日大明誠/中京大中京【ダンススタジアム決勝】優勝校の分析とダンスタ審査攻略法

2025.09.20 HIGH SCHOOL

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分析①トレンドを追うリスクと日本一への戦略性

 

とは言え、真似だけでは勝てない。当然、日本一は目指せないだろうし、部活動の本分である教育的効果も薄い。具体的には、「声を出す」「落下する動き」「よくある立体展開」ではすでに大きな加点は望めない現状があると思う。
今のダンス部大会は、高校生らしさ・青春感・アマチュアっぽさでは、もう頂点が望めない厳しい状況であるのだ。

トレンドに乗ることは有利に働く面もあるが、同時に相応のリスクも生じる。トレンドや定石を知ることは大事。でもそれを疑うこと、裏切ること、そこを踏まえた上で自分たちがどう動くかを考えることこそが、自分たちらしさと成長につながるのだ。

筆者が強豪校に取材すると、皆が「目標は日本一」と口を揃える。

…酷な言い方だが、本当に本当に、そう考えているのだろうか?
単なる合言葉やスローガン程度になっていないだろうか?

実際に日本一を取るチームは、そこに辿り着くまでのプロセスを戦略的に詰めている。自分たちを知り、相手を知り、頂上からの道のりを逆算して、足りない部分を補い、武器を強化し、独自性を磨いている。その細やかさやチームのテンションは本当に尋常ではない。その練習の場に立ち会えば「あぁ、これは日本一獲るだろうな」と感じさせてくれるほどだ。

今回のダンスタ決勝で、本気で日本一を目指していたチームが、結果が出ずに、涙を流し、言葉もなく悔しがるシーンがあったが、そこにこそ、本気の戦略性と想いの強さが現れていた。
本人たちはかわいそうだが、個人的には高校ダンス部大会に立ち会って、最も心が動かされる美しいシーンでもある。

 


分析②大人数はスッキリと、少人数は大胆に

 

時折ジャッジが、大作的なダンスに対して「すごすぎて、何が起こっているかわからなかった」というコメントを出すことがあるが、あれは決して褒め言葉ではないと思う。

要は、観客視点では情報量が多すぎて、どこを見て良いかわからず消化不良を起こしてしまっているのだ。

今回の決勝のBIGクラスでもその傾向は感じられた。
以前の記事でも書いたが、BIGクラスの大人数を生かすために…

「全員がやれることを全部やる」
「2分半を隙間なく詰め込んで動き続ける」
「最後は迫力とボリューム感で押す」
というようなアプローチを一度疑ってみてほしい。

先ほどの通り、勝つために大事なのは定石や王道を知りながらも疑うこと。
一度完成したものすら、皆で積極的に疑うこと。
完成した形から、サプライズや裏切り、ちょっとしたトゲや“崩し”を加えること。

真のクリエイティブは逆張りにある!(かもしれない)。


分析③ダンスタの独自採点を攻略する

 

ダンススタジアムの審査基準は、他の大会とは大きく異なり、ある意味独特である。
特徴的なのは採点基準が6項目と細かいこと、ダンス技術以外の配点が大きいことだ。

この審査基準にはストリート系のチームから賛否の声を聞くこともあるが、ここを分析し攻略しないことには望む結果を得られないだろう。

本気で結果を望むならば、戦略の1つとしてダンスタ独自の審査基準を知るべきところだ。

下記に、ダンスタの審査員を複数回つとめたプロダンサーの意見も参考にしつつ、各項目への戦略を解説していきたい。

まず公式ページにはこう記されている。

①テクニック 10点 - 技の精度・ユニゾンの・動きのメリハリ等
②コレオグラフィー 10点 - 振付・構成・フォーメーション等
③ビジュアル 10点 - 衣装・ヘアー・メイク・表情・世界観等
④エンターテイメント 10点 - 演出・アイデア・ショーマンシップ等
⑤音楽 10点 - 使用音源の選曲・構成・音質等
⑥スペシャリティー 10点 - 各審査員ごとの全体的総合評価

まず、60点満点のうち、ダンス技術にあたる①テクニックが10点のみというのはあまりにも低いと感じる。ダンスのコンテストなのに、③〜⑤の項目と同点数であるということが賛否のポイントになるのだが、前述のプロダンサーは「ダンス技術の評価は⑥スペシャリティーの点数で補っている」と語っており、ここはジャッジの方でいろいろとバランスをとっているようだ。

さらに言えば、ダンス技術といっても「振り付け遂行能力」と「基本的なダンス技術」は同義ではない。ジャッジは、振り付けの奥にある、基本技術やフィーリング、表現力、ダンスへの向き合い方、言い換えれば「ダンス愛」を見ている。だからこそ、振り付け練習だけではなく、日々の基礎練をしっかりやることが大事なのだ。どれだけダンスに一生懸命なダンサーか?——そこにジャッジは手を挙げるのだ。

②コレオグラフィー:は、振付師の手腕によるところが大きい。最近は、アシンメトリーや静と動のコントラスト、立体的な展開を取り入れるチームが増えてきた。先ほども述べた通り、大人数だからこそスッキリと見せることが大事。BIG クラス作品だがSMALL作品を作るような感覚で構成を考えてもいいだろう。逆にSMALL作品は、BIG作品のように、ステージを大きく大胆に使うことがコツかもしれない。

③ビジュアル④エンターテインメントは:ダンススタジアムの審査ならではだ。
ダンスの大会ではあるが、一般層にも目を向けているスタンスがここに窺える。
個人的にはこの2つは1つの項目にまとめても良い気がしているが、③で減点されてしまうところは気にしたい。要は、シンプルやナチュラルさをスタイルとしているチームは、ここが伸びない可能性があるからだ。わずか1点を①テクニック項目で上げるのは困難だが、③で加点していくことはそれほどでもない。こういった点が特に、ダンスタの攻略ポイントなのだ。

④エンターテインメント:は、わかりやすいようでわかりにくくもある。要はジャッジの主観によるところも大きく、ここに寄りすぎると隠し芸大会的な見え方になりかねない。本格ストリート路線を標榜するチームには、扱いにくいポイントでもある。

個人的には、終わった後に観客から大きな歓声や拍手がもらえるパフォーマンスを自分たちなりに考えていけば良いのだろうと思う。そして、ここを上げるために磨いたセンスは、高校生の君たちにとっては将来の仕事に活きてくる。何が人を喜ばせるのか?を考える良い機会だとも思う。

⑤音楽:は、さらにわかりにくい。その昔は、楽曲の音質や曲繋ぎのセンスや仕上げが悪いチームも見受けられたが、ここ最近は予選レベルですら見かけることがなくなった。さらに、「選曲」と言っても、良い曲/悪い曲はあくまで主観的なものであるから、攻略もしにくい。ただ、人気のある曲、普遍的な名曲、多くの人が感動・共有できる曲の「楽曲パワー」がすでに優位点であることは、今回のSMALL優勝チームの選曲を見ても明らかだろう。

逆に、そのリスクを考えると、ダンスが「曲負け」してしまうことや、曲が被ってしまう可能性も、前述のプロダンサーは指摘していた。一番大事なのは曲とダンスのマッチング。ドンの音はドンの動き、カンはカンの動きであること。そして曲のムードや歌詞の世界とダンスが合っていること。要は、音楽にしっかり寄り添ったダンスかどうかを評価するポイントだと考えて良いだろう。

⑥スペシャリティー:は先述の通り、各ジャッジに委ねられているポイントで、バランスをとっていくバッファ(余剰)として機能しているようだ。だからこそ、ジャッジのラインナップ次第で変動もしていく可能性もあるのだが、創作〜ストリートまで異ジャンルを比べ合うダンス大会の主催者としては、ジャッジのチョイスは常に頭を悩ますところだろう(ちなみに、今回の決勝ではブレイクダンサーが2名おり、コンテ系のジャッジがいなかったが、どんな理由からなのだろう?)

とは言え、参加する側としては、そこは時の運。大会に参加した以上、すべての条件や状況を受け入れ、逃げ道を作らずに全力でブツかっていく姿勢が、のちの人生にも活きてくるはずだ。

来年のさらなるレベルアップや多様化に期待したい。

文:石原ヒサヨシ(ダンスク!)


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