優勝は帝塚山学院高校!DCC vol.10(全国高等学校ダンス部選手権)全チームレポート!

2022.08.25 HIGH SCHOOL

<<前半チームより

 

大阪産業大学附属高等学校
(心声:ボイス)
AIの名曲「VOICE」1曲使いのエモい作品。曲、ダンス、衣装のバランスや動きの独創性、見せ所の伝え方を意識したい。(54点)

 

桜花学園高等学校(愛知)
(共鳴:きょうめい)
アダルトなムードなジャズ作品。練習量とチームワークの良さが見える。(54点)

 

山村学園高等学校(埼玉)
(通勤:サラリーマン)
テーマ、衣装、選曲がキャッチーでバランスの良いエンタメ作品。さまざまな場面が用意されているが、それらの展開の重ね方がやや単調だったか。(59点)

 

創志学園高等学校(岡山)
(靴磨:ディライト)
爽快なLOCKでのコミカルでファンキーな作品。少人数ながらスキルとアクロバットを活かして、終始観客を楽しませた。(73点)

 

トキワ松学園高等学校(東京)
(亜族:アマゾーヌ)
コンセプトやムード作りが素晴らしい。ダンス力とグルーヴ感を強化すれば、より高得点が狙えるはずだ。(63点)

 

日本体育大学荏原高等学校(東京)
(穏和:ピースフル)
メッセージ性の強い作品で、男子のパワーが頼もしい。後半、ジャズで見せるなら本格的な基礎力強化をしたい。(59点)

 

大阪府立柴島高等学校
(変貌:ユナイト)
HIPHOPのカッコ良さをストイックに追求した。演出や色付けが当たり前になった昨今の中では、この正面突破のユニゾンは逆に際立って見える。(62点)

 

同志社香里高等学校(大阪)
(鷹瞳:ホークアイ)
激情の音感表現と高速ワックを武器に、全身全霊で自分たちのダンスを叩きつけた。部の体制が変わったという今、同志社香里の今後の進化に期待したい。(70点)

 

三重高等学校
(心躍:ドキドキワクワク)
お得意の青春ドラマ仕立て作品。審査やレポートを忘れるぐらいほっこり楽しめる。他校と違うアプローチを突き進むシリフレの存在感は、高校ダンス部のアンチテーゼであり、多様性を高めている。(79点)

 

関西大倉高等学校(大阪)
(剥生:はくせい)
※出場辞退

 

大阪府立登美丘高等学校
(泡麗:リンス)
登美丘ならではのネタの着眼点と選曲。後半はエアロビ調に変化したが、くっきりとした二部構成のために、受け取る印象が散漫になってしまったか。(75点)

 

帝塚山学院高等学校(大阪)
(春霞:はるよこい)
抜群の身体能力・技術・表現力で、観客を別世界へ誘うような芸術作品。得点の通り、正直レベルが違う。(89点)

 

山村国際高等学校
(寿司:すし)
イキな音取りと展開、ピリッと効いた小道具。筆者の見た高校ダンス部の「寿司ネタ」では最高級の腕前だ。(69点)

 

【結果】
優勝:帝塚山学院高等学校(春霞)
2位:東京都立狛江高等学校(響音)
3位:三重高等学校(心躍)

〜特別賞〜
ニチレイフーズ賞:大阪府立登美丘高等学校(泡麗)
Chiyoda賞:武南高等学校(脚色)
TOKYO HEADLINE賞:トキワ松学園高等学校(亜族)
オーディエンス賞:日本大学明誠高等学校(共鳴)

 

【総評】

石原ヒサヨシ(ダンスク!)

 

「まず表現ありき」の審査基準

 

会場を東京ガーデンシアターに行なわれた記念すべき第10回大会。1回大会からDCCを見てきた経験から、いくつか気づいたところを列記したい。

1)表現の抽象化
今回出場している学生は皆「コロナ以後」の年代だ。
学生生活に、不安や窮屈さを感じて過ごしているに違いない。
そして未来に対して抱いているだろうパラダイムシフト=「価値観の揺らぎ」が、表現を重視する本大会の作風傾向に現われていた気がする。

疑念、不安、葛藤。そしてそこから搾り出していく、未来への希望。
以前ほどはっきりとした道ではないが、霧の中で光を見出すような抽象の中にこそ、リアルな想いと表現があるのだ。
高校ダンス部作品の芸術性が高まり、多様化していく意味でも、この傾向は歓迎したい。

2)作風のアップデイト
高校ダンス部の作品は顧問やコーチの世代や志向によって、作風の年代がバラエティ豊かだ。
オールドスクールからニュージャック、ミドル、そしてジャズ、コンテ、エンタメなどなど、ダンススタイルのまさにショーケースと言える様相がダンス部大会の特徴であり、それほどトレンドを汲み取ったスタイルは見られなかった。

が、ここ数年ではOGやOBがコーチに就任していることもあり、スタイルがモダンに刷新され、いわゆるLA発のスタイル系ヒップホップを踊るダンス部が増えてきたようだ。
ダンスだけでなく、衣装や選曲、フォーメーションの見せ方にも新風が吹き込まれている。
新しいからと言ってすぐ点数に反映されるわけではないが、今回のDCCの審査員に若手が多かったのも、こういった傾向を汲み取ってのことではないだろうか。

苦戦傾向のある強豪校にとっても、自らの伝統を守りつつ、スタイルをアップデイトしていく必要がありそうだ。

3)音取りの多様化
上記に関連してだが、曲のどの部分をアクセントにするか?という音取りも多様化してきたように感じる。
本来ヒップホップでは、キックの位置にダウンなどの大きな動きを合わせるのが常套なのだが、スタイル系ではより多彩でトリッキー。
音の合間を縫ったり、静と動のメリハリが強調されていたり、曲のメロディやパンチラインと呼応するような動きのアプローチなどなど。
これは、曲を引き立たせるバックダンス的な思考ではなく、曲を使って自分たちを表現するという思考による変化も影響しているのだろう。

4)表現とは?
本大会は漢字2文字の表現性を重視し、審査点も一番高い(表現力10点/技術力6点/独創性4点)。
とはいえ、表現力というのはなかなか優劣が付けにくく、審査員の主観も入ってくるので、このポイントを戦略的に上げるのはなかなか難しいところだ。
(中盤以降、60点台のチームが団子状態で続いたのでも、この審査基準が影響したものと思われる)
しかし、上位3チームはどこも「表現力」で40点以上を上げていたので、それぞれの「表現」を確立していた。

三重高校は、得意のアクティングやストーリー仕立ての中で、バランス良くダンスを配置し、観客の共感を呼んだ。
狛江高校は、チームダンスとしての精度が非常に高く、随所にキャッチーな見せ方で展開を作った。
帝塚山学院は圧倒的な技術と身体能力によって、シリアスなテーマと拮抗する魂の叫びのような表現を絞り出していた。

どの学校もまず下地にあるのは技術力、そして練習量に裏付けられたチームワーク、1つの表現に向かう集団の意志の力だ。
まずは伝えたい強い想いがあること、それをメンバー全員が共有すること、そのための手法と独自性を突き詰めていること。

「まず表現ありき」
振り付けが先ではなく、表現が先。
これは逆算しているわけではなく、本来そういうものなのだ。

ダンス部の皆さん、今一度「自分たちが本当に表現したいこと」を話し合ってみよう。



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