振付師の思考法【TERARIE&生徒】都立三田高校ダンス部ダンスタ準優勝作品をセルフ解説

2023.10.06 HIGH SCHOOL

孔雀をテーマにした圧倒的な作品力・構成力で、ダンススタジアム決勝でビッグクラス準優勝を勝ち取った都立三田高校。
関東の学校でビッグクラス準優勝というのはダンス部界では快挙と言えるだろう。

そこには「生徒とコーチの完全共作」というダンス部として理想の制作状況があった。

パートごとに「コーチ担当」「生徒担当」を入れ替えて、セルフ解説してもらおう。


解説者/振付師

TERARIE
プロダンサー/都立三田高校コーチ

ダンスチーム「𝖥𝗅𝗒𝖲𝗂𝗑𝖡」で活動、フォーメーションやカノン展開を駆使した作品力で定評がある。
都立三田高校以外にも、洗足学園音楽大学、東京ビジュアルアーツ専門学校、実践学園、WODなどで指導を務める。
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都立三田高校ダンス部
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>>2020年の練習レポート動画

 

 

解説する作品
東京都立三田高校学校2023年
ビッグクラス作品

孔雀

・ダンススタジアム決勝2023年ビッグクラス【準優勝】
・ダンススタジアム東京都大会 ビッグクラスBブロック【優勝】

>>ダンススタジアム2023年決勝のレポート記事

 

参考動画

FODにて現在配信中


制作のいきさつ

 

〈生徒より〉

紆余曲折のあったテーマ決め

三田高校は現在TERARIE コーチご指導のもと、生徒が主体となって作品作りを行っています。
今回の作品も、テーマ、音源決め、振り付け、構成、衣装、ヘアメイクなど全て自分たちで行ないました。
新人戦の「蛇」をテーマにした作品)が終わってから、夏の大会のテーマをどうするか、100個以上候補を出し合いました。
その中で多かった候補を最後まで残し、メンバー全員でメリットデメリットを出し合って決まったのが 「孔雀」でした。大体4月下旬頃です。
しかし!…「孔雀」というテーマに決まったものの、音源も決まらず何度も変更、伝えたいメッセージも私たち自身が曖昧なまま、月日だけが経っていきました。
そして 6月上旬、「テーマを『蛇』に戻すのはどうか?」という意見が出ました。
先が見えず不安でいっぱいいっぱいだった私達は、 ほとんど全員がテーマを新人戦の「蛇」に戻すことに賛成していました。

ですが、少数派ではありましたが、「孔雀」でこの夏挑戦したいと言ってるメンバーもいて、全員で もう一度じーーーっくりミーティングをしました。
「孔雀をやりたいけどこの先が 見えないから蛇の方がいい」
「時間が無い中で孔雀をイチから作り完成させるのは 困難」
という意見と同時に、
「蛇 にするなら全てガラッと変えないと勝てない」
「蛇はこれ以上衣装案が出ない!」などの意見もありました。

最後の最後まで悩んでいたときに、TERARIE コーチから
「理屈抜きでシンプルに、決勝の舞台で踊りたいものを選んだ方がいい」
というお言葉を頂き、素直に考えた結果、みんなが 選んだのは「孔雀」でした。

こうしてこの作品の制作がスタートしました!

 

〈TERARIEコーチより〉

テーマをダンスに落とし込むには?

新人戦作品の「蛇」を見て、この代のチームの構成力の強みやキャラクターの魅力を考えた時に、何かしらの魅惑的な「動物」「生き物」がハマるんじゃないか なと思いました。
「孔雀」は色彩が本当に美しく、ステージの上でこの色彩が舞ったらどんなに綺麗だろうなと、衣装やメイクのイメージは強烈にありながらも「どうダンスに落とし込むか?」が難しく課題でした。

生徒のみんなが度重なるミーティングをし紆余曲折しながら「新人戦の時の自分達を超える」「孔雀は蛇を食う」などの意見が出ていました。
最終的には私がどんな意見やアドバイスをしたとしても〝みんなの作品″ になる事が1番大切なので「みんなで決めたことがこのチームの正解!後悔なくいこう!」という気持ちでみんなが話し合い、決断をし「孔雀」に決定しました! 

 

全体のポイント

 

〈生徒より〉

「圧倒的」になるために

今回の作品は、全てにおいて“圧倒的”になることを意識しました。
当たり前のように聞こえるかもしれませ んが、作品のどこも手を抜かない。2 分半という演技時間 は短くもありますが、一瞬にして飽きられる瞬間がくることもあります。

だから、2 分半一瞬たりとも飽きさせない、瞬きをしたく無くなるほど惹き付ける作品にしようと、振り付け、音楽、衣装、メイク、表情の全てにおいて細部までとことんこだわり、”圧倒的”になることを目指しました。
例えば、音楽では鳥の鳴き声を足してみたり、衣装やメイクでは何度も試作をして本物の孔雀そのものというよりかは、孔雀の持つ「美しさ」を最大限に表現出来る一点ものを作ろうとしました。

振り付けや構成の面では、見せ場となるポイント、孔雀で言ったら”ド頭の目の構成”、 “中盤のアイソレ部分”、”千手観音で羽を広げる部分”などキャッチーなパートを何個も作ることを意識しました。

サプライズの連続、「なんだこれ!?」の連続を狙いました。

また、作品が一旦完成したところで、客観的に作品を見てみて、もっと良くなりそうな部分を何度もブラッシュアップしました。
トライ&エラーを繰り返し、最後まで詰めに詰め込んだという点が、今回は功を奏したのだと思います。

 

〈TERARIEコーチより〉

スキル不足を補ったチーム愛

私の役割としては、全体的なディレクションをすることです。
生徒達のやりたいことや 伝えたいことをしっかり汲み取って、プロ目線として今までの自分の経験などから客観的に指導し伝えることを大切にしていました。
「細部に神は宿る」と言われる様に、最後の最後まで目を光らせてブラッシュアップするイメージです。

特に今回凄く印象的なことは「チーム愛」です。
チームの半分くらいは高校からダンスを初めた初心者が多いチームなんです。
選抜をした時には、「現時点は全員での出場は厳しい。今のままでは全国には行けない」と圧倒的にスキル不足を伝えました。
幹部メンバーから「学年全員で必ず出場したい。もう一度選抜をお願いします!」と何度も打診をされ再度選抜。
再選抜では全員が別人になって凄い熱量で踊ってくれました。
そんな一人一人の大会に対する熱量、チーム全員を愛する気持ちが、何より群舞の作品の強み、魅力に なってるんじゃないかなと思います。 


オープニング〜孔雀の目からダンスへ

 

♡コーチ振り付け部分「目覚め」
孔雀が住む森の中に光が差し込むイメージで、神々しく神秘的なスタートにしました。
目覚めるイメージです。

 

◇生徒振り付け部分「どアタマの目!」
目の中から一羽の孔雀が誕生します。
孔雀は自身の羽に無数の目玉模様を持ち、それがとても綺麗なんです。
”目玉”にフォーカスを当て「目の構成をやりたい!」というアイデアが、TERARIEコーチと作品ミーティングをしている時に出ていました。
どこにその構成を入れる?という話になり、「入れるなら最初!どアタマ!」と、このフリが生まれました。観ているひとにドキッとしてもらえるような、意表をつく最初の掴みを狙い、目の中から神々しい孔雀が登場した!という突飛なイメージで作りました。

 

◇生徒振り付け部分「遊び心のまつ毛」
目にまつ毛が生えてます。

目を作ってる周りの人達は、最初何も動きがなかったんです。でもあるとき「まつ毛を生やしてみようかな?」と遊び感覚で試してみたら、めちゃくちゃしっくりきて、コーチに動画を見せたら即採用されました。

 

◇生徒振り付け部分「挑戦的な参上!」
センターの子を中心に、私達が参上したぞ!!!というイメージで前を睨んでいます。

段をつけて高さが見えるようにしたのと、マントを使って「鳥の羽」に見えるようにも作りました。みんなのニヤッとした挑戦的な表情にも注目です!

 

◇生徒振り付け部分「リズムへのチェンジ」
OPから今までの神秘的な雰囲気がここでガラッと変わって、リズム的な要素を取り入れる部分です。

 

◇生徒振り付け部分「孔雀の鶏冠を表現」
手をこうして頭上にあげると、孔雀の鶏冠(とさか)になんとなぁく見えるなぁと思って作りました。音にも合ってキャッチーな場面のひとつです。今回の作品は、孔雀本来の生態を意識したファニーな要素を多く取り入れています。

 

>>後半「ユニゾン〜舞台の幕開け」へ



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