【インタビュー】なぜシッキン(s**t kingz)だけがダンサーとして別の地平へ飛び立てたのか?

2022.04.06 INTERVIEW

<<インタビュー前半より

 

ART
「ダンスとアート」

将来のイメージはあっても、そこまでの行き方は決めすぎない

 

——NOPPOさんはイラストやデザインなどのアート活動も盛んですね。
NOPPO:元々絵を描くのは好きだったんですけど、シッキンで本を出す機会にまた描いてみたんです。いつも、ほんの思いつきで描き始めて、なんとなく出来上がるタイプなんで……、アーティストを目指すほど本気ではないんです(笑)。
shoji:息抜き、だよね(笑)。
NOPPO:単なる落書きって感じですかね。ダンスの振り付けを作る感覚とは違いますね。

——みなさんのそういうダンス以外のスキルや興味って、意識的に身につけたものなのか、自然に身についていたものですか?
shoji:モノによって違うんですけど、たとえばお芝居などはきちんと学びに行って、試行錯誤して、得ようと思って技術を学んだことって感じですね。
kazuki:映像やステージ演出だと、それぞれのプロに頼ることが大事だと思ってます。アイディアは出しますけど、僕らが作っている感覚はそこまではない。例えば、プロの照明さんに「カッコ良くしてください」と言えばカッコ良くしてくれるし、自分の思っていたカッコ良さとは違くても新しい発見がありますからね。

——でもそういうダンス以外の分野への挑戦やスキルがシッキンらしさの一つですよね。
Oguri:僕らはまずいろんなことに興味を持っているタイプで、同じことを続けていると飽きてしまうんです(笑)。海外などで新しい刺激を与えてくれる人にたくさん出会えたし、舞台も「やってみたら面白いと思うよ」と言ってくれる人がいて、僕らはそういうことへの興味や好奇心が尽きなかった。

——逆に言えば、常にまわりに期待されているということですよね。それに応えなきゃと感じることは?
Oguri:もちろん評価はされたいけど、期待に応えたいという感覚はあまりないです。ダンス界を背負っていこうみたいな使命感もない。ただ楽しいと思うことを好きにやっているだけですから。僕らはダンス界の中でも、比較的自由なポジションにあった。師匠や先輩からのスタイルを受け継ぐようなタイプではないし、海外で流行っていたスタイルの真似から始めたスタンスもあると思います。

——でも結果的に後輩たちへの道を切り拓いていますよね。
shoji:ありがたいですけど、それも結果的に、ですね。僕らはいつも、新しい方法を切り開こうという意識でやっているのではなく、自分たちの感性で自由に作っているものが結果的に新しいものになって、後輩たちに何かしらのヒントを与えている、ということなんじゃないでしょうか。さっきのNOPPOのイラスト作業と似た感覚で、結果を考えずにまず興味で始めている。

——あまり先のことは考えすぎない、常に「今」に集中している、ということでしょうか?
shoji:周りのスタッフは、先のことを考えているでしょうけどね(笑)。もちろん僕らにも、将来こういう風になりたいな、というざっくりのイメージはあっても、そこに行くまでの行き方をあまり決めすぎないようにしているんです。

——逆に過去も振り返らない?
kazuki:経験として自然に身ついているものはありますよ。特に「初めての挑戦」というのはかなり経験してきてるので(笑)、度胸もついてきたし、何をやってもダンスがあればそこまでビビらなくなりましたね!


▲NOPPO作画による絵本『あの扉、気になるけど』。絵本×ダンスで贈る新体験!(マガジンハウス刊)

 

STAGE
「ダンスと舞台」

イメージに囚われず、自分たちが感じてきたことを丁寧にやっていきたい

 

——「初」というところでは、kazukiさんとNOPPOさんで、ダンスコント「お前、だれ!?」に挑戦しました。発売中のBlu-ray BOX『2021 s**t kingz COMPLETE BOX 』にも収録されてますね
kazuki:これこそ「初めての挑戦」で、ビビりましたね(笑)。まず「お笑いがやりたい」というのがあって、ダンスもやったほうがいいでしょう、ぐらいなノリで始めたんです。
——でもコントと言い切ってますからね。すごいチャレンジ!
NOPPO:今でも映像見るだけで、緊張が蘇ってきますから!
——でも結局はダンスに助けられたって感じですか?
kazuki:はい、コレでダンスがなかったら、何が何だか…って感じですよ(笑)。

——shojiさんとOguriさんの『My Friend Jekyll』は逆にシリアスな作品です。朗読とそれに合わせたダンス。お2人の演技力と表現力が素晴らしいですが、その役割を舞台ごとに交替してしまうという、もう「ドMかな?」っていうぐらいの公演でした(笑)。
shoji:アッハッハ! とにかく新鮮で刺激的な体験でしたね。同じ台本でも、Oguriが読むとこんなに違うんだって面白い発見もありましたし。
NOPPO:台詞回しとか、相手に引っ張られなかったの?
shoji:というか、Oguriの良いところはパクってたかな(笑)。俺、すぐ影響されるから。

——2人の共演は助け合いの感覚ですかね? それともバトル的な感じですか?
Oguri:最初はバトル的な意識だったんですけど、途中から「1人では無理だ!」と思って、結局は助け合いになりました(笑)。
——やっぱり朗読の方がハードですか?
Oguri:俄然そうですね。ダンスは開放されて、すごく気楽でしたから!
shoji:俺は逆だったんですよねぇ……。ダンスの方が緊張した! Oguriの朗読をダンスでサポートしていくという責任感を感じていたし、僕の朗読の方は何かあってもOguriのダンスでどうにかしてくれるだろうと(笑)。

——台詞に合わせるダンスというと、チャップリンの『独裁者』の演説を使ったダンス映像作品が印象的です。これまでのシッキンにはないシリアスな表現でした。
shoji:ありがとうございます。でも僕らはハッピーでポジティブなことしかやらないと決めてるわけじゃないんです。イメージに囚われず、自分たちが感じてきたことを、嘘じゃないパフォーマンスを丁寧にやっていきたいというだけなんですよ。


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▲チャップリンの演説で踊る映像作品「The Great Dictator – Final Speech」。

 

DANCE
「ダンスへのこだわり」

基礎力、シルエット、音の表現、オリジナリティ

 

——シッキンが登場してきた時の新しさって、ある意味古さでもあって、ニュークラシカルというか温故知新的な面白さがありました。そもそもあれはどういう着想だったんですか?
kazuki :あのスタイルはOguriの影響でしたね。彼はジーン・ケリーやフレッド・アステアとかが好きだから、そういうテイストを入れてみようという発想でした。
Oguri:ジャズとかバレエをやっていないこのチームで、そういうアプローチをしたら面白いだろうって思ったんですね。
kazuki:最初の頃は、ハンカチを使った踊りとかやっていてもサマになっていない気がしてて…。今やればもうちょっとサマになると思いますが、それまでのダンスとは動きも姿勢も違うんですよね。

——そしてダンスの動き自体の緩急や早い展開、アクティングの要素なども新鮮でした。
Oguri:動き自体は、当時のLAのダンサーの影響が大きいです。最初は僕らも「こういうスタイルがあるんだ!」って驚きでしたから。YouTubeとかでそういうダンスを見ることができたのも、時代的に恵まれていましたね。


▲s**t kingzがまさに世に躍り出た作品2010年Body Rock優勝の作品。

——最後にみなさんがそれぞれ、ダンスで大事にしている要素って何でしょうか?
Oguri:僕は断然、基礎力です。逆に振り付け関してはそんなにこだわりがないかもしれない。
——シンプルな振り付けでもダンス力があれば見せられるってことですね。kazukiさんは?
kazuki:僕はシルエットですね。サマになってない、自分らしくないのが嫌なんです。
——kazukiさんの場合は、シルエットに入る直前の動きや、そこからの動き出しに独特の
色気がありますよね。
kazuki:はい、そこも含めてのシルエットの好みなんだと思います。

——NOPPOさんは?
NOPPO:僕は緩急と音の質感を大事にしていますね。音がドンとカッでは体の止め方も変わる。たまにポップやアニメーションなんかの動きも取り入れながら、音の表現方法にはこだわってますね。
——shojiさんは?
shoji:僕は昔からテクニックへのコンプレックスがあって、だからこそ振り付けではユニークさやオリジナリティを意識してますね。
Oguri:確かにshojiくんの振り付けは印象的な動きが多いですね。独特なアイディアで作っている感じ。
kazuki:だからなのか、フリ入れの前の話が長い! その動きに至ったストーリーをまず語るから(笑)。
shoji:そうそう、振り写しをしてみんなが「アレ?」ってなった時のために、こうなった理由をまず聞いてもらうんです(笑)。
kazuki:たまに「それ、自分でできた? 本当にやってみた?」ってなりますよ。アイディアだけでいっちゃってる場合があるから(笑)。
shoji:いや〜、俺が自分で踊れなくても、みんななら踊れるかなって(笑)。
kazuki:もー、ケガさせないでよ(笑)。
——ある意味、shojiさんの振り付けはメンバーへの「問いかけ」なわけですね(笑)。
shoji:アッハッハ! そうかもしれない!

▲コロナ禍により延期になっていた新作舞台『HELLO ROOMIES!!!』もこの秋に開催される予定。また新たなs**t kingzワールドが広がる!>>オフィシャルHP



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