優勝は武南高校ブレイキンチーム!DCC vol.12(全国高等学校ダンス部選手権)全チームレポート!

2024.08.21 HIGH SCHOOL

<<Bブロックより

 

1stステージ:Cブロック

 

C-1:大阪産業大学附属高等学校(人為)
ヒグチアイの1曲使い。高い技術力に加えてアクティングの表現も見せた。
(独創性4/表現力30/技術力35=69点)>>ベストストーリーテリング賞

 

 

C-2:仙台市立仙台商業高等学校(魅影)

コンセプトの上にしっかりとダンスで見せる。体の軸で踊るからこそ生まれるグルーヴ感。演出がもう1つか。
(独創性4/表現力32/技術力34=70点)

 

 

C-3:トキワ松学園高等学校(黒白)

艶やかなスカートを使って多彩に見せる。混みいった感があるので、観客の視線誘導をよりクリアにしたい。
(独創性4/表現力26/技術力32=62点)

 

 

C-4:大阪府立柴島高等学校(大切)

RIEHATAの「PAUSE」1曲使いで表現にフォーカスした柴島のリリカル系ヒップホップ。心地よい新境地。
(独創性5/表現力34/技術力38=77点)

 

 

C-5:武南高等学校(和勢)

コンテスト作品と言うより、武南BBOYSのライブショー。お祭り感の中に高度なアクロバットで会場をロックする!
(独創性8/表現力36/技術力44=88点)>>FINAL進出/ニチレイフーズ賞

 

 

C-6:沖縄県立名護高等学校(怪放)

YOASOBI「怪物」で、仮面をつけた前半からの開放的になる後半まで、曲とシンクロした構成。
(独創性5/表現力27/技術力32=64点)

 

 

C-7:日本体育大学荏原高等学校(彩雲)

強いフィジカルと高い表現力で高校生らしくフレッシュに構成。選曲とダンスがややミスマッチだったか。
(独創性5/表現力26/技術力34=65点)

 

 

C-8:関西大倉高等学校(狂蟲)

トライバルなビートに咆哮するパッション。予測のつかない随一のアヴァンギャルド表現だ。
(独創性9/表現力33/技術力43=85点)>>FINAL進出

 

 

C-9:安城学園高等学校(走破)

往年のダンス部らしいエンタメ作品。ストーリーの構成力と脚本力が素晴らしい。
(独創性5/表現力24/技術力33=62点)

 

 

C-10:武南高等学校(窮屈)

スピーディな緩急と迫力のユニゾンで惹きつける。後半の選曲とフォーメーションに一工夫あって良かったか。
(独創性4/表現力35/技術力40=79点)>>FINAL進出

 

 

C-11:品川女子学院(痛奴)

「中2病」というユニークなテーマで矢継ぎ早に展開を作る。表情や仕草にテーマ消化の試行錯誤のあとが。
(独創性7/表現力28/技術力38=73点)>>オーディエンス賞

 

 

C-12:駒澤大学高等学校(夢中)

黒マントを使った多彩な見せ方。カッコよさと可愛らしさが同居する個性的な作品。
(独創性6/表現力27/技術力31=64点)

 

 

C-13:日本大学明誠高等学校(天気)

引きの美学で研ぎ澄まされた明誠の鉄板的作品。ダンス技術も大事だが、固有の表現による感動が何より大事だと感じさせる。
(独創性8/表現力36/技術力46=90点)>>FINAL進出

 


FINALステージ結果

 

優勝:武南高校(和勢)
準優勝:樟蔭高校(祈念)
3位:帝塚山学院高校(鼓舞)


総評:最終決戦はスタイルのぶつかり合い

 

ブロック予選を勝ち抜いた10チームで行なわれたFINALステージ。
審査員が変わったこともあり、もちろん予選通過の得点順通りとはならなかった。

2位〜4位はなんと同得点。
規定通り、表現力の点差で山村国際高校(瞬輝)が4位に漏れた。

武南のブレイキンチーム「和勢(わっしょい)」は、その名の通り和風なトラックと、お祭り騒ぎのような勢いで、見事に優勝をさらった。
審査員に、ブレイキン馴染みのダンサーが多かったのもあるが、会場を沸かせる(LOCKする)という意味では、この日これ以上のチームはいなかっただろう。
今年は、ブレイキンがオリンピック競技になった年でもあるし、そういった機運や話題性も味方につけて優勝チームが選ばれるのも、DCCらしい結果と言える。
女子優勢のダンス部界にとっても、男子の活躍は喜ばしいことでもある。

漢字2文字の表現性が審査点にある本大会。
FINALステージではさらに、その得点比率が上がる。
実際、漢字自体は当て字もかなり多いので、その意味性よりも、要は「いかにダンスで表現しているか?」を審査員に感じさせることが重要で、FINALの上位入賞チームは、それぞれの表現を、それぞれのスタイルでやり切っていたと言える。

また、審査基準に「独自性」があることもDCCの特徴の1つだ。
先の五輪ブレイキンでは「シグネイチャー」という言葉が飛び交っていたが、日進月歩のダンスの世界では、ダンサーやチームがそれぞれの独自性・特異性を持ち、互いに刺激し、磨き合うことが、ダンスカルチャー全体を前に進める。

ヒップホップからジャズ、創作ダンス、オールドスクール〜ブレイキンまで、ダンス部の大会は、今や異種格闘技戦の様相だ。
1人のジャッジが複数ジャンルを専門的に評価することは正直難しいだろう。

だからと言って、勝負をジャッジの主観や好みに委ねてしまうは(あるいは負けた言い訳にしてしまうのは)、進歩的・教育的とは言えない。

そこで、いま一度、各ダンス部には、自分たち固有のスタイルを見つけてほしい。
自分たちの得意ジャンルとは? スタイルとは? 武器とは? そして自分たちらしさとは?
……自分たちが誇る自身のスタイルを本番でやり切ることができれば、勝敗如何に関わらず、後悔は1つも残らないだろう。

新学期が始まるタイミングで新体制になる部も多い。

「自分たちのダンスとは?」

練習を始める前に、今一度全員でシェアしてみよう。

 

コラム:流行の「落ちる動き」から学べること

 

最後に、DCCに限らず今シーズンの作品で目についたダンス部のトレンドや気になったことについて。

①声を出す
「ヤー!」とか「ワー!」とか、コロナが明けてからか、やたらと目にする(耳にする)ようになった。
パッションや元気の良さを表現するにはわかりやすい手法なのだが、今年はけっこうな数のチームが声を出していたので、逆に「またか」という印象もあったり、流れもなく唐突に声を出しているような印象があったり…。
高校生らしくて悪いことではないのだが、「声を出す」よりも「出てしまった」という伝わり方・演出をもっと工夫したいところ。

②群のクリアさ
良いチームとそうでないチームの大きなさに「クリアさ」があると思う。
うまいチームは「いまココを見てください」という観客の視線誘導が丁寧だ。
大所帯だとしても、フォーメーションだったり、ソロプレイだったり、踊り分けだったりを駆使して、見せどころをクリアにする配慮がなされている。
そうでないチームは、大所帯の迫力で押しているつもりが、観客にとってはどこを見て良いのかわからない、グチャグチャっとした印象を与えてしまい、結果観客や審査員を疲れさせてしまう。
要は、オモテナシの効いた作品作りをもっと心がけてほしいのだ。

③落ちる動き
1人が群を駆け上がって、背中からフッと落ちる動き、今年はかなり目立った。
一瞬危ないと思うので、つい目を奪われてしまうのだが、1日中大会を見ていると、3〜4チームはかぶっている状況(笑)。

なぜ「落ちる動き」に目を奪われてしまうかと言うと、それは「自然な動き=重力」だから。
ここで気づくのは、いかに「ダンスの動き=振り付け」を「自然な動き」に見せるかが重要か、ということだ。

腕を伸ばすではなく、何かに引っ張られるような動き。

膝を曲げるのではなく、まるで重力で膝が落ちてしまったようなダウン。

止まる動きではなく、何者かに止められてしまったようなストップ。

速く見せるのではなく、速く動くための理に適った軌跡。

要は、野生のチーターや馬が荒野を駆ける動きがなぜ美しいかと言うと、速く走るために一番「機能的」な動きなわけだから。チーターにとって、あの走り方は速く見せるためではなく、速く動くための自然な動き、というわけだ。
有名なスポーツカーは、そんな野生動物の走る姿をモチーフにデザインされている。速さを連想させる、もっとも機能的で美しい形だからだ。

 

引くこと、抜くこと

ダンスから話が離れてしまったが、流行りの「落ちる動き」には振り付けのいろんなヒントが隠されていると思うのだ。
もう1つ言うと、
動くために、力を入れるのではなく、力を「抜く」ことを意識してみたい。

ダンス部の作品に通じて言えることだが、今年もまた、ネタを詰め込みすぎなものが多かった。
自分たちができること、やりたいことをギュウギュウに詰め込みすぎるので、作品としての見せどころ(フォーカス)が弱まってしまう。先ほどの「クリアさ」と通じる部分だ。

引き算をすること、あえて動かないこと、動きを抜くことで、見せどころが効果的が光る仕組みにもっと意識的になってみよう。

 

石原ヒサヨシ(ダンスク!)

 

 

 



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