音を感じる!音を探す!音にこだわる!〜ダンスの曲選びを編集長とDJ Hirokngが完全解説!

2020.05.29 MUSIC

音を感じる
音を探す
音にこだわる

ダンスは音楽と共にある。音楽の素晴らしさを体現するのがダンスだ。「音」との向き合い方・付き合い方をじっくりと考えていきたい。

(ダンスク2018年5月号より転載)

 

#1:音を感じる

 

文=石原久佳(本誌編集長)

 

「耳」で踊る感覚

1980年代以降はミュージックビデオの登場で「音楽は目で楽しむ」時代に入ったと言われる。その中でダンサーの活躍の場が広がったのは間違いないが、以降ダンサー自身も視覚に頼りすぎて踊っている状況はないだろうか。耳ではなく「音楽を目で踊る」感覚と言い換えても良いだろう。

古い話になるが、1970~1990年代のディスコやクラブの時代は、ハコに集まった音楽好きの一部がやがてダンサーになった。まずダンスの前に「音楽ありき」なのだ。しかし時代は変わり、今は「ダンスがやりたい」という欲求のあとに、音楽への探求がついてくるように変化した。言わば「踊るために、踊るための、音楽を知る」という逆転現象が起きているのだ。

コーチや大会ジャッジから「音楽を大切にしてほしい」「音楽をもっと聴くように」と言われたことがあるだろう。もちろん、踊る曲は耳には入っているし、何度も何度も聴いている。しかし、意識してほしいのはもっと奥の部分にある。そこに気づいていないダンスに関して、指導者たちは言及しているのだ。

今は踊るために、数々のお手本があり、定番のステップや動きもある。いわば「カタチ」がたくさんある。皆さんも日々の練習でその「カタチ」を追いかけているだろう。正しいカタチ、間違ったカタチ、揃えたいカタチ。踊るために、見本を見て、鏡を見て「視覚」を一番使っているに違いない。例えるなら、楽器演奏を覚えるために譜面しか使っていない状態というか、視覚への意識がいきすぎて聴覚への意識がおろそかになっているのだ。本来ダンスとは耳から入った音を、自分の感性で感じとり、それを体で表現するもの。それを観客が「見る」ことで成立するわけだ。

POINT▶︎▶︎カタチを目で追うのではなく、耳から入ってくる音に集中する

 

曲のメッセージを受け取る

ダンス部大会で初心者のダンス部のパフォーマンスによく見られるのが、「曲とダンスが合っていない」あるいは「世界観の統一やバランスが悪い」という傾向だ。シリアスなヒップホップに満面の笑顔、EDMの強いビートに負けてしまっているステップ、叙情的なジャズなのにブカブカな衣装、などなど。

まず考えてほしいのが、君たちが使っている曲の「表情」はなんだろうか。喜怒哀楽のどれか? 歌詞のメッセージは? アーティストのキャラクターやイメージは? などなど、調べられることや話し合えることはぜひやっておきたい。踊る前に、まずは曲のイメージを捉えること。曲が訴えかけているリズムやメッセージを受け取って、それを踊りで表現する。あるいは増幅する。自分たちのダンスの前に曲ありき、という大前提を忘れないでほしい。

さらに言えば、当然みんなは好きな曲や盛り上がれる曲で踊りたいだろう。しかし、考えてほしいのは自分たちのダンスやそのレベルとの相性だ。カラオケをやるにしても、「好きな曲」と「自分の声に向いている曲」の違いを感じたことはないだろうか。そして評価されたいならば当然、観客や審査員の好みも意識するべきだ。それらすべてのバランスを整える技術が、良い作品を作るために必須であり、若者がダンス創作で得られる最大のスキル=バランス感だと考える。

POINT▶︎▶︎「やりたいコト」と「できるコト」「望まれているコト」のバランス感覚を持つ

 

自分の「音取り」を見つける

初心者ダンス部と評価されるダンス部の違いの一つは「音取り」だ。良いダンスは、音取りが的確で多彩で独創的。観客を安心させる、飽きさせない、あるいは驚かせる音取りのセンスを持っているのだ。

振り付けに入る前に、まずは踊る曲を聴こう。目をつぶって100回は聴こう。まず聴こえるのは、目立つ音や大きな低音。ドラムのキックとスネアやベース音。次に耳に入ってくるのは楽器の音や目立つ電子音だろうか。歌や主旋律があるならば、当然そこにも反応するだろう。ヘッドフォンなどでもっと聴き込んでいけば、ハーモニーやカウンターメロディや繊細な装飾音も聴こえるはずだ。それらすべての音を分解して関係性を感じながら聴く。これが「音楽をもっと聴く」という状態なのだ。

それと同時に、曲のアクセントや自分の体の揺れ方を探っていこう。決まったやり方や間違った音取りなんてない。カウントやワンエイトの区切りにとらわれなくても良い。自分の気持ちよさや直感に委ねる形で良いから、聴きながら何度もそれをなぞっていこう。伸びたり縮んだり、浮遊したり刻んだり、強弱、濃淡、安定と裏切り、音と自分の感性が遊泳するような感覚を楽しもう。

それができたら、さっきとは違う音取りを意識してみよう。今度はメロディをなぞってみる、バックビートやギターの音を中心に取る、曲の展開ごとに音取りのアクセントを変えてみる。うまくできないなら、ダンス部仲間にやってもらい見せ合っても良いだろう。これらの音取りのバリエーションが多彩さや構成につながっていくのだ。

その音取りの感覚はまだ完全に振り付けに展開しなくて良いので、動画などにメモしておくと良いだろう。自分の体の揺れ方を、あとで見直したり、人の意見を聴いたり、比較したりするのに、この「動画メモ」は振り付けの骨組みとなってくれるはずだ。そして、この時のナチュラルな感覚を失わないように、音取り(音ハメ)のパターンに展開し、最終的に振り付けや構成や世界観に発展させていくことが、優れた音取りのダンスとなるはずだ。

音取りの良い作品とそうでない作品のわかりやすい違いは、観客や審査員の体が揺れているかどうか。ノリが伝わっているかだ。大会の際にはこのポイントをチェックして観覧してみても良いだろう。

POINT▶︎▶︎曲を100回以上聴く。すべての音が分解できるまで

>>DJ Hirokngの「音を探す」「音にこだわる」へ



  • マンガ で知る「ダンスを始めた理由」「練習環境」「入部時の素朴な疑問」「部の人間関係」「上達の瞬間」「大会出場の勇気」「踊ることへの感謝と未来」