進の秘密の1つはダンス力の向上である。
ダンス力に関してはこれまで「西高東低」の傾向が続いていた。
全国大会で始めた関西や九州のダンス部を見た関東の学生は、そのダンス力や意識の高さに驚くという。バレエやモダンの基本が備わったJAZZ、強さとグルーヴを兼ね備えたHIOHOP、キレキレのLOCKやバチバチのPOP、そして圧倒的なバトルやソロの強さ。
筆者も何度も関西の強豪校を取材しているが、その練習量や精度も高いのだが、練習への集中力にはいつも感心させられる。
「逆に関西の学校は、純粋に技術を高めることにストレートですね。そこに関東の学生が真っ向勝負するのは腰が引けちゃうから、その不足分を衣装や演出で補っている傾向はあると思います」(関東ダンス部顧問B)
「都会の高校生は興味が分散しがちなのかなと思います。ダンス部の活動を生活の一部としてやっているのに比べて、関西の郊外の学生は“それしかやらない”ぐらい集中している」(関東ダンス部顧問C)
しかし、近年ではダンス力でも関西勢に劣らない関東のダンス部が出てきた。関西の強豪ダンス部も徐々にその変化にも気づいているという。
「なんとなく、関東のダンス部の“本気度”が上がってきた気がします。これまでは、関東のダンス部はいろいろな活動や個人の興味がある中で“軽やかな感じで”コンテストに取り組んでいた印象があるんです。それが、メディアなどで関西の学校の練習ぶりや、勝負への執念深さを見ることによって本気モードになってきたんかなと思います」(関西ダンス部顧問)
また、ダンスシーンの中心地である関東や東京には、優秀なコーチ(プロダンサー)がたくさんいる。ダンス部は、プロが情熱を捧げるには絶好の対象でもあるし、そこで実績を残せばダンサーとしての立身出世につながる可能性もあるだろう。コーチと堅い結束を築き、精度の高い基礎練習をこなすことができれば、課題のダンス力もみるみるうちに向上していく。
そして、関東の学生がもともと持っている高いセンスや発想力を、そのダンス力の上で生かすことができれば、関東のダンス部「らしさ」はより確立していくに違いない。関東ダンス部の顧問たちは、そのダンス自体の特徴についてこう述べる。
「関東のダンスには、スタイリッシュさがある気がします。例えば、POPの動きにしても、シルエットの崩し方がおしゃれだったり。関西のガチガチのオールドスクールの強さに対抗して、スタイリッシュさで勝負しているところはありますね」(関東ダンス部顧問D)
「都会では、楽しいこともたくさんあるし、流行っているものをすぐ近くで見ることもできる。そういう部分を優位点としてダンスに活かせればいいですよね」(関東ダンス部顧問C)
大会ではダンスを競うわけだから、まずベースとなるのはダンス力。そこを競わせ、向上させた上で、初めて個性や演出は活かされていくのだ。
「関西と関東の比較でわかりやすいのが、ダンスタでもチームダンス選手権でも、関東はスモールクラスよりもビッグのエントリー数が多いんですよ。その要因を考えると、スモールは選抜でチームを組む形が多いから、関東の学校は選抜を行なえない状況なのか、あえて行わない状況なのかと。となると、部の中で競争意識が起こらないですから、結果的に“みんなで”という意識で平均化された作品になってしまう。“競争意識”は1つのポイントだと思います」(関東ダンス部顧問C)
関西勢に追いつけ追い越せ。部内で競争し、全国で戦う意識を持ち、「らしさ」を発揮できた時に、初の関東ダンス部全国制覇は叶うのだろう。